開幕を前に記者会見する(左から)奥川恭伸、永田裕治監督、坂下翔馬主将、佐々木朗希

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「令和の怪物」佐々木朗希投手らを擁する高校日本代表が、U18W杯に出場するため韓国に降り立ったのは先月28日のこと。しかし日本を代表する選手たちの胸に「日の丸」や「JAPAN」の文字はなかった。その背景には高野連の「配慮」があったというのだが――。

 日韓関係が「史上最悪」と叫ばれるなか、高野連が下した判断は、高校球児のポロシャツから日の丸を外すことだった。日本国内でも賛否両論が巻き起こったこの問題は韓国にも飛び火。

 当の韓国人からも、

〈旭日旗じゃなければ大丈夫なのに。日章旗なら大丈夫。なんで怖がるの?〉

〈あまりにオーバーじゃないか?〉

〈韓国人はそんなに野蛮じゃないよ。どれだけ日本人が嫌韓を煽っているのかがよく分かる〉

開幕を前に記者会見する(左から)奥川恭伸、永田裕治監督、坂下翔馬主将、佐々木朗希

 といった疑念や困惑の声がネット上で沸き上がっているのだ。スポーツ紙デスクによれば、

「日本代表が日の丸を外したポロシャツで韓国入りするという判断は8月中旬には決まりました。ただ、実際に入国すると特段混乱はなかった。そこで今度は一転、選手たちの胸に再び日の丸が躍ることになったのです。こうした高野連のちぐはぐな対応のせいで、日韓関係の悪化を煽ることになってしまいました」

「配慮」のつもりが、韓国人の感情を逆なでしたのでは話になるまい。

 スポーツ評論家の玉木正之氏もこう嘆く。

「高野連の反応は過剰で、率直に言って情けない。もともとスポーツというのは究極の反戦平和の象徴であり、そういう心構えがあったら日の丸を外すなんてことはありえない。せっかくの日韓友好のチャンスを自ら放棄してしまったようなもので、残念でなりません」

球数制限が進まない理由

 そもそも高野連は、

「世間の声を極度に気にしている組織なんです」

 と解説するのは『甲子園という病』の著者で、スポーツジャーナリストの氏原英明氏である。

「高野連は2007年に特待生制度の禁止を徹底しようとしたことで、世間から一斉に批難を受けました。それまでは独善的に物事を決めてきましたが、この問題が分岐点となり、むしろ世間の声を恐れるようになったのです」

 にもかかわらず、時として“強権発動”するのがこの組織のおかしなところで、

「たとえば昨年12月、高知商業の野球部員が甲子園での応援のお礼にダンス同好会の発表会に出演した。このイベントが500円の入場料を取っていたことが問題になりました。高野連は、この発表会が日本学生野球憲章で禁止されている“野球部員の商業的利用”の可能性があるとして、野球部長の処分を検討したのです」(同)

 もっとも、この件は世論の批判を受けて、結局のところ処分なし。今回の「日の丸外し」と同じく前言撤回の迷走っぷりを世に晒すことになった。他方、

「速やかに議論を進めるべき球数制限の問題や、大会の日程見直しについては遅々として進んでいません」(同)

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が指摘する。

「高野連は高校野球を教育の一環だと主張し続けていますが、実質的には違います。毎年7億〜8億円近い収益を生み出し、甲子園はスター選手の品評会になっている。にもかかわらず“ビジネスをしてはいかん”と、ときに見せしめのように権力を振りかざす。言っていることと、やっていることが矛盾しているのではないでしょうか」

 日の丸「自粛」は過剰反応で即断。その一方で急務であるはずの球数制限問題などは放置する。どこまでいっても度し難い組織である。

「週刊新潮」2019年9月12日号 掲載