100均(ダイソー)で売ってたUSB Type-Cのケーブルやアダプタをたくさん分解してみた:ウェブ情報実験室
100均で売られているUSB充電ケーブルは、ラインナップが驚くほど充実していて、(怪しいものも含めて)数多くの製品が販売されています。USB Type-Cケーブルは昨年あたりから登場していますが、ふと気づくとそれだけでなくType-C関連の変換ケーブル・アダプタなども増えていました。そうなってくるときになるのは中身。実際どうなっているのか、分解して確認することにしてみました。

実験の目的

パッケージに記載されている情報が不足しているケースが多いので、本当のところはどうなのかを確認する。

動機

USB Type-Cは、USB 3.1だけでなくUSB 2.0でも使われていることや、さらにThunderbolt 3にも採用されていることもあって、ユーザーが混乱しやすい規格です。また、USB PDという給電規格もあり、この混乱にさらに拍車をかけています。

雑に言うと「USB Type-C端子はコネクタ形状に過ぎない」わけで、どの通信に対応しているのか、給電能力はどのくらいか、という点とは関係ないのですが、そのあたりを完璧に理解して使っているユーザーはほとんどいません。では、メーカー側が完璧に理解して商品を提供しているのかといえば......実はそうじゃないんですよね。例えば海外ですが、GoogleのBenson Leung 氏が片っ端からUSB Type-Cケーブルを試し、Amazon.comのレビューでダメ出ししていたことなんかが有名です。

国内でも検証記事は多くあり、スマホ充電ケーブルの挙動では山口 真弘氏の記事が秀逸ですので気になる方はご一読を。メーカー品から100均で販売されているものまで幅広くチェックされていて、非常にためになります。合わせて【PC給電編】も読むと、さらに理解が深まると思います。

複数の規格が入り交じるUSB Type-C。その挙動を探る【スマホ編】

複数の規格が入り交じるUSB Type-C。その挙動を探る【PC給電編】


また、USB Type-CケーブルよりUSB ACに主眼を置いたものであれば、Amazon.co.jpにある はんぺん氏 のレビューが参考になります。規格面からしっかりとチェックされているだけに、ケーブルだけでなくACアダプタの購入も考えているのであれば一度は目を通しておきたいところ。一時はAmazon.co.jpからレビューの全削除を食らっていたのですが、無事に復活していました。よかった。

はんぺん氏のAmazonレビュー


そんなわけで、世にあるUSB Type-C関連は玉石入り混じった状態にあることがわかってもらえたかと思いますが、今回の記事はこういった実用的な検証とはちょっと違います。

きっかけはとても単純なことで、ニンテンドースイッチが発売された直後あたりから、充電ケーブルとして使えるものに「56kΩ抵抗が入ってるもの」という条件がよく言われるようになりました。普段からガジェットに親しみ、いじっている人たちの発言であれば特に違和感はないのですが、抵抗なんて気にしないどころか存在すら意識しないであろうライト層からもそういった言葉を聞いただけに、興味が沸いてしまったわけです。

▲たぶん出所は任天堂のこれ。スイッチのQ&Aで、「市販のUSBケーブルで接続する場合は「56kレジスタ(抵抗)」の実装されたケーブルをご使用ください」と明記されています

「そういや、抵抗ってどこに入ってるんだろう。コネクタ内蔵? 基板に実装? Type-A側? Type-C側?」

などと考える程度には気になっていたのですが、そのうち忘れていました。それを思い出したのが、先日100均ショップ(ダイソー)でUSB Type-C関連商品が微妙に増えていることに気づいたときです。あまり見かけない10cmと短いUSB Type-A/Type-Cケーブル、USB Type-CからUSB Type-AへのUSB変換アダプタ、怪しいUSB Type-C/Type-Cケーブルなどが並んでいました。

なんとなくケーブルのパッケージを手に取り裏側を見たところ、抵抗については何も書かれていません。結構話題になったと思ったのに今でも明記されていないとなると、この製品には本当に抵抗が搭載されていないのではないか、という疑問がフツフツと沸いてきました。

また変換アダプタのパッケージを手に取りよく見ると、端子部が青くなっています。パッケージに入ったままでは見づらいのですが、どうやら端子数が9つあるような......これ、明記されてないけどUSB 3.0なのでしょうか......。

ともあれ、パッケージにはろくな情報がなく、知りたいことは何ひとつ確認できません。よろしい、それなら物理的に確認してやろうじゃないかと思い、分解することにしたわけです。

実験対象

今回の実験対象としたのは、「高速充電・通信ケーブル USB >> Type-C」と書かれた10cmのケーブル、「変換アダプタ USB >> TypeC」と書かれた変換アダプタ、「高速充電・通信ケーブル Type-C >> Type-C」と書かれた100cmのケーブルの3つ。これに、後から発見した「Type-C 変換アダプタ」と書かれたmicroUSB変換アダプタの4製品です。いずれもダイソーで販売されているもの。


▲左から、10cmのUSB Type-A/Type-Cケーブル、USB Type-A/Type-Cアダプタ、USB Type-C/Type-Cケーブル


▲先の3製品を分解した後で見つけてしまったため、急遽追加したアダプタ。スマホなどのケーブルで多く用いられるmicroUSB端子を、USB Type-C端子へと変換するアダプタです

実験方法

分解なので実験方法も何もありませんが、それぞれ分解して基板があれば基板を、コネクタだけならコネクタをアップで紹介するという、シンプルなものです。抵抗が載っているようであれば、その抵抗値も測ります。

使用したのはハサミ、カッター、ニッパー、保護メガネ、リューター、マルチメーターなど。ご家庭にある(であろう)一般的な工具です。


▲USB Type-A/Type-Cアダプタのケースがアルミだったので、リューターで切りました。それ以外は、ニッパーとカッターでなんとかなります


▲抵抗値を調べるのに使ったのは、以前購入したマルチメーター「OWON B35」。お安めなのに大変便利なので愛用中です

実験1「高速充電・通信ケーブル USB >> Type-C」

まずは、10cmと短いけれども充電ケーブルとしてはスタンダードな「高速充電・通信ケーブル USB >> Type-C」からいきましょう。先に製品の外見から。


▲短いですが充電ケーブルとしては極々普通のもの。モバイルバッテリーで充電しながらスマホを使う場合、この短さがありがたいです


▲引っ張りに強く、内部で断線しづらいと思われるメッシュケーブルというところがポイントでしょう。10cmではあんまり意味なさそうですが

なんだか思っていた以上にまともなケーブルに感じます。が、それは外見の話。中身もちゃんとしているかは、パッケージに書かれていない56kΩが入っているか、3A電流に見合うケーブルの太さがあるかどうかを確認しなければ、判断できません。

ということで、分解して確認です。



▲USB Type-C側は片面がケーブル接続、もう片面が抵抗やコンデンサが載っていました。この抵抗の値は約55.7kΩ。しっかりしてました


▲USB Type-Aの方に基板はなく、ケーブルが直接コネクタに接続されていました。5VとGNDの線もしっかりしたもののように見えます

中身の写真を見てもらえるとわかる通り、しっかりと56kΩ(55.7kΩですが)抵抗も載っていますし、ケーブルの太さもそこそこあって高速充電も大丈夫そう。また、樹脂で固めてあるのですが、まずは半透明の樹脂で固めてから周囲のピンクの樹脂で固めてあるという、二重構造になっていました。メリットはわかりませんが、丁寧な作りであることは確かでしょう。

10cmの短い充電ケーブルが欲しいのであれば、かなり重宝しそうです。

実験2「高速充電・通信ケーブル Type-C >> Type-C」

続いて、両端がUSB Type-C形状になっている「高速充電・通信ケーブル Type-C >> Type-C」。こちらも製品の外見からチェックしてみます。


▲これといった特徴もなく、コメントに困るUSB Type-Cケーブル。長さは100cmあるので、カバンの中にモバイルバッテリーを入れたまま充電するのに便利かも

メーカーの人がキャッチコピーに困るだろう程度に特徴がない外見が特徴というか、面白味がないケーブルです。少しバリがあった、くらいしか感想がありません。最初は50cmかと思ってたのですが、よくよくパッケージを見たら100cmだったのが唯一の意外と感じた点です。

では中身を。



▲電源ラインは少しカッターで削りましたが、若干細いかも?といった程度。抵抗は付いておらず、コンデンサのみでした

バラしてみると、充電ケーブルとはいえ抵抗はナシ。念のため両端とも削ってみたのですが、どちらもコンデンサのみでした。両端がUSB Type-Cということは、接続するどちらの側もUSB Type-C対応機器なわけで、わざわざケーブル側でマークをもっていなくても大丈夫ということなのでしょうか。これが一般的なのかはわかりませんけど。

試しにUSB Type-Cを備えたノートPC(とある理由で名前は出せませんが、第8世代Core i7搭載のBTOパソコンです)とMoto Z2 Playをつないでみたところ、充電可能でした。画面上の表示も高速充電となる「TurboPowerが接続されました」となっていたので、双方がUSB Type-Cであれば問題なく使える可能性が高そうです。


▲ノートPCとMoto Z2 Playの組み合わせでは、高速充電可能でした。意外といいかもしれません

ケーブル長が100cmあることを考えると、ちょっと電源ラインが細いような気がしますが、信号のラインよりは太くなっていますので、ちゃんと考えられてはいる様子。とはいえ、パッケージに5V2.4Aと明記されているので、充電に使うならスマホあたりに限定して、タブレットやノートPCなど消費電力の大きな機器の充電には使わないのが無難でしょう。

なお、通信も可能とのことですが、結線は5本なのでどう頑張ってもUSB 2.0ですね。

実験3「変換アダプタ USB >> TypeC」

3つ目は、ケーブルではなく変換アダプタとなる「変換アダプタ USB >> TypeC」。パッケージの説明を見ると充電・通信用のアダプタとありましたが、これって一般的には充電目的で使うものではなく、マウスやキーボード、ストレージなどのUSB機器を接続するためにある、いわゆるOTG(USB On-The-Go、USBホスト機能)のアダプタなのでは......。

それはともかく、充電目的であればUSB3.0である必要はないので一見USB3.0っぽいコネクタを採用していますが、実は中の結線は4本だけというオチも十分考えられます。


▲外装に樹脂ではなくアルミが採用されている点など、100均ではちょっと異色な変換アダプタ。充電・通信用らしいですが......


▲青いコネクタはUSB 3.0である雰囲気バッチリ。端子部をよく見てみると、手前に5ピンぶん追加されているのが確認できます

ということで分解して中身を確認しようと思ったわけですが、アルミの外装にはニッパーでは歯が立たないので、リューターを使いました。



▲基板に堂々と「USB3.0-OTG」って書いてありますね! 確定といっていいでしょう。裏側の抵抗は5kΩ。コンデンサにR2と書いてあるのが気になります

予想にたがわず中の基板にはしっかりと「USB3.0-OTG」の文字があり、これがOTG用のアダプタである可能性が高まりました。さらに裏面を見てみると、抵抗とコンデンサが実装されています。値を調べてみると5kΩだったので、これがOTGアダプタである動かぬ証拠となりました。(固定抵抗だけに)

動作確認のため、USB Type-CとUSB Type-A(どちらもUSB 3.1)を備えるノートPCを使い、SATA接続の古いSSDをUSB 3.0接続へと変換した外付けストレージを繋ぎ、OTGアダプタの有無で速度が変化するか調べてみました。


▲CrystalDiskMarkで速度チェック。左が「変換アダプタ USB >> TypeC」経由で、右がUSB Type-A直ですが、速度はほぼ同じですね。SSDが古いので遅いですが

結果は見ての通りでほぼ同じ。テストに向いた高速ストレージがなく、急遽古いSSDを引っ張り出してきたので遅いですが、それでもUSB 2.0の理論値である60MB/sを大きく上回っていますから、USB 3.0で動いていることは確実です。

ついでにもうひとつ。OTGってことはスマホでも使えるかなってことでMoto Z2 Playにこのアダプタを接続し、マウスを接続してみたところ、カーソルが出現。問題なく操作できました。


▲OTGだとスマホにUSB機器を接続できるようになるのがうれしいところ。ちょっと見づらいですが、スマホの画面にマウスカーソルがあるのがわかるかと

OTGアダプタだって言って売ればいいのに、なんでわざわざUSB 3.0であることも隠したうえ、充電・通信アダプタとしているのか理解に苦しみます。もちろん、充電もできるでしょうけど......。

実験4「Type-C 変換アダプタ」

最後は、microUSBからの変換となる「Type-C 変換アダプタ」。実は、このアダプタは以前見つけて分解もしていたのですが、その後店頭で見かけることがなかったので、てっきり販売終了になったのだとばかり思っていました。ですが今回、上の3製品の分解が終わった後に偶然発見。急遽テストに追加しました。


▲microUSBをUSB Type-Cへと変換するためのよくあるアダプタです。とても小さくシンプルなもの

全長2.5cmもないほど小さなアダプタで、外見上の特徴は特にありません。サクッと中身を見てみましょう。



▲当然ですがケーブルはなく、基板にコネクタ直の構成。片面にコンデンサと抵抗が載っていました

中身もシンプルで、基板の両端にUSB Type-CとmicroUSBのコネクタがそれぞれ接続されているというもの。片面にはコンデンサと抵抗が載っており、抵抗値を調べてみると約56.3kΩで、まともな充電用アダプタとなっていました。既存のmicroUSB充電ケーブルにこのアダプタを接続すれば、56kΩ抵抗の付いたUSB Type-C充電ケーブルへと変身するわけですね。microUSBとUSB Type-Cの両方の機器を持っている人にとっては、なかなか便利なアダプタです。

結論・まとめ

ということで、今回の実験からわかったことをまとめると、1.10cmの充電ケーブルは実用性高い2.Type-C/Type-Cケーブルは若干怪しい3.OTGアダプタは買い4.microUSBアダプタは抵抗入りでまとも
といったところでしょうか。

特に「高速充電・通信ケーブル Type-C >> Type-C」を除く3製品は思っていた以上に質が高く、いい意味で予想を裏切られました。ただ、なんであんなにパッケージは不親切なんでしょうか。その点を改善してくれたら、もう少し買いやすくなるのにな、と。でもまー、そういった商品を望むならちゃんとしたメーカーの製品を買えという話ですけどね。

USB Type-C関連は難しいことが多いので、分かっている人じゃない限り微妙な商品を買うのは控えた方がいいと思います。裏を返せば、自己責任で何とかできる人であれば、安くて良いものを見つけられるでしょう。個人的には、10cmケーブルとOTGアダプタが今回のアタリでした。