あらゆる分野で役に立つ科学や法律から導かれた「11の普遍の法則」
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1つのことを深めたり極めたりするのは重要ですが、多くの分野で普遍的に通用する法則が世の中には存在するため、1つの対象に限定してものを見てしまうと盲目になってしまうこともあります。科学や法律の分野で法則化されたものの中には他の分野でも通じるものが多く存在することから、編集者としてニューヨークタイムズやSABEWで2つの賞を受賞したMorgan Houselが「11の普遍的な法則」を挙げています。
https://www.collaborativefund.com/blog/laws/
◆1:リトルウッドの法則
by Ben White
数学者だったジョン・エデンサー・リトルウッドは奇跡を「100万回に1度しか発生しない例外的な事象」と定義しました。そして「人間が起きている間、1秒に1度事象が起きる」「人は1日に8時間活動する」と仮定すると、35日間で100万の事象が発生することになります。つまり、奇跡の定義からみて、人は平均して35日間に1度の奇跡を体験することになる、というのがリトルウッドの主張。ここから、「現実において奇跡はありふれたもの」ということがいえるようになります。
ソーシャルメディアが発達し、人々の生活やイベントにスポットライトが当たるようになった現代、リトルウッドの法則以上のペースで奇跡が生まれているともいえます。
◆2:ギブソンの法則
「法律と公共政策において、専門家は真逆の2つの見方を示すことがある」というギブソンの法則は、他の分野にもあてはまります。
ギブソンの法則がみられる原因には複数の理由が考えられ、1つは同じ議論に見えても文脈が異なることがあるため。また専門家が視聴者のために分かりやすさを重視して、複数ある側面のうち1つの面を語った場合も、「あの時とは真逆のことを言っている」という印象を持たれがちです。さらに、データや訓練から得られた知見を信念や人生観が越えた時や、「自分の考えること」ではなく「キャリアのために求められること」を発言する必要がある時などに、「言ってることが違う」と思われます。
人の発言の多くは考えの一部を切り取ったものであり、外から見ると一貫していないように見えるというのは日常生活でもよくあるはずです。
◆3:ブランドリニの法則
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イタリアのソフトウェア開発者であるアルベルト・ブランドリニは「でたらめに反論するのに必要なエネルギー量は、でたらめを生み出すよりも桁違いに大きい」と発言して大きな話題となり、後に「ブランドリニの法則」と呼ばれるようになりました。
法律の分野では証明することが重視され「起こらなかったこと」をもとにした主張は不可能ですが、法廷の外ではその逆のことが起こります。つまり、解説者は自由に意見を述べることを許されますが、批評家はこれに対し証拠を持って反論しなければなりません。これはブランドリニの法則が存在するものの1つといえます。
また、世の中には偏見やインセンティブを隠して知的に見せるメディアが存在しますが、視聴者が「善」と信じてメディアを受け入れる時、「間違っている」と説得するのは困難になります。これもブランドリニの法則の1つです。
◆4:グッドハートの法則
グッドハートの法則はイングランド銀行のチャールズ・グッドハート氏に由来するもので、「計測結果が目標になると、その計測結果自体が役に立たなくなる」ということを意味します。
グッドハートの法則はイギリス統治下のインドで起きたコブラ効果に代表されるもの。イギリス政府はデリーでのコブラ被害を心配し、死んだコブラに対して報酬を提供するようにしました。すると、報酬目的に人々がコブラを飼育し殺し始めたため、政府はプログラムを中止。不要になったコブラを人々が外に放ったため、野生のコブラはさらに増殖したという出来事が「コブラ効果」の由来です。
同様のことが現代の企業にもいえ、従業員に対して目標を設定すると、従業員はシステム上の大事な事柄を無視して目標に最適化しようとします。投資家がCEOに対してゴールを設定するよう求めることも同じ。この結果としてゼネラル・エレクトリックはエンドユーザーではなく名もない金融パートナーに投資ファンドに販売し、売上目標を達成しつつも会社自体を危険にさらすという選択を行いました。
またグッドハートの法則は物理学における観察者効果に近いものともいわれています。
◆5:ドロの不可逆則
by Geran de Klerk
古生物学者ルイ・ドロは、「生物はたとえ以前存在したときと同じ存在条件におかれていても以前の状態にきっかりと戻ることはない」と主張しました。尻尾を失った動物が尻尾を失うまでに経た道のりはあまりに複雑であるため、同じ道のりを再現することができず、ゆえに再び尻尾を得られる可能性はほとんどゼロであるというのがドロの考えです。
ドロの不可逆則はビジネスの世界にもいえ、顧客を得るには適切なタイミングで、特定の物を望む適切なユーザーをターゲットにし、正しい方法で物を作りだす必要があります。全ては同時進行であり、一度顧客を失ったブランドが再び顧客を取り戻すのは至難の業です。
またチームの成功は1人の人間にスポットライトが当たることが多いものですが、実際には他のスタッフとの関わり合いの中で成功は生まれます。チームの成功はチームによるものであり、個々のスタッフを別の場に配置しても成功が再現されるわけではありません。
◆6:パーキンソンの法則
「役人の数は、仕事の量とは無関係に増え続ける」というのがシリル・ノースコート・パーキンソンの主張。余暇を過ごす年配の女性は、「めいにハガキを書く」という作業を、「ハガキを探すのに1時間」「メガネを探すのに1時間」「住所の検索に30分」「構図に1時間15分」「出かける時にかさを探すために15分」といった作業により1日仕事にすることができます。気づかぬうちにリソースはニーズを超えるものであり、すべきか否かに関わらず、従業員は多くの仕事を見つけます。
同じことが、「不要な写真でストレージがいっぱいになって、さらなる容量が必要になる」というスマートフォンにもいえるとのこと。
◆7:ウィーオの法則
by Icons8 team
フィンランドの経済学者であるオスモ・アンテロ・ウィーオは「コミュニケーションは大抵失敗する、偶然上手くいく場合を除いて」ということを説きました。ウィーオの見方はおおむね以下の通り。
・メッセージが複数の方法で理解できるとき、人はそれを最も有害な形で理解する
・コミュニケーションが増えるほど、コミュニケーションの成功は難しくなる
・マスコミの場合、重要なのは事実よりも「どう見えるか」である
上記の事柄は手書きの時代に述べられており、テクノロジーが発達した現代においてその説得力はさらに大きなものとなっています。
◆8:セイヤーの法則
コロンビア大学の政治学教授であるウォーレス・スタンリー・セイヤーにちなんで名付けられた「セイヤーの法則」は、「どんな争いにおいても、感情の強さと賭け金の多さは反比例する」というもの。このことからセイヤーは学術界における政治的議論が非常に激しいものになると指摘しました。また、投資の世界でいうと、資産として持っているお金が少ないほど投資について激しく主張することになるとのこと。
◆9:スティグラーの法則
by Hal Gatewood
統計学者のスティーブン・スティグラーは「科学的発見に第一発見者の名前が付くことはない」という法則を提唱しました。これには主に2つの原因があります。
1つは、発見が単独で発生するのがまれだということ。多くの発見はこれまでに生まれた複数の発見を組み合わせることによって導かれるものであるためです。ビル・ゲイツは「スティーブ・ジョブズや私はあるべき以上に称賛されています。そうしないと物語が複雑になりすぎるからです」と語っており、複数人の成果であるものであっても一人に脚光がいきやすいことを示しています。
また「優れたアイデアを生み出す人」ではなく「アイデアを伝えることに優れている人」がもてはやされやすいのも事実。これは、すばらしい発見を書いた難解な学術的な本よりも、簡単な心理学の本の方がベストセラーになりやすいことからもわかります。爆発的にはやるコンテンツは大部分が運と、適切なタイミングで適切なプロモーションを行ったことによるものです。
◆10:ミルの間違い
18〜19世紀の歴史家・哲学者・経済学者であるジェームズ・ミルは立憲君主制を政府のあるべき形と考えていました。しかし理論生物学者のスチュアート・カウフマンは、ミルが彼の時代の「最も確かなもの」から推論を導いたことを指摘しており、「慣れ親しんだものから最適性を推論する」ことの危険について述べました。カウフマンはこのような事象について「ミルの間違い」と呼んでいます。
「慣れ親しんだものを最適だと考える時は、懐疑主義が必要になる」とのことで、自分の判断を批評する証拠を見落としている可能性を考慮することが必要だとカウフマンは述べました。
◆11:ヒッカムの格言
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「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とするオッカムの剃刀は、医療においては「患者の症状に対して複数の原因が考えられるならば、もっとも仮定が少ない原因を選ぶべきだ」という指針として使われます。
ただし、医師のジョン・ヒッカムはオッカムの剃刀の限界について指摘。統計的にみると、極めて珍しい1つの疾患が原因となることよりも、複数の原因がかさなっていることの方が多いそうです。