「印刷工程でどんなミスがあったのかはわからぬが、一生で一度しかであえないだろう本」

ツイッターユーザーの成相裕幸(@ainari1984)さんによる、こんな投稿が話題になっている。

「一生で一度しか出会えない」とされた本...それがこちらだ。


タイトルが2つ...?(画像は成相裕幸@ainari1984さん提供)

成相さんが購入したのは小説「粉飾決算・取締役スケープゴート氏の悲しい体験」(菊田良治、日経BP社)。本を開くと、タイトルが書かれたページが現れる。

ここまでは多くの本と同じ構成だが、問題はそのあと。

タイトルが書かれたページの裏には、

「子どもに語る グリムの昔話(2)」(こぐま社)

と、なぜか全く別の本のタイトルが記載されている。読者対象も世界観も、全然違うように思われるが...いったい何が起きたのか。

成相さんは2020年9月25日に、この本をツイッターで投稿。10月2日までに1万4000件以上リツイートされ、話題になっている。

投稿に対し、ほかのユーザーからは、

「子供に語れなさそうなの草」
「粉飾決算は大人のグリム童話ですよね。わかります」
「出版社は異なっているので、印刷所なにがどうなったらこういうミラクルが起きるのか気になるw」

といった声が寄せられている。

日経BP社「不良品が発生したとの記録はない」

Jタウンネットは2020年9月28日、投稿者の成相裕幸さんに詳しい話を聞いた。

成相さんは出版流通・販売を主な専門とするライター。この本は25日、福島県内の古本屋で発見した。

「当方は本を手にすると、奥付、著者プロフィール、章立ての順で見ていきます。奥付を確認しようと開いた瞬間に扉部分がなんか変だなと思い、じっくりみたところ気づきました」

発見した時の様子を、このように語る成相さん。ざっと見たところ、ほかのページに印刷ミスはなかったという。

成相さんは印刷ミスがあると分かった上で本を購入。

「今後中身を読んでいきますが、これも貴重な資料ですので保存したいと思います」

としている。


どっちの本かわからなくなる(画像は成相裕幸@ainari1984さん提供)

Jタウンネットは10月1日、「粉飾決算・取締役スケープゴート氏の悲しい体験」の出版社である日経BP社を取材した。

まず、同書籍において今回のような状態のものは過去にあったのか。広報担当者に聞いたところ、

「社内にて調査いたしましたが、そのような不良品が発生したとの記録はなく、1999年の発行以降現在まで、社外からの問合せ・クレーム等もございませんでした。
今回のお問い合わせにより初めてその事実を認識した次第です」

との回答が返ってきた。

また印刷ミスの原因や、これが印刷工程で起こり得ることなのか、販売までの過程で気づくことは難しいのか、といった問いに対しては、

「ツイッターの写真で拝見する限り、印刷・製本工程でのミスと思われます。しかし印刷ミスの原因、ならびにこうした不良品がなぜ市中に流通しているのかといった点につきましては、現時点で私どもも事情を把握しておらず、ご質問にお答えすることができません」

とのこと。

なぜこのような本が誕生したのかはわからないが、レアな状態であることは間違いないはず。見つけたらある意味ラッキーかもしれない。