西武戦に先発出場した楽天・オコエ瑠偉【写真:荒川祐史】

写真拡大

昨季はプロ入り後初めて1軍出場なし…指揮官から「考えが甘い」と苦言

■楽天 5ー0 西武(13日・メットライフ)

 楽天のオコエ瑠偉外野手が絶好の再スタートを切った。13日、東京五輪開催に伴う中断期間明け初戦として敵地メットライフドームで行われた西武戦に「7番・右翼」でスタメン出場。2019年9月26日の西武戦以来687日ぶりの1軍戦出場だったが、第1打席でいきなり先制適時打を放ち、4打数1安打1打点。1四球も選んだ。

 このチャンスは逃せない。執念がにじみ出た1打だった。2回無死二塁。西武先発の松本に対し、カウント3-2から外角低めのスライダーをコンパクトなスイングでとらえると、ピッチャー返しの打球は中前へ抜けていった。先制点をたたき出し、最終的にチームの勝利に貢献した。「(中断期間中の)エキシビジョンマッチもシーズン中と同じ気持ちでやっていたので、変わらずにいこうと思っていました」と納得顔。石井一久監督も「積極的にスイングして、追い込まれた時には食らいついていく。しっかりしたアプローチができている」と称えた。

 プロ6年目の24歳。東京・関東一高時代に甲子園を沸かせ、ドラフト1位で入団すると、1年目から開幕一軍に抜擢され出場機会を得た。身体能力の高さは誰もが認めるが、その後伸び悩み、昨季はついにプロ入り後初めて1軍出場なし。契約更改後、GMとして交渉に当たった石井監督から「まだ考えが甘い。そろそろ出てこないと、彼自身の野球人生が苦しくなってくる。ここが正念場。死に物狂いでやってほしい」と苦言を呈された。さらに2月に左手首の手術を受け、キャンプは不参加。ここまでは踏んだり蹴ったりで、崖っぷちに追い込まれた。

 それでも地道にリハビリに取り組み、6月30日にようやく2軍のイースタン・リーグで実戦復帰。打率.343(35打数12安打)をマークし、中断期間中に1軍昇格を勝ち取る。東京五輪開幕直前の7月24日に行われた侍ジャパンとの強化試合にスタメン出場し、森下(広島)から二塁打。その後のエキシビションマッチも、打率3割(10打数3安打)と気を緩めることはなかった。

 石井監督は「年齢的にも、まだまだこれからの選手。今までの苦労は悔しさとして持ちつつ、新たな気持ちでリスタートしてほしい」と感慨深げ。オコエ自身、打撃では「今年はトップを取れているので、変化球とかボール球の見逃し方が良くなった。コンタクトもあるし、フォアボールも取れる。今までと違う打席の入り方というか、ピッチャーへの対応ができていると思います」と手応えを感じている。今度こそ、石にかじりついてでもレギュラー獲得に結びつけたいところだ。

 妹の桃仁花(もにか)が、女子バスケットボール日本代表として銀メダル獲得の快挙を成し遂げた。「妹と共に頑張ります」とこの上ない刺激も受けている。東京五輪の柔道で同日に金メダルを獲得した阿部一二三・詩同様、兄妹での活躍をファンは待望している。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)