By microgen

誰かのせき払い、空調のモーター音、椅子のきしむ音、キーボードのタイピング音など、静かな空間でも完全に無音ということはありません。雑音が気になるという人も多いはずですが、雑音がむしろ人の認知機能をブーストしてくれる可能性があることが報じられています。

Like to work with background noise? It could be boosting your performance

https://theconversation.com/like-to-work-with-background-noise-it-could-be-boosting-your-performance-119598

聴覚や味覚、触覚などから受ける刺激は脳内で信号として処理されています。そういった信号にあえて「ノイズ」を混ぜると、パフォーマンスに好影響が出るというのが「確率共鳴」と呼ばれる現象です。確率共鳴は動物実験などでもその効果が確認されており、ザリガニの尾びれに電気的ノイズを与えるとより優れた回避行動を取るようになることや、電気信号を感知して小魚を捕食することで知られるヘラチョウザメにノイズを含んだ電場をかけるとその捕食能力が向上することが研究で判明しています。さらに、個体によって「最適なノイズ」が異なることもわかっています。



今回の発表の著者オノ・ファン・デア・グルーンさんはスイスのチューリッヒ工科大学在籍時に同僚のニコラ・ウェンデロスさんとの共同研究として、頭皮上に置かれた電極から人間の脳にランダムな振幅&周波数の交流を流すという経頭蓋ランダムノイズ刺激法(tRNS)を用いた実験を行いました。実験の結果、tRNSによって最適な電気ノイズを与えると、何も電気を与えないときよりも視覚的な能力の改善が見られたことが判明したそうです。

この実験を裏付けるような研究結果も報告されています。クイーンズランド脳総合研究センターの研究チームによる実験では、tRNSによる電気刺激を人間に与えると、曖昧な問題に対する意思決定が正確かつ迅速になったとのこと。さらにグルーンさんの追加実験によって、tRNSは錯視にも影響を与えることが確認されたそうです。

一連の研究によって、グルーンさんは脳にノイズ的な刺激を与えると知覚や意思決定に影響を及ぼすと結論づけています。この結論を持って、グルーンさんは電気刺激だけでなく、音声などのノイズも脳に影響を与えうると説明しています。



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グルーンさんは、「うるさい環境で仕事をするのがむしろ好みだという人は、その雑音のノイズがパフォーマンスを向上させているという議論をしても問題はないといえます」とコメントしています。