しかし、そうした具体的な話は、なぜか聞こえてこない。「レベルを上げよう」は、お題目にしか聞こえないのだ。実際、後ろで守るサッカーを目にする。自分たちの都合を最優先させるサッカー、サッカーの進歩に貢献しないサッカー。ズバリ、後ろで守ろうとするサッカーだ。

 先週のJリーグで川崎フロンターレと対戦した湘南ベルマーレは、後ろで守るサッカーを展開した。1-1で引き分けることに成功したが、試合後の会見で、試合を振り返るチョウ貴裁湘南監督の歯切れは悪かった。引いて構えるべきか、高い位置で構えるべきか。選択の難しさについて、訴えかけているように聞こえた。

 だが、答えはハッキリしている。サッカーの発展に貢献しようとすれば、引いて構えるサッカーはバツだ。弱者が強者相手に高い位置からプレスを掛けに行くことは、確かに少々勇気が必要とされる行為かもしれない。川崎と湘南の戦力差を考えれば、引いて守った方が無難。よくいえば現実的な采配に見える。しかし、そうしたチームが増えると、リーグ全体のレベルは上がらない。選手の技術は進歩していかない。

 このチームのサッカーは、日本の普及発展に貢献しているのか。あるいは監督が自らの立場を守ろうとする、自己中心的なサッカーなのか。Jリーグ観戦における大きなチェックポイントになる。

 Jリーグだけに留まらない。ありとあらゆるサッカーにあてがわれるべき物差しになる。よいサッカーか否かの定義の分かれ目でもあるのだ。