発表したものの、未発売が続くアップルのワイヤレス充電マット「AirPower」。iPhone、Apple Watch、ワイヤレス充電対応のAirPodsケース(未発売)を1枚のマットで充電できる(筆者撮影)

日本でのスマートフォン利用は、バッテリーとの戦いだ。米国に比べて、日本のほうがバッテリー持続時間に厳しい視線が注がれているのは、日本の通勤時間の長さだけではなく、日本市場の人々がより多くのことをスマートフォンでこなしているからだろう。

薄型デザインや高い処理性能、大きな高画質ディスプレーが求められる一方で、バッテリー持続時間を両立しなければならない。アップルは独自のプロセッサー開発に乗り出し、ソフトウエアと連携させ、薄さとバッテリー持続時間を両立させようとしてきた。

2018年秋にはさらに大画面のiPhoneを発売か

しかし有機ELディスプレーを備えた大画面薄型モデルがAndroidスマートフォンのハイエンドモデルで主流になるにつれiPhoneの競争力が失われてきたため、iPhone Xでは5.8インチ有機ELディスプレーを採用し、これをスタンダードモデルとして2018年秋発売に向けさらに大画面のiPhoneを準備していると伝えられている。

大きなディスプレーは消費電力が増す一方、デバイスが大きくなる分より多くのバッテリーを搭載できる。ディスプレーの消費電力を追加搭載できるバッテリーが相殺すれば、大画面だからといって持続時間が極端に短くなることを防げるのだ。

しかし、別の問題がある。すでに長年スマートフォンを利用している人ならわかるかもしれないが、大画面でバッテリーサイズが大きなスマートフォンは、充電するのに時間がかかるのだ。

そのためAndroidスマートフォンでは、既存のマイクロUSBコネクタを使いながら、高速充電に対応させたり、規格としてより高速な給電が可能となっているUSB-Cコネクタを活用する動きが数年前から活発化してきた。


2015年発売のMacBookからアップルのノートパソコンに採用されたUSB-Cコネクタ。高速充電に対応するiPhone付属の充電器への採用が見込まれている(筆者撮影)

これまでのiPhoneでも、よりバッテリー容量が大きなiPadに付属するUSB電源アダプタを用いての充電が可能だったが、iPhone 8シリーズ、iPhone Xシリーズでは、MacBookに付属する29WのUSB-Cアダプタと、別売のUSB-C - Lightningケーブルを用いてさらなる高速充電にも対応した。

iPhoneに長らく付属してきた電源アダプタは5Wの出力であり、iPad付属の12W、MacBook付属の30Wの電源アダプタの活用は、数字どおりに速くなるわけではないが、素早く給電するオプションとしては有効だ。

高価な付属品


Apple Storeで取り扱いがある7.5W高速ワイヤレス充電に対応するワイヤレス充電器の1つ、mophie wireless Charge Pad(筆者撮影)

「MacRumors」のiPhone X充電テストによると、バッテリー残量ゼロ%からの充電で、60分経過時点で、5Wの付属アダプタでは39%、12WのiPadアダプタでは72%、18W以上のUSB-Cアダプタでは79%という結果が得られている。

しかし、iPhoneやiPadに付属する充電ケーブルはUSB-AコネクタとLightningコネクタのもので、USB-Cタイプは別売りとなっている。

アップルは1メートルのケーブルを2200円(税抜)で販売しているうえ、MacBookシリーズを持っていなければUSB-C電源アダプタも5200円(税抜)で購入しなければならない。


アンカーが発売するUSB充電器「PowerPort+ 5 Ports USB-C」。4ポートのUSB-Aポートも高速充電に対応するほか、USB-Cポート1つを備え、MacBookシリーズの給電も1台で完結することができる(筆者撮影)

ワイヤレス充電も、アップルは「高速」とうたっている。

その理由は、現在iPhone Xなどが対応しているのは7.5Wの給電となっており、付属の5W電源アダプタよりも速くなるからだ。前述のiPhone Xの充電テストでは、5Wのワイヤレス充電では60分で38%と付属電源アダプタとほぼ同等だったが、7.5Wワイヤレス充電では46%だった。

付属ケーブルもUSB-Cに変更か

ケーブルと電源アダプタで合計7400円を支払わなければUSB-Cによる高速充電が利用できなかったiPhone。しかしこの秋から、付属する電源アダプタが刷新される可能性が出てきた。

秋に登場するとみられるiPhoneの付属品として、USB-Cコネクタを持つ18W電源アダプタの画像が報道された。アップル系ブログ「Macお宝鑑定団」は、中国のウェブサイト「充电头网」の写真を伝え、これを欧米系のメディアが引用する形で広まった。


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このコネクタが付属されれば、おそらく付属ケーブルもUSB-Cのものに切り替わるとみられ、標準電源アダプタのセットでiPhoneを高速充電することが可能になる。

一方、本体側のコネクタはコンパクトさに優れ、アップル独自規格として6年にわたって採用してきたLightningコネクタが引き続き使われると考えるのが適当だ。

現在の充電器やバッテリーは、USB-Aの出力端子を持っているものが主流であり、これが使えなくなってしまえば大きな問題になる。そのため、現行のiPhoneに付属している既存のケーブルをそのまま使えば、新型のiPhoneへの充電も問題なく行えるようにするはずだ。

しかし、USB-Aでは「高速」のメリットは得られない。出先においてモバイルバッテリーからの高速充電をしたい場合は、新しい充電器とケーブルを採用するiPhoneが登場してから発売される、USB-C端子を持つモバイルバッテリーの登場を待ったほうがいいかもしれない。