iPhoneチップを生産するTSMC工場停止の原因、実はWannaCryランサムウェア亜種と発表。しかし身代金要求はナシ
アップル関連の半導体を生産する台湾企業TSMCが先週末、複数の工場が停止に追い込まれた件につき、同社はWannaCryランサムウェアの亜種によるものと発表しました。外部のハッカーによる攻撃ではないとのこと。

TSMCはこの事故により出荷遅延と追加費用が発生すると予想し、第3四半期の収益への影響を約3%、粗利益率は約1%の影響を受けると見込んでいるとのこと。同社は次世代iPhoneに搭載される「A12」(仮称)プロセッサ生産を受託したと報道されており、iPhone生産への影響を懸念する声もあります。WannaCryランサムウェアとは、2017年の春頃に世界中で猛威を振るったマルウェアの一種。感染して発動するとPCのストレージを勝手に暗号化されてしまい、解除するために金銭を求められる身代金要求型ウィルスです。アメリカのFedEXやフランス自動車大手のルノー、ロシアの内務省やイギリスの病院にも被害が広がっていました。

TSMCの公式発表によれば、今回の事件は施設への新たなソフトウェアインストール中に誤動作が発生し(十分にウィルススキャンを行っていなかった)、ネットワークを通じてウィルスが拡大したとのこと。

同社CEOであるC. Wei氏は、このウィルスがどこから来たのか、どのようにセキュリティの手続きをすり抜けたかについては言及せず。ただし、TSMCを標的としたハッカーの攻撃ではなく、身代金の要求もなかったと述べています。

今回の工場停止が、新型iPhoneの生産に及ぼす影響は今のところ不明です。チップ製造の原材料であるウェハーには影響がなく、遅延は限定的であるという見方もあるとのこと。

ただし著名なアナリストGene Munster氏は、iPhoneの生産が遅れる可能性は低いものの、アップルとTSMCとの関係に影響があるかもしれないとの分析に同意。「アップルは、TSMCのセキュリティ問題について他のどの企業よりも深刻に受け止めるだろう」とコメントしています。

アップルが単一のサプライヤーへの依存を避けようとする傾向は、現状はサムスンが独占しているiPhone用のOLEDパネル生産につきLG Displayを第2の供給元として検討しているとの報道からも伺えたこと。iPhoneの中核であるAシリーズチップの受託生産も、今後は見直しがあるのかもしれません。