近所のドラッグストアでは、うがい薬が「欠品・入荷未定」となっていた

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 今月4日に行われた吉村洋文大阪府知事と松井一郎大阪市長の会見は、全国に衝撃をもたらした。ポピドンヨード入りのうがい薬は、新型コロナウイルスに対する効果が期待できるという主旨の発表である。吉村知事は市販のうがい薬を机に並べ、これを使用するよう府民に呼びかけた。

 ポピドンヨード入りうがい薬が新型コロナにどのような効果を発揮するのか、ここで言及することはできない。しかし、両首長の会見がある大きな現象を発生させたのは事実だ。「うがい薬の転売行為」である。

◆うがい薬の価格が高騰、品切れが続出

 この会見の直後、うがい薬の市場価格は急高騰した。吉村知事と松井市長の記者会見の翌日、静岡県静岡市に在住する筆者は近所のドラッグストアに足を運んだ。大阪での出来事が静岡にまで飛び火するのだろうか……と軽く見ていたが、現状は案の定とも言うべきか……。

 どうやらここでも、買い占めが発生しているようだ。再入荷の目途は立っていないという。

 それと同時に、ネット通販では「うがい薬の出品」が相次いでいる。もっとも、医薬品指定されている商品の場合は厳しい出品条件が課せられる。Amazonの場合は、

“一般用医薬品の出品には、薬機法の規定により医薬品店舗販売業の許可が必要です。また、必要事項を出品者情報のページに明記する 必要があります。さらに、Amazonが定める一般用医薬品出品審査を受けた出品者のみが出品可能です。出品審査を経て販売が許可された出品者は、 Amazonが定める一般用医薬品の販売リストに掲載されている一般用医薬品のみ出品することができます”

 と、定められている。

 ヤフオク、メルペイ等のネットオークションやネットフリマでは、医薬品の出品は禁止されている。だからこそ、転売の主軸はポピドンヨードを含まない指定医薬部外品になっている。

◆Amazonで転売行為が横行

 吉村知事はポピドンヨードを含むうがい薬についての言及を行ったが、その結果ポピドンヨードを含まないうがい薬が高額転売されるようになった。これは皮肉と表現するべきか。

 Amazonで検索してみよう。『イソジンクリアうがい薬 マイルドミント風味』という製品は、何事もなければ1000円程度で買えるものである。が、8月5日現在では何と1本1万1400円で販売されていた。

 次に『キレイキレイ うがい薬 フルーツミント ピーチ味』という製品を見てみよう。こちらの販売価格は1本6950円。通常は1000円もしないものだ。不当というしかない値付けである。

◆1本5万円のイソジン!?

 ヤフオクではさらに酷い状況になっている。『イソジンクリアうがい薬 アップル風味』が、5万1000円という値段で出品されていた。Nintendo Switchを購入しても余りある額だ。

 このようなことはマスクやトイレットペーパーでも発生したが、今回はネット通販運営者の「下準備」ができていたという点で状況はやや異なっている。高額出品されているうがい薬の販売ページの削除が、既に進められているのだ。実を言うと、前述のAmazonで出品されていた『イソジンクリアうがい薬 マイルドミント風味』も、この記事を書いている最中に取り扱い停止になった。

 あまりに不当な値付けの商品に対して、ネット通販が敏速かつ厳しい対応をするようになったのだ。

◆吉村・松井両首長の「想定の甘さ」

 吉村知事と松井市長は、このような事態を想定し切れていなかったのか?

 筆者がライターとしてのキャリアを重ねる中で、自分の紹介した商品が高額転売の対象になってしまったということは幾度かあった。しがないライターの文章ですらここまでの影響をもたらすのだから、都道府県の知事の発言はことさらである。

「新型コロナとの戦い」は、即ち「転売ヤーとの戦い」であることはもはや一般常識。それを両首長が認識していなかったとしたら、やはり批判は免れないだろう。

 一方で、需要の急増に付け込んだ転売行為は運営側の初動如何で抑制できるということが判明した。転売ヤーの不正行為を防止するための大きなヒントを、我々は図らずも知ることができたのだ。<文/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』