料理人はなぜ腕組みをする?

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 雑誌などのグルメ特集では、そのお店の一押し料理に加え、シェフや板前、ラーメン店店主といった料理人の写真も掲載されることが多いものですが、それらの写真の料理人は、腕を組んでいるイメージがありませんか。「腕組み」は相手を拒否するポーズでもあり、「偉そう」というマイナスの印象を与えかねませんが、なぜ、腕組みをして写るのでしょうか。心理カウンセラーの小松原幸恵さんに聞きました。

そもそもは「心理的防衛」「考え事に集中」

Q.そもそも、腕組みはどのような心理のときに行うポーズですか。

小松原さん「大きく分けて、『心理的に防衛状態になっているとき』『考え事に集中しているとき』の2つの原因で腕組みをすると考えられます。

『心理的に防衛状態になっているとき』とは、相手に対して怒っているとき、不満があるとき、警戒しているとき、不安なとき、うそついているとき、などです。腕組みをすることで相手に対して壁をつくり、距離を取り、自分の内臓(胸やおなかの内部)を腕で守っています。『考え事に集中しているとき』は、腕を組むことで『自分の空間』を腕でつくり、自分の思考に集中しているときです」

Q.腕組みはネガティブな印象を与えかねませんが、シェフや板前などの料理人が、腕組みをして写真に写ることが多いのはなぜですか。

小松原さん「先述の通り、腕組みは『考え事に集中しているとき』のポーズです。これは『料理のことを考え続けている、こだわりの店主』というイメージにつながります。『相手に対して壁をつくる』という面から見ると、料理人の『頑固さ』を伝えているとも考えられます。

また、胸の前に来るように腕を組むと、自然と背筋が伸び、胸を張り、肩が『イカリ型』になります。姿勢が良くなるため、りりしく見せたいときや、自分を大きく立派に見せたいときにも腕組みをしていると思われます」

Q.特にラーメン店の店主は、「腕組みをしてカメラ目線でにらむ」という写真がほとんどと言っても過言ではないという印象があります。にらむことも、相手にネガティブな印象を与えそうです。

小松原さん「『腕組みをする』だけではなく、『カメラ目線でにらむ』ということは、りりしさや立派さだけでなく『頑固さ』のような攻撃性を強調しているしぐさだと思われます。特にラーメン店は『頑固親父の店=うまい』というイメージがあり、『偏屈』『攻撃的』『通だけに伝わればよい』といった、男性的なイメージ戦略が有効な市場だと考えられます。

ラーメン店側が、意図して腕組みのポーズを取っている場合もあるでしょうし、『何となくみんなこのポーズだから』という理由で模倣している人や、カメラマンからリクエストされたから、という理由で腕を組んでいる人もいると考えられます」

Q.模倣が繰り返されると、イメージが定着するものでしょうか。

小松原さん「模倣は繰り返されることによって、その職業の『記号』になります。『腕を組んで』『黒色のTシャツで』『頭にタオルを巻いている』という3点セットは、『お医者さんが白衣を着ている』くらい、ラーメン店のアイコンとして定着しているとも感じます」

Q.一般人も、SNSのトップ画面などで自らの写真を使う機会が多いです。見る人に不快な思いをさせない腕組みポーズを教えてください。

小松原さん「『頼もしさ、立派さをアピールしたい』という場合、胸の前で軽く腕を組み、背筋を伸ばして姿勢を良くし、笑顔で写るとよいと思います。腕を組むとき、背中を丸めるなど自分を小さく見せるようなしぐさになってしまうと、弱々しい印象になってしまいます。また、おなかを隠すような位置に手を置くなどすると、『不安感の強い人』という印象になってしまうので避けた方がよいでしょう」