大人になると「時間があっという間に過ぎてしまう」と感じてしまう理由とその対処法とは?
by Aron Visuals
子どものころ、夏休みの1カ月はまるで永遠に続くように感じられたのに、大人になってからの1カ月や2カ月はあっという間に過ぎ去ってしまう……という感覚を覚えたことがある人も多いはず。子どものころはなぜあんなに1日が長かったのかという理由と、「気がついたら時間が経過していた」とならないためにはどうすればいいのかについて、イギリスのリーズ・ベケット大学で上級心理学講師を務めるスティーブ・テイラー氏が心理学の観点から解説しています。
https://theconversation.com/feel-like-time-is-flying-heres-how-to-slow-it-down-115257
子どものころ1日が長く感じたのは、危機が迫っていると周囲が「スローモーション」のように感じる現象や、極度に集中した状態にあるアスリートが時間が止まったような感覚にとらわれる「ゾーン」と、ある意味で同じ原理によるものだとテイラー氏は語ります。ある人が時間が止まったような経験をしている時、脳はその瞬間に起こっているあらゆる出来事を感知しようと、五感を研ぎ澄ませています。この状態では、まるでクロックアップしたCPUのように脳が活動を加速させているので、その人が感じる時間の流れは相対的に遅くなり、ゆっくりと時間が過ぎていくように感じるというわけです。
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同様に、子どもにとっては毎日が新しい発見と新鮮な驚きに満ちた世界なので、脳は新しい刺激を感知しようと活発になっています。このため、子どもは大人に比べて時間をゆっくり感じる傾向があります。しかし、大人になるとともに経験を積み重ねるにつれて新しい発見はどんどん減少し、毎日が昨日と同じ繰り返しになっていきます。そして、何回も経験した出来事に対して人はそれほど注意を払わなくなり、脳も外界から入ってくる情報に鈍感になっていくので、周囲の時間も相対的に早く流れて行くように感じられます。これが大人になると毎日があっと間に過ぎていくメカニズムです。
テイラー氏によると、「気がついたら1日が終わっていた」とならないための方法は大きく分けて2つあります。
◆1:新しい経験をする
一番効果的なのは、新しい経験を通じて脳が処理する情報量を増やすことです。これまで経験したことがない環境に身を置くことで、脳はあらゆる出来事を注意深く観察し、大量の情報を処理するようになります。具体的には、行ったことがない場所に行ったり、会ったことがない人に出会ったり、新しい趣味やスキルの習得にチャレンジしたりするなどです。海外旅行などはその最たる例といえます。見たことがない街並みを歩き、顔なじみではない人々と会い、普段使わない言葉を聞くことで、脳は驚くほど多くの刺激を得ることができます。
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◆2:慣れたことでも、注意深く意識して過ごす
そうはいっても、誰もが気軽に旅行に出られるわけではなく、旅行から戻れば日々のルーチンワークが大半を占めるような1日がまた始まります。しかし、毎日繰り返すような物事でも、五感を総動員してその経験を注意深く観察することで、新しい経験に勝るとも劣らない刺激を受けることができる、とテイラー氏は指摘します。
例えば、バスや電車での通勤中にスマートフォンに目を落とすのではなく、窓の外に目を向けてよく観察してみると、昨日とは違う天気の様子や昨日はなかった看板を発見できるかもしれません。あるいは、シャワーを浴びている最中に仕事や家事のことをあれこれ考えるのをやめて、ただじっとシャワーの水滴が肌に当たる感覚や、体を伝う湯の温かさに集中するだけでも効果があるとのこと。惰性で毎日を過ごすのをやめて、じっくりと噛みしめるように味わうことを心がければ、たとえ同じ1日でもより多くの物事を感じることができます。
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健康的な食事や運動を心がけて、できるだけ長生きしようと努力する人はたくさんいます。しかし、誰もが平等に与えられる24時間という時間をできるだけ大切にしようとする人はあまり多くありません。ただ漫然と人より長く生きるだけではなく、日々の生活の中で物事を経験する時間を増やすという方法もあるのだと、テイラー氏は語っています。