足の小指をぶつけると激痛が…

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 たんすやベッドなどの角に足の「小指」をぶつけ、あまりの激痛にうずくまってしまった――。このような経験はきっと多くの人にあることでしょう。足の小指をぶつけてしまうことについて、「なぜか、小指は特別に痛い気がする」「しばらく歩けないくらい痛かったことがある」という人や「そもそも、どうして、小指だけぶつけてしまうんだろう」とその現象自体に疑問を感じる人もいるようです。

 足の小指をぶつけて激痛が走る謎について、かわかみ整形外科クリニックの川上洋平院長に聞きました。

細く、筋肉が少ないことが原因?

Q.たんすの角などに足の小指をぶつけると、なぜ、激痛を感じるのでしょうか。「他の指より痛みが強い気がする」という人も多いようです。

川上さん「足の小指は医学用語で『第5趾(だいごし)』といいます。そもそも、痛みは皮膚の『痛覚受容体』という組織が『痛みの刺激』を感知し、感覚神経を経由して脳に信号が届くことで自覚します。足の小指は指の中で最も細くて筋肉も少ないので、痛覚受容体が刺激を受けやすく、他の指より痛みを強く感じやすいのが激痛の原因の一つと推測することはできます。しかし、確かな医学的原因はまだ分かっていません」

Q.なぜ、足の小指だけをぶつけてしまうことが多いのですか。

川上さん「人間は、自分の四肢や関節などの位置・動きを脳で判断する感覚『身体位置覚』がやや鈍く、脳が足の小指を正確に認識できていない(足の幅の感覚を実際より1センチほど内側に認識している)ことが原因と考えられています。また、親指以外の手の指や足の親指などにはそれぞれ3つの関節がありますが、足の小指には2つしかないことが多く、細かい動きが難しいため、けがをしやすいともいわれています」

Q.ぶつけ方によっては、打撲や骨折などの重い症状も起こり得るのでしょうか。

川上さん「小指は小さいため、外からの軽い力で骨折を起こすことがあります。打撲だと思って様子を見ていたら、なかなか痛みが引かず、実は骨折だったと後から分かる場合もよくあります。次に挙げる症状の場合は骨折の可能性があるので、早めに整形外科の受診をおすすめします」

(1)腫れや痛みが強く、痛みが長引く
(2)内出血がある
(3)押すと痛い
(4)指が痛くて歩きにくい
(5)靴が履きにくい

Q.歩けないくらい痛みがひどい場合、どうすればよいですか。自分でできる応急処置はあるのでしょうか。

川上さん「指が動くと痛みを感じやすいので、ばんそうこうなどで固定して、氷のう(アイスバッグ)などで1日3回程度、1回につき15〜30分ほど冷やしてください。アイシングには、局所の炎症の軽減や痛みを和らげる効果があります。また、腫れを予防するために、けがをした方の足を持ち上げてください。

それでも痛みが続く場合は、先述したように骨折の可能性があります。骨折は時間がたつと自然治癒することもありますが、骨がずれたまま治ってしまうこともあります(変形治癒)。こうなると元に戻すのは大変なので、早めに医療機関を受診してください」

Q.骨折していた場合の治療について教えてください。

川上さん「まず、レントゲン撮影を行い、骨折があった場合は原則、何らかの固定を行います。固定方法は主に、折れた足の指と隣の指を一緒にテーピング用のテープ剤で止めるか、添え木を使って固定します。また、痛みに対しては鎮痛剤を処方します」

Q.足の小指は無意識のうちにぶつけてしまうケースが多いですが、日常生活上で気を付けるとよいポイントはありますか。

川上さん「日頃の生活で足元を意識するように心掛けたり、ご自身で足の指の体操やストレッチを行ったりすることも予防につながります。

代表的な運動としては、足の指を丸める(グー)▽親指を上に、その他の指を下に開く(チョキ)▽足の指1本1本をできるだけ均等に開く(パー)という3種類の動きをいすに座って行う『足指じゃんけん運動』があります。この運動を繰り返すことで足指が動かしやすくなり、歩くときにも足指を意識しやすくなります。また、床にタオルを置き、足指でたぐり寄せるようにして手前に引き寄せる『タオルギャザー』という運動もおすすめです。

足の指は、バランス能力を維持する上で非常に大きな役割を持っています。足指を鍛えることで、バランス能力の維持や転倒予防になるでしょう」