子どもと居酒屋に来る「いざか族」が増えている

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 近年、子どもと一緒に居酒屋を利用する家族連れが増えています。子ども用のメニューやキッズスペースを用意している店舗も登場し、ファミリーレストランと同様の感覚で利用している人も多いようです。こうした、家族団らんを目的として居酒屋で食事をする人たちを総称した「いざか族」という呼び名も生まれています。

 アルコール類を提供する居酒屋に子どもを連れて行くことについて、ネット上では「ありえない」「居酒屋に子どもがいると違和感しかない」「深夜じゃなければよいのでは」「ファミリー歓迎の店なら問題ない」など、賛否両論の声が寄せられています。

 これについて識者の見方はどのようなものでしょうか。著書に「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」(日本実業出版社)などがある子育て本著者・講演家の立石美津子さんに聞きました。

ファミリー層を取り込みたい、店側の営業戦略

Q.「いざか族」が増えている背景として、どのようなことが考えられますか。

立石さん「若い世代のお母さんに『子どもを連れて食事ができる場』として居酒屋を利用してもらい、ファミリー層を取り込むことで売り上げアップを図るという店側の営業戦略的な側面があるでしょう。最近の居酒屋チェーンでは、子どもが好む味付けの料理や取り分け用のキッズ用食器、さらには子ども用のいすなど、子ども連れでも食事がしやすいサービスを提供している店も増えています。ファミリーレストランのように気軽に利用できる雰囲気作りを意識することで、若い世代の母親の来店を促しているほか、子どもたちが幼いうちから店の味に慣れ親しんでもらい、末永くお客さんになってもらいたいという狙いもあるのかもしれません」

Q.ファミリーレストランではなく、あえて居酒屋に子連れで来店する家族側には、どのような理由や事情があるのでしょうか。

立石さん「最近の居酒屋はファミレス風のカジュアルな店や、防音設備の整った個室のある店もあります。こうした雰囲気の居酒屋は、他の利用客に迷惑をかける恐れもなく、子ども連れでも気兼ねなく食事を楽しめるため、誕生日会やクリスマス会などのイベントに利用するファミリーも増えているようです。『日々の食事作りから解放されたい』『たまには外でお酒を飲んでストレス解消したい』と考える親も多いことでしょう。ファミレスよりもリーズナブルに食事ができる、今どきの居酒屋が重宝されているのではないでしょうか」

Q.いざか族について、どのようにお考えになりますか。

立石さん「当然のことですが、店側が未成年であることをわかった上でお客さんにアルコールを提供すると罰せられます。しかし、店にもよりますが、アルコールを提供する店が『未成年者の来店』自体を断っているケースは次第に少なくなってきました。また、お酒を置いてある場所に子どもを連れて行くことを禁止する法律があるわけでもありません。そこで、各家庭の方針があってもよいと思います。

ただし、世代間の感覚の違いによる温度差は、確実にあるように思います。実際に、年配の方が、子連れの若夫婦に対して『お酒を提供する店に子どもを連れてくるなんて非常識だ』と怒っている場面を目にしたこともあります。70代以上の人たちが子育て現役世代だった頃は、居酒屋といえば『赤ちょうちん』や『バー』のイメージでした。そうした場所に子どもを同席させることへの抵抗感が強いのでしょう。

また、深夜の利用や、タバコの煙が充満している空間に子ども連れでいると、周囲に『非常識な親だ』と思われても仕方ないかもしれません」

Q.子どもと居酒屋を利用する時に気を付けるべきことは何でしょうか。

立石さん「連れて行く時間帯には配慮が必要です。子どもを遅い時間に外出させると寝不足になり、心身の発達に影響を及ぼす可能性があります。早めの時間に入店し、帰りも遅くならないようにしましょう。また、個室や禁煙席を予約するなど、子ども嫌いの人やタバコの煙にも気を付けることが大切です。

お酒を飲んで酔っ払った親が子どもを放ったらかしにし、子どもが騒いでいるケースも少なくありません。居酒屋に限ったことではありませんが、子どもが通路を走ったり、店内を汚したりするなど、他のお客さんの迷惑になるような行為を見過ごすのはNGです。親が酒を飲むことの多い居酒屋においては特に注意し、常に子どもから目を離さないようにしましょう」