ただ、すべての生活がサッカーに通じるので、一般の人と同じ食事をしていてはいけないというのは大前提としてありますね。メリハリを自分でしっかりとつけてやらなければいけません。
 
 若い頃はあまり意識しないかもしれませんが、休養や睡眠というのも大きな要素です。

 いわゆる“規則正しい生活”をしていたら、朝起きた段階で今日は疲れが残っているのか、調子はどうなのかということを知ることができます。変化があった場合に気付きやすいというメリットがあります。

 また、僕も経験があるのですが、年齢を重ねると長く寝れない、寝つきが悪いということもありました。

 寝る前に温かいモノを飲むとか、刺激物を少し控える、疲れているのであれば、胃に優しいものを食べるようにする、夜寝る前には水分をどれだけとるか。ベッドや枕の高さや質、部屋の環境、電気をどうするという寝室の環境面。さらには、寝る前に心地よい音楽を聴いた方が良いのかとか、サッカーの事を考えすぎたり、今であれば携帯を見過ぎて脳が起きてしまったり、それであれば、寝る前どれくらいで携帯を見ることを辞めなければいけないかとか、いろんなことを試しました。

 やはり同じ睡眠でも、どうせ同じ6時間を寝るなら質の良い睡眠のほうが、3食の食事をするなら必要な栄養素を摂れるほうが良いと考えていました。日頃の生活のなかでどれだけサッカーを中心に考えられるかというのは、ほかの選手たちと差をつけていく上では大事なことではないでしょうか。
 
 生活面での積み重ねと同様に、自身がステップアップしていく上で忘れてはならないのが新しい環境への適応です。プロ選手では、チームを移籍したり、遠征に出る、代表に招集されるなどその時々で変化が生じます。

 それに適応するには、とにかく会話をして自分を知ってもらう。そして相手を知るというのがまず重要になることです。対話、会話ができるというのは改めて大事なスキルなのだと思いました。

 僕自身は、なんでもガンガンとオープンに行ける感じではなかったですけど、ただ、代表に呼ばれたときは、同世代の人が多く、助けられたこともありました。できるだけみんなで行動する時間は部屋に籠らないようにしたり、みんなが集まっている部屋があったらそこに入っていったり、出来る事から広げていきました。自分の部屋で独りでいた方がストレスもないかもしれませんが、そこで一歩自分から踏み出すことは必要です。

 代表でご一緒した中山(雅史)さんや、カズ(三浦知良)さんはそういう部分も凄かったです。もちろん有名でみんなが知っているというのはあるかもしれないですけど、新しく入ってきた選手に対しても、すごくコミュニケーションをとりますし、いつもオープンなマインドで、明るい感じで入っていける。あの姿を見た時にやっぱりすごいなと感じました。

 サッカーの部分ももちろんですが、身体づくりの生活面であったり、普段からの心構えというか人間性の部分もお二人のように長くプロ生活を続けていく上では欠かせないものなのだと気づかされました。
 
 そして、最後に生活や人間性と切り離せないのがメンタルの保ち方です。

 今はSNSなどもあって、僕らの時代よりもプレッシャーが強くなっていると思います。オンとオフの切り替えという部分もより意識しなければいけません。

 大前提として、プロの世界なので、批判とか注目を浴びるということは受け入れないといけません。お金を払ってプレーを見てもらっているので、そこから逃げることはできないですし、そこに立ち向かえるだけの根っこの部分のしっかりとした意識を持っていないといけないです。