電車のシートの「端」より快適に 乗降口わきのあの席、仕切り板が大型化
列車のロングシート端部と乗降口付近との仕切りが大型化しています。座っている人のほうに立っている人がもたれかかってきたり、荷物などが接触したりするのを防ぐ目的がありますが、理由はそれだけではありません。
ポールから仕切り板へ
列車のロングシート(窓を背にして座るシート)の端に見られる、乗降口との仕切りが大型化しています。
東京メトロ丸の内線の新型、2000系電車。従来車両と比べて座席端の仕切りが大型化された(2018年10月、恵 知仁撮影)。
たとえば東京メトロの場合、古いタイプの座席の仕切りはポールのみ、あるいは肘掛け程度の高さの仕切り板とポールを組み合わせたものが見られましたが、同社では、こうした仕切りを徐々に大きくしてきたとのこと。
「お客様のご意見によるものです。ドアの近辺に立っているお客様と、座席の端に座っているお客様との接触を防止する目的のほか、個人情報保護の観点もあります。というのは、座っているお客様のスマートフォンの画面が、立っているお客様に見下ろされてしまうのです。それを防止するため、仕切りもより高くなる傾向があります」(東京メトロ)
仕切りの大型化は他社でも同様の傾向が見られ、たとえば相鉄が2018年以降に運行を開始した新型の20000系電車、および12000系電車の座席端は、座面の下から荷物棚まで仕切られています。
相鉄の広報を担当する相鉄ビジネスサービスによると、座っている人に立っている人の荷物が当たることはもちろん、状況によっては仕切り板があっても、長い髪や、コートのフードなどが、座席側に垂れてくることがあるとのこと。「荷物棚まで達する仕切りは、そうしたストレスをなくすためです」と話します。
もたれかかりやすいようにした仕切りも
ただ、仕切りを大型化すれば、車内の見通しが悪くなり、利用者に狭苦しい感じを与えかねません。そこで相鉄20000系と12000系電車では、仕切りの中ほどを大きな透明ガラスにしました。東京メトロでも、銀座線1000系や日比谷線13000系といった最新の車両では、仕切りの一部をガラスにし、さらに模様を施すなどして、車両の個性を演出するデザインのひとつとしています。
相鉄12000系電車。座席端の仕切りは、座面の下から荷物棚まで達する(2019年3月、草町義和撮影)。
一方、大型の仕切りを採用しつつ、ちょっと変わった形にしているのが、2016年に登場した阪神電鉄の5700系電車です。仕切りの中ほどが、乗降口側に出っ張るように「く」の字に曲がっているほか、仕切り全体が座席と同じモケット(布)で覆われています。
これは、乗降口側の人が「立ち座り」できるようにしたものだといいます。この出っ張りに腰を下ろし、板にもたれかかれるようにしているほか、座っている人にとっては、くぼんだ部分が肘掛けになるそうです。
5700系電車は、駅間距離が平均1kmと短い各駅に停車する普通列車用の車両で、短距離利用客が多いことを考慮して設計されました。軽く腰を下ろせる仕切りの出っ張りも、それを反映したものです。またロングシートの一部にも、座面を高くして前に傾斜させ、立ち座りがしやすいようにした「ちょい乗りシート」を試験的に採用しています。
【写真】「く」の字に曲がった阪神電車の座席仕切り
阪神5700系電車は、座席の仕切りを「く」の字に曲げ、そこに腰を掛けやすいようにしている(画像:阪神電鉄)