Google発の気球で世界中にインターネットを届ける「Project Loon」が完全シャットダウン
Googleの兄弟企業であるXによって2013年から開発が進められ、2018年から独立事業となっていた、気球を用いた移動体通信システム「Project Loon」がプロジェクトを完全に停止することを発表しました。
Saying goodbye to Loon | Loon’s journey is coming to an end… | by Alastair Westgarth | Loon Blog | Jan, 2021 | Medium | Loon Blog
Loon’s final flight. Loon’s time as an Other Bet is coming… | by Astro Teller | Jan, 2021 | X, the moonshot factory
https://blog.x.company/loons-final-flight-e9d699123a96
Alphabet is shutting down Loon, its internet balloon company - The Verge
https://www.theverge.com/2021/1/21/22243484/alphabet-google-shutting-down-loon-internet-balloon-company-x
世界に数多く存在するインターネットへの接続環境がない地域にインターネットサービスを提供すべく、、Facebookは海底ケーブル敷設計画「2Africa」を、Amazonは人工衛星からインターネットを届ける「Project Kuiper」を進めています。
Googleも2013年に気球によってインターネットを提供するProject Loonをスタートし、2016年に実際の飛行テストを開始。2020年にはケニアで試験的な商用運転も開始し、35個の気球が5万平方キロメートルにわたってWi-Fiを提供しています。Googleの発表によると、6月に実施されたテストでは下り18.9Mbps、上り4.74Mbpsという速度で遅延は19ミリ秒、メールのほか、音声およびビデオ通話やブラウジング、YouTube視聴なども問題無く行えるものだったとのことです。
成層圏を飛ぶ気球からインターネット環境を提供する「Project Loon」がケニアの山岳地帯で商業展開を開始 - GIGAZINE
また2020年10月には過去最高の312日連続飛行に成功したことも発表されました。
あらゆる場所にネット環境を提供する気球を飛ばすプロジェクト「Loon」が連続飛行312日で新記録樹立 - GIGAZINE
そして2020年12月には、強化学習を利用したAIの開発により、プロジェクトが大きく前進したことも発表されました。気球は風や気温といった環境に影響を受けやすく、安定したインターネット接続の提供に課題がありましたが、強化学習により安定した自律飛行が可能になり、「連続312日」という飛行記録を達成することができたとのこと。
熱気球で世界中にインターネットを提供するGoogle発の「Loon」プロジェクトが大きく飛躍、その勝因とは? - GIGAZINE
順調に開発が進んでいるかのように見えたLoonですが、2021年1月22日、Loonの代表であるAlastair Westgarth氏は「Saying goodbye to Loon(Loonにさよならを)」という記事を公開。プロジェクトの停止について「長期的で持続可能なビジネスを構築するだけの低いコストを実現できなかった」ためと説明しています。
またXを率いるAstro Teller氏も同日に「Loon’s final flight(Loonの最終フライト)」という記事を公開。「商業化までの道は求められるものよりも長くリスクが高いと証明されました。今後数カ月かけて私たちは運用を停止し、LoonはAlphabetの賭けの1つではなくなります」とTeller氏は述べました。
Teller氏によると、Loonのプロジェクトに取り掛かっていた従業員は、XやGoogle、Alphabet内の別のプロジェクトに割り当てられる予定とのこと。すでに開始しているケニアでのサービスは2021年3月まで提供される予定ですが、その後、インターネット接続がなくなってしまうため、Loonはケニアでインターネットや起業・教育などを支援する企業や非営利団体に1000万ドル(約10億円)を提供すると約束しています。