UQ mobileは「でんきセット割」でMVNOの覇権を狙う! KDDIのグループ力を活かした戦略は成功するか

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●UQ mobileの新しい割引プログラム「でんきセット割」スタート!
KDDIおよび沖縄セルラーは10日、仮想移動体通信事業者(MVNO)の「UQ mobile」にて2月から提供を開始している料金プラン「くりこしプラン」向けに、指定の小売電気サービスへ加入すると割引料金が適用されるプログラム「でんきセット割」を開始しました。

くりこしプランは、データ通信量3GB/月額1,628円から始められるUQ mobileの基本料金プランです。
これに「でんきセット割」を適用すると、データ通信量3GB/月額990円から始められるようになります。

データ通信量ごとの詳細な料金は以下の通りです。
・3GB/月額990円
・15GB/月額2,090円
・25GB/月額2,970円


税込みで638円から858円の割引となる


対象となる小売電気サービスは「UQでんき」もしくは「auでんき」で、各小売電気サービスの契約1件あたり、最大10回線(10契約)まで割引が適用されます。

小売電気サービスの契約者は、割引を適用する回線を契約する本人以外にも、同居の家族や別住所の家族でも可能です(別住所の場合、別途証明書の提出などが必要)。


10回線まで割引が適用されるのはありがたい



●さらなる低料金で若年層の取り込みを狙う
UQ mobileがでんきセット割を始めた背景には、
・KDDIグループの経済圏シナジー
・学生や新社会人をターゲットとした低料金戦略
これらがあります。

UQでんきやauでんきといった小売電気サービスはここ数年で大きく成長しており、auでんきだけでも2年で1.4倍、契約数では80万件以上も伸ばしています。
UQ mobileもまた累計契約数が300万件を超え、MVNOの中では通信品質が比較的安定しているというユーザー評価も加わり、非常に堅実な成長と人気を維持しています。

小売電気サービスとUQ mobileの好調な成長をさらに加速させ、KDDI経済圏への囲い込み策としても大きな役割を果たすセット割引の存在は必要不可欠だったと言えます。


au PAYを中心としたポイント経済圏のメリットを最大限に発揮する戦略を展開する


KDDIグループは以前から若者をターゲット層とした宣伝やサービス展開を強みとしてきましたが、今回のでんきセット割も、まさに若者をターゲットとしています。

auをはじめ、移動体通信事業者(MNO)各社は月額3,000円以下の格安プランを発表しました。
MVNOであるUQ mobileは、さらに安い月額1,000円や2,000円といった料金で、コストパフォーマンスを重視する若年層に訴求したい考えです。

別途証明書などの提出が必要にはなりますが、住所の違う家族でも割引が適用されるメリットは非常に大きく、1人暮らしをする学生や新社会人でも実家の契約を基に適用できる点は、便利に活用したいところです。


自分が小売電気サービスの契約者ではなくても良いというのがポイント



●KDDIのグループ力を最大限に活かした強力な戦略
UQ mobileは今夏から5G通信への対応を予定しており、5G通信向けの料金プラン「くりこしプラン 5G」の提供も予定しています。

くりこしプラン 5Gは、従来のくりこしプランを5G向けに提供するものであるため、でんきセット割をはじめとした各種割引やオプションサービスのほとんどがそのまま利用できます。

人気のiPhone 12シリーズやOPPO A54 5G、AQUOS sence5Gといった5G対応スマートフォンも多数ラインナップしており、5Gサービス開始への準備も万端です。


料金プランの契約が必須になるが、他の通信キャリアよりも若干安くiPhone 12シリーズを買えるのも魅力の1つ



MNO各社の格安プランの登場によって通信料金の水準は一気に下がり、学生や新社会人でも20GB前後の料金プランを契約しやすくなりました。

UQ mobileの今回の施策は、そういった格安競争の中でもさらに踏み込んだ戦略であり、KDDIによるUQ mobile事業の統合とシナジーを一層強化するものです。

UQ mobileは全国のau Styleおよびauショップでの取り扱いやサポートを7月上旬から予定しており(一部店舗を除く)、ここでもグループとしての強みを活かそうとしています。

・MVNOらしい低廉な料金
・MVNOの中では比較的安定した通信品質
・MVNOらしからぬ充実したサポート体制

KDDIのグループ力と経済圏効果を最大限に活用しつつ、激しい過当競争の渦中にあるMVNO業界で覇権を狙います。


執筆 秋吉 健