大阪ダービーで先制点を奪った井手口。神出鬼没のスタイルで攻守両面でG大阪を支えた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ26節]C大阪1-1G大阪/11月3日(火)/ヤンマー

 中9日で満を持して大阪ダービーに挑んだセレッソ大阪に対して、ガンバ大阪は北海道コンサドーレ札幌戦から中2日。日程的には不利なはずのG大阪だった。先制ゴールで熱戦に火をつけた井手口陽介は、攻守両面で大車輪の活躍を見せた。

 現在採用する4-4-2のフォーメーションでは大卒ルーキーの山本悠樹とダブルボランチを形成する井手口だが、もはやそのプレーぶりは単なるボランチの枠組みを超えている。

 磐田に期限付き移籍した遠藤保仁はかつて「変幻自在」のプレーで、中盤を支えたが、井手口のスタイルは「神出鬼没」に他ならない。

 アンカーを経験したことで守備のマネージメント力が増した山本がやや下がり目のポジションでセカンドボールを回収したり、スペースのケアを行なったりする一方、縦関係のボランチを形成することが多い井手口は時に最前線にもプレスを敢行。チームを黒子的に支えてきた背番号15が、このところ見せ始めている新境地を大阪ダービーでも見せつけた。

 いずれも守備力をベースにする両者の顔合わせだったが、立ち上がりから主導権を握ったのはダービー3連勝を狙うホームチーム。守勢に回る苦しい展開を一変させたのは32分に先制ゴールを叩き込んだ井手口だった。

 小野瀬康介のクロスをパトリックがリフティングを見せるような巧みなポストプレーで落とすとゴール前に走りこんできた井手口が左足で冷静にゲット。

「シュートうんぬんではなくて、一番いいことはタイミングよく上がれていることだと思う」と井手口は振り返ったが、前節の札幌戦に続いて2試合連続でゴールを奪っているのだ。

 守勢に回る展開が多かった大阪ダービーでは、中盤でボールを刈り取ったかと思えば、ゴールライン付近で相手のシュートに身体を投げ出したりとピッチの至る所で身体を張り、危険地帯をケア。個の力で相手の攻撃の芽を摘み取るだけでなく、セレッソ大阪の右サイドで浮いている戦術的キーマンのひとりである坂元達裕に対しても、福田湧矢や倉田秋任せにせず、目を光らせながら決定的な仕事を許さなかった。
 
 チーム最長距離の11.5キロを走り抜いた井手口だが、若手が台頭し始めている今のチーム状況において単なる守備の人で終わるつもりは毛頭ない。

 札幌戦を前に口にしていたのはよりゴール前でのプレーに磨きをかけることだった。
「最近はゴール前まで上がれているけど、最後の精度とかシュートが全然ダメ。単に上がるだけではなく、そこを求めていきたい」(井手口)

 この日奪ったゴールは今季4得点目だったが、チーム得点王のアデミウソンと渡邉千真がそれぞれ6得点。宇佐美貴史とパトリックがそれぞれ5得点。FW陣に引けを取らない数字を残しながらも、守備面で絶大な貢献を見せているのである。

 激闘の末、タイムアップの笛を聞いた瞬間、全く疲れる表情を見せなかった恐るべきスタミナの持ち主は、試合を重ねるごとにその凄みを見せつけ始めている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

J1リーグ 最新順位表(11月3日時点)