海禅寺副住職・薬師寺寛邦さん（画像提供：iroha records キッサコ）

「般若心経」（はんにゃしんぎょう）、読者の皆様もご存じではないだろうか。わずか300字足らずの本文に、大乗仏教の心髄が説かれているとされ、複数の宗派で読誦経典の一つとして用いられている。

そんな「般若心経」の読経のコーラスと、現代のポップスを組み合わせた楽曲「般若心経」のCDが2018年5月に発売された。あわせてミュージックビデオがYouTubeなどの動画サイトにも配信され、国内外で話題となっている。

「般若心経」のコーラスバージョンって、いったい何だろう？

天龍寺・曹源池庭園で撮影された動画に癒される


天龍寺・曹源池庭園を前に座禅を組む薬師寺さん（画像提供：iroha records キッサコ）

Jタウンネット編集部は、この「般若心経」コーラスバージョンCDを制作した、愛媛県今治市の薬師寺寛邦さんに話を聞くことにした。電話で答えてくれた薬師寺さんは、海禅寺副住職だが、ミュージシャンでもある。「キッサコ」というバンドを主宰し、音楽活動を行っている。

「2003年、京都でバンド『キッサコ』を結成し、アルバムも多数発表し、コンサート活動を行ってきました。読経に音楽を重ねる『般若心経』コーラスバージョンをコンサートの中で試みるようになったのは、2016年頃から。予想以上に反響が大きいので、いろいろ試行錯誤を繰り返してきました」

CD制作にあたっては、ベースとなる素の読経はもちろん薬師寺さんの声だが、コーラスの各パートも薬師寺さんがすべて担当した。声を次々と重ねてハーモニーを形成し、結局、21声重ねたとのこと。ギター演奏は自分自身で行ったが、パーカッション部分は打ち込みで行ったという。アレンジはプロのアレンジャーに依頼したそうだ。

「般若心経はつながりのお経だ、と私は思います。声が重なることや、いろいろな人の力が加わり、つながることが大事だと思います」

動画はYouTubeで公開されているので、閲覧できる。視聴回数は8万回を超えている。

【MV】般若心経 cho ver. [short mix] @天龍寺・曹源池庭園 / 薬師寺寛邦 キッサコ

動画が撮影されたのは、薬師寺さんが修行した京都市の天龍寺だ。天龍寺は世界遺産「古都京都の文化財」の構成遺産の一つ。足利将軍家と後醍醐天皇ゆかりの禅寺として京都五山の第一位とされている。

特別名勝の曹源池庭園を背景に、読経する薬師寺さんが登場する。この場所は、修行中の薬師寺さんが「夜座」（夜中に座禅を組むこと）を行っていたところだ。一方、雲龍の襖絵をバックに、畳の上でダンスを踊るダンサーは、ワトリー・理恩さんだ。座禅の「静」と、ダンスの「動」が、入れ替わりながら映し出される。

「座禅は人の内面を、ダンスは生活を表わしています。この静と動の対比が、動画の見どころの一つです」と薬師寺さん。動画の監督・撮影・編集は北森正樹さんが担当した。

動画は、中国や台湾のSNSサイトでも大ヒットとなっているという。


「般若心経」CDカバー（画像提供：iroha records キッサコ）※CD版は、日本国内のCDショップ、または Amazon、楽天等にて販売。Digital版もある。