映画『パラサイト』が教えてくれたのは、「頑張っても報われない」という人生の残酷さだったのかもしれない
2月に米アカデミー賞四冠の快挙を成し遂げ、日本国内の動員数も300万人を超えるなど、依然、話題沸騰中の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。韓国での動員数はすでに1000万人を超え、フランスでも170万人を突破、アメリカでは外国語映画の興収で歴代トップ10入りするなど、アジア映画としては異例の大ヒットとなっている。今回は、『韓国語ジャーナル』『韓国テレビドラマコレクション』の編集長を務め、直近の訳書『あやうく一生懸命生きるところだった』も売れに売れている訳者・編集者の岡崎暢子氏に、韓国カルチャーや社会を絡めながら、この映画をどう見たのかについて語っていただいた。
※本記事には、映画『パラサイト』についての内容が含まれます。あらかじめご了承ください。
原題「寄生虫」へのリスペクトを感じる
日本版のタイトルロゴ
本作の韓国語の原題は『寄生虫』だ。オリジナルのタイトルロゴのハングルも回虫を模したぐるぐると渦巻いたデザインになっている。改めて日本版のカタカナのロゴを見ると、本家より、より寄生虫っぽさが際立ったロゴデザインになっており、配給側の原作への“リスペクト”をひしひしと感じる。
とにかく、寄生虫である。乱暴にあらすじを紹介すれば、貧富格差が進む韓国で、低所得層の家族が、ある“計画”を立てて新興富裕層の家族の家に “寄生”していく……という物語で、実家を出ずに親元でぬくぬくしている若者を指して呼んだ、バブル期の日本に生息していたパラサイトとは深刻さが違うのである。
しかし、そこはさすがポン・ジュノ監督、韓国の様々な社会問題をしっかりと盛り込みつつも、極上のブラックコメディに紡ぎあげており、観客の脳内まで寄生してしまう傑作を世に送り出した。私も見終わった後にあれこれと確認したくなって劇場に3度、足を運んだ。特に、“あの石”について。