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タレントの松居一代さんが、元夫で俳優の船越英一郎さんから名誉毀損で刑事告訴された。松居さん自身が5月23日、YouTubeの動画で報告。報道などによると、船越さん側が2017年9月に刑事告訴、北沢警察署(東京都世田谷区)に受理されたという。松居さんは5月24日、5月28日と2回にわたり北沢警察署で任意聴取を受けている。

松居さんは、YouTubeなどで船越さんが不倫したなどと主張、船越さんに対する名誉毀損や業務妨害を繰り返したとして、船越さんの所属事務所のホリプロが昨年、松居さんに損害賠償を求めて提訴。今年5月16日に和解の成立が発表されたばかりだった。船越さんと松居さんは離婚調停も行い、昨年12月には離婚が成立している。

しかし、警察が刑事告訴を受理し、任意聴取を始めたことで、この騒動は民事から刑事へと舞台を移した。民事と刑事の名誉毀損はどのように違うのだろうか。起訴されるかどうかのポイントはどこにあるのか。清水陽平弁護士に聞いた。

●民事は「慰謝料払え」、刑事は「罪を償え」

民事と刑事の名誉毀損はどう違う?

「一般の方にはそれほど馴染みがないかもしれませんが(私も大学で法学部に入るまで意識したことがありませんでした)、法律問題には、大枠でいえば民事と刑事があります。

民事というのは、当事者の間での紛争解決のことを指し、名誉毀損に関して分かりやすくいえば、『慰謝料を払え』がこれに当たります。刑事というのは、警察の捜査から有罪判決までの一連の流れを指し、『罪を償え』、つまり犯罪者として処罰するというのがこれに当たります。

このように、民事と刑事ではそもそも目的とするところが違っており、追及の主体も異なっています。民事は当事者が請求していく必要がありますが、刑事では警察が捜査し、検察が訴追する必要があり、一応、被害者参加制度などはありますが、被害者は手続きに直接関与するわけではありません。

また、名誉毀損罪は『親告罪』とされており、告訴がなければ起訴することができません。告訴とは、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示のことで、犯人の処罰を求める意思表示の有無という点で、被害届とは異なります」

●公共性、公益目的、真実性の要件を満たす場合には違法性なし

松居さんが起訴される可能性は?

「起訴されるかどうかは、最終的に検察官が決めることになります。

起訴するかどうかの判断では、公判において犯罪事実の立証が可能かどうかが、まず検討されることになります。

船越さんの名誉が毀損されたといえるかどうかが検討されることになりますが、仮に松居さんの行為が船越さんの社会的評価を低下させるものだとしても、公共性、公益目的、真実性といった要件を満たす場合には、違法性がないことになるため、犯罪事実の立証ができないことになります。

本件では、具体的に何をもって告訴事実としたかは明らかではないですが、松居さん側が相当程度の根拠を示すことができれば、犯罪事実の立証は難しいとして起訴されない可能性もあります。

なお、仮に犯罪事実の立証が可能だとしても、初犯であるとか、本人の反省の程度などを考慮して、起訴猶予処分とする例もあります」

名誉毀損罪には、どのような罰則がある?

「名誉毀損罪の法定刑は、『3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金』とされています。これはあくまで罪の上限なので、このような定めがあるからといって、直ちに3年の懲役刑や50万円の罰金といった処分がされるわけではありません。

一般的には、初犯であれば、仮に懲役刑が選択されても執行猶予がつくでしょうし、罰金刑であれば30万円程度が認定されることになるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitter、Facebookに対する開示請求でともに日本第1号事案を担当し、2018年3月、Instagramに対する開示請求の日本第1号事案も担当。2016年12月12日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第2版(弘文堂)」、2017年1月18日「企業を守る ネット炎上対応の実務(学陽書房)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp