ハメス・ロドリゲスは思うようなプレーができず、フラストレーションを溜めていた。(C)Getty Images

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 日本代表がロシア・ワールドカップで白星発進しました。強豪コロンビアを2-1で下し、グループリーグ突破という目標が現実的になりました。
 
 サッカーは分からない。本当にいろんなことが起こるな、としみじみ感じるような立ち上がりでした。そして、サッカーとは時間が止まらず、待ってくれないため、心理がどんどん移ろいでいく。そんなスポーツだと改めて感じる試合でした。
 
 開始早々の3分で、コロンビアの中盤の要、C・サンチェスが退場し、さらにPKで日本が先制点を奪おうとは誰にも予想できません。この試合にいろんな想像を巡らせていましたが、このプレーですべてがひっくり返ってしまいました。
 
 ただ、このプレーも巻き戻せば、大迫選手がD・サンチェス選手との競り合いで身体を入れ替えたところから生まれたものでした。このプレーで大迫選手は、トットナムに所属する新進気鋭の若手センターバックに対し「やれる」と感じたのではないでしょうか。
 
 とはいえ、日本代表は、10人になった相手に対し、なかなか思うような展開に持ち込めませんでした。選手たちもこの展開は予想していなかったでしょう。バランスの取り方を迷っているように見えました。試合前には失なうもののなかったのが、退場者が出て、先制点も奪えたことで、失なうものに対する意識が大きくなってしまい、チャレンジとリスク管理のバランスを計りかねているようでした。
 
 ただ、チームとして準備してきた形も見えました。ひとつは、攻守におけるスタートポジションの明確化です。
 
 守備はパラグアイ戦の時のやり方を踏襲し、相手がビルドアップを始めたら、4-4-2のような形になります。香川選手が大迫選手と並ぶ位置まで出て、相手のセンターバックに規制をかけていく。今回のワールドカップでも多くのチームが採用しているバランスの取れた守備のスタートポジションです。
 
 一方の攻撃面は、パラグアイ戦より明確化されていました。ビルドアップを始めたら、吉田選手と昌子選手の間に長谷部選手が下りる。もしくは、吉田選手の右に柴崎選手が下りる。というふたつのパターンを使い分けながら、3-3-3-1のような形で攻撃をスタートしていました。相手に退場者が出た後もまずはこの形を作ろうとしているように見えたので、きっとチームで準備してきたものだと思われます。
 
 対するコロンビアは、ペケルマン監督が徐々に動きながら流れを引き戻そうと苦心していました。まず、ハメス・ロドリゲスに代わって起用したキンテーロをボランチに下げて様子を見ていましたが、香川選手の崩しから乾選手がフリーでシュートを打つ場面などを見て、サイドより中央からの攻撃に脅威を感じたのでしょう。クアドラードを下げて、ボランチに守備ができる選手を入れました。そして、キンテーロを右サイドに出し、少しだけ攻め残りさせてカウンターの起点にさせようという意図が見えました。
 
 日本は、ビルドアップの形までは見えましたが、ここまでフリーで持ち運べる展開は準備していなかったのか、その先は再現性のある動きはあまり見られませんでした。それにより、前半は数的優位を生かせない展開に終始してしまいました。
 
 そんななか、前半に追いつかれてしまいましたが、結果論で言うと、前半に追いつかれたのが日本にとって後半を戦いやすくしてくれたと思います。ハーフタイムに後半のバランスの置き方、攻めのポイントの作り方を整理することができたので、1-0のまま後半を迎えて追いつかれて慌ててしまうよりも良かったと言えました。
 
 日本が後半に定めたポイントは、”キンテーロのサイド”でした。日本の左サイドです。後半に入り、香川選手が頻繁に左サイドに顔を出して、乾選手と絡もうとするシーンが多く見えました。そこに長友選手、時には大迫選手まで絡んで、常に数的優位で崩しにいくことができました。