原辰徳監督(2014年撮影)

写真拡大

プロ野球・巨人が2021年5月30日のソフトバンク戦(ペイペイドーム)で4−3と辛くも逃げ切り、19年交流戦から日本シリーズ、オープン戦を合わせて続いていたソフトバンク戦の連敗を14で止めた。

だが、手放しで喜べる内容ではない。巨人の7安打に対し、ソフトバンクは大きく上回る12安打。再三好機を作ったが、今季ワーストタイの13残塁と決定打が出なかった。ソフトバンクの拙攻に巨人が助けられたのが現実だろう。

直接対決で浮き彫りになったチーム力の差

巨人はエース・菅野智之、主将の坂本勇人、リードオフマンの梶谷隆幸が故障で戦線離脱していることを差し引かなければいけない。

だが、ソフトバンクは巨人以上に主力を欠いている。

エースの千賀滉大、4番のグラシアル、守護神・森唯斗が故障で登録抹消中。また、セットアッパーのモイネロ、主砲のデスパイネがキューバ代表として東京五輪米大陸予選に出場するためチームを離れている。サブマリン・高橋礼も不調でシーズン途中からファーム暮らし。

両球団は飛車角抜きの戦力にも関わらず、直接対決で力の差を感じさせられた。

ソフトバンクは28日の試合で4本のアーチを放って9得点。29日も5本塁打で8得点と空中戦で巨人に圧勝している。ソフトバンクの打者はフルスイングする姿が目立ったのに対し、巨人打線はフルスイングをさせてもらっていない。

両チームの捕手の配球面が大きく影響しているように感じられたが、それだけではないという。

田口、平良放出への疑問

スポーツ紙デスクはチーム作りの違いが、大きな差になっていると分析する。

「ソフトバンクは投手、野手共に生え抜きが大半を占めているのに対し、巨人はFAやトレード組が多い。FAやトレードで獲得した選手は1,2年なら活躍が見込めるかもしれないがその後は年齢的に衰えがくるケースが多い。そうなると、また他球団から選手を獲得するサイクルになる。外様を集めたチーム作りには限界があります。

中長期で強くするためには若手を我慢して使わなければいけない。例えば、ソフトバンクは牧原大成、周東佑京が手痛いミスを犯すことがありますが、工藤監督は我慢強く使っています。それは彼らが主力になってもらわなければ困るからです。

巨人の生え抜きで主力になっているのは菅野、坂本、岡本和真ぐらい。吉川尚輝、松原聖弥は良い選手なのにちょっとダメだと外される。トレードに出されましたが、ヤクルトの田口麗斗、FAの人的補償でDeNAに移籍した平良拳太郎がソフトバンクにいたら、他球団に放出しないと思います。先発ローテーションを長年担う素材として育てると思います」

確かに、巨人は毎年のように戦力の顔ぶれが変わるのに対し、ソフトバンクは生え抜きがレギュラーをつかむと長年主力として活躍する。ソフトバンクの育成方針、戦いぶりはセリーグの球団も学ぶべき点が大いにあるだろう。(中町顕吾)