大嶋信頼『消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法』(すばる舎)

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ちょっとしたミスなのに必要以上に激怒する。上司からそんなパワハラを受ける部下は「叱責されるのは自分が悪いから」と思い悩み、心身を病んだり、転職を余儀なくされたりする。心理カウンセラーの大嶋信頼氏は、「パワハラやセクハラは、上司が部下を“嫉妬”した結果の行動である可能性が高い」という。上司の“奇っ怪”な精神構造と、理不尽な攻撃を回避する方法を解説しよう――。

※本稿は、大嶋信頼『消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

■「上司のパワハラの原因は部下に対する嫉妬」説

上司から過剰に叱責されて、会社に行くのが憂鬱。何かミスをしてしまうのでは、と思って前向きに仕事ができない。真面目に仕事をしているのに、「なんでお前は真剣に仕事をしないんだ!」と怒鳴られたりして、体調が悪くなる……。

上司からパワハラとも思えるような仕打ちを受けているにもかかわらず、「でも自分が悪いから仕方ない」と思う方は多いのではないでしょうか。

言われた側がダメージを受けるような言動、とくに「おまえを正してやっている」「相手が間違っていて自分が正しい!」というような態度で接してくる人は、「嫉妬の発作」を起こしている可能性が高いです。

「発作」という表現を使うのは、嫉妬は「動物的な反応」だから。ペットと飼い主との関係でも、飼い犬が飼い主の愛情が他の犬に向いていると感じると、急に不機嫌そうにうなりだすことがあります。

犬の場合と同様に、人間も嫉妬すると、自動的に破壊的なことを考えてしまう、という現象が起きます。

たとえば、自分の好きな人やパートナーが誰かと仲良くしていると感じたとき、

「私の好きな彼を飲み会に誘うあの子が許せない!」
「俺と付き合ってるのに、他の男と二人きりで会うなんて、なんて軽い女なんだ!」

など、憎しみや恨みや不安の感情を止まらなくなることがあります。

職場の上司が同僚に対して優しく接しているのを見ると、嫉妬の発作で気がつかないうちにふてくされた態度をとってしまうことも。自分の態度で職場の雰囲気を悪くしたとしても、「私がそんな態度をとっても当然でしょ!」と思ってしまいます。

「嫉妬の発作」が起きるのは、「注目が奪われる!」という感覚があるから。意識的には「自分だけを見てほしい!」と思っていなくても、嫉妬は動物的な発作なので、「奪われる!」ということに反応して、自動的に発作が起きるのです。

■なぜパワハラ上司は「謙虚な人」「若い人」「弱者」に嫉妬するか

「いやいや、だからと言って上司から嫉妬されるような優れたものなんてもっていないけど……」と思うかもしれません。しかし、嫉妬されやすいのは、単に「優れているから」だけでなく、「弱者」「若い」「謙虚」などの特徴があるのです。

動物の本能として、「弱者」を淘汰しようとする行動をとります。「弱者」は、自分の存在を脅かします。なぜなら、「弱い者は自分よりも大事にされる」から。弱者だと認識すると、動物的な本能が反応して、淘汰しようとしてしまうのです。

若い人が嫉妬されやすい理由は、「自分よりも経験がない」「自分より知識がない」ということで下に見られているから。そんな自分よりも下の存在が、周りの注目を奪っていく、と感じられたときに、嫉妬されてしまうのです。

■ベテラン上司がペーペーの新卒に嫉妬するメカニズム

また、何か優れた才能があっても、人から批判されないようにするために、目立たないよう、謙虚に振る舞ってしまう人もいるでしょう。このような謙虚な性格の人は、自分よりも周囲から優しくされやすく、脅威を感じる存在なので、嫉妬されます。

たとえば、ベテランの上司が若い新卒の社員に対して、「自分よりも優れている!」と感じると、その人の匂いなど、ちょっとしたことがきっかけで反応してしまって、嫉妬の発作を起こしてしまうのです。

また、もうひとつ嫉妬される特徴がある人は、「他人の気持ちを気にしやすい人」。人の気持ちばかり考えていると、脳内でストレスの電気がたまって解消できない、という現象が起きます。自分の脳にストレスの電気がたまっていると、相手がこちらに注目をむけたときに、こちらの脳内のストレスが相手に伝わります。これは、脳内にあるミラーニューロンという神経細胞という働きによるものです。ミラーニューロンは相手に注目を向けただけで、脳内でモノマネをする、という作用があります。そのため、こちらにストレスがたまっていると、相手の脳にストレスがたまって帯電し、「ビビビッ」と嫉妬の発作を起こしてしまうのです。

■理不尽な上司のパワハラ=嫉妬から逃れるための「護身術」3

【その1「この人は嫉妬している」と気づく】

では、嫉妬から逃れるにはどうすればいいのでしょうか。それは、「相手が嫉妬しているんだ」ということにまず気づくこと。嫉妬している人の特徴には次のようなものがあります。

▼嫉妬している人の特徴1:顔が能面のようになる

嫉妬の発作を起こしたときは、表情筋がうまく動かなくなります。笑顔が引きつったり、仏頂面になってしまったりするのですが、発作ですから本人はそれを自分でコントロールすることができません。こちらが話しているときに、相手の反応を見て、「まずいこと言っちゃったかな?」「間違ったことを言っているのかな?」と思うのは、こちらが言ったことに対して、相手が嫉妬の発作を起こして無表情になるからです。

▼嫉妬している人の特徴2:自分にだけひどい

次に発見しやすい特徴は、「他の人にはそんな態度をとらないのに、私にはなんで!」と思うような態度をとるとき。他の人はくだらない発言をしても、上司や同僚が「うん、うん」と優しく聞いていて、まるですごいことを言っているかのような扱いを受けます。ところが、自分が発言をしたときは、「みんな能面顔!」で無反応だから、「私の話し方がおかしいのかな?」と不安になります。こんなときは、高い確率で「周りの人が嫉妬の発作を起こしている!」と思って間違いないです。

▼嫉妬している人の特徴3:破壊的な人格になる

「こうなったのはお前のせい!」とふてくされた態度をとることで、こちらに罪悪感を抱かせて、精神的にダメージを与えます。発作なので意識せずに自動的にやっています。

嫉妬の発作を起こした「破壊的人格」でわかりやすいのが、「パワハラ」と「セクハラ」。上司が「なんでお前は仕事を真剣にやらないんだ!」と怒鳴りつけたりするのも、実は嫉妬なのです。精神的にダメージを与えている時点で、「嫉妬の発作」が働いている、と思って大丈夫。上司が「あんたには彼氏がいないの?」と職場で聞いてきたりするのは、「セクハラ」ですが、これも「嫉妬の発作」です。

言われた側は「嫌だな」と精神的にダメージを受けます。ダメージを与えるようなセクハラ発言をしてしまう上司は、嫉妬の発作を起こして破壊的人格に変身してしまって、意図しないでダメージを与えるような発言をしているのです。

相手の顔が能面になっていたり、責められて不快な思いをしたりするときは、「あ、この人嫉妬しているんだ」と気づくことが重要です。

■パワハラ護身術:しつこく嫉妬されても「無反応」を通す

【その2「嫉妬またぎ」をする】

さて、気づいたあとはどうすればいいか? それは「無反応」が正解です。

以前は会社の上司がパワハラをしてきたときに、一生懸命上司に「自分は悪くない」と説明していた人が、「これって嫉妬されているのかも?」と思って相手にしなくなると、上司のパワハラがなくなります。「パワハラは嫌だな」と反応してしまうと、相手の攻撃はおさまりません。「発作なんだ!」と相手にしなくなると、発作がおさまるのです。

なぜかというと、不安でいっぱいになっているときは脳にストレスがたまっているから。脳にストレスがたまっているときは、脳の電気(ストレス)が相手を刺激してしまいます。「これは嫉妬なんだな」と不安感から解放されると、脳にストレスがたまらなくなるので、相手を刺激しません。

過呼吸の発作を起こしている人には、あえて触れないという「発作またぎ」が効きます。嫉妬の発作も同様。発作は触れなければおさまります。

上司や先輩から必要以上に責められて嫌な気持ちをするときは、反省しない、対処法も考えないのが一番。いつの間にかパワハラされなくなるのです。

【その3 好きなことだけやる】

マイペースに、好きなように仕事をしているのに、まったく誰からも怒られず、かえって好かれて尊敬されている人もいます。こうした人は嫉妬の影響を受けにくいのです。なぜかというと、好きなことしかしていないため、脳にストレスの電気がたまっておらず、周囲を刺激しないから。

嫉妬の攻撃を受けやすい人は、自分の頭の中の不安感や他人のことを考えすぎてしまうせいで、脳のストレス(電気)が周囲に伝わり、相手を刺激してしまっています。

自分の好きなことを楽しんでいるときは、不思議と人間関係もうまくいくもの。

もし今、上司からのパワハラや誰かからの攻撃に悩んでいる人は、まずは少しでも「好きなことをやる」ことを仕事や日々の生活に取り入れてみたらいかがでしょうか。

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大嶋信頼(おおしま・のぶより)
心理カウンセラー
米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。ブリーフ・セラピーのFAP療法(Free from Anxiety Program)を開発し、トラウマのみならず多くの症例を治療している。嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長などを経て、現在は株式会社インサイト・カウンセリングの代表を務める。カウンセリング歴25年、臨床経験のべ7万9000件以上。

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(心理カウンセラー 大嶋 信頼 写真=iStock.com)