<健康食品の詐欺事件>“広告塔”に大御所・ベテラン芸能人がなりがちな理由
またまた起きた巨額詐欺事件。逮捕された健康食品会社『ロイヤルフーズ』の社長・原田一弥容疑者ら8名が「2年で12%の利息をつける」と、高齢者ら約1000人をだまし、10年間で60億円以上を集めていた。
お年寄りがなぜコロッとだまされてしまうのか、そこには“広告塔”と呼ばれる芸能人の存在があった。今回のケースでは、元フォーリーブスの江木俊夫、小林幸子、山川豊、柏原芳恵らだ。
“広告塔”とは辞書によれば《ビルの屋上などある広告のための看板を掲げる塔》あるいは《(比喩的に)ある組織・団体の宣伝の役割を果たす有名人》となっている。
本来、悪い意味ではないようだが、“広告塔の芸能人”という場合は、いいイメージでとらえられることはほとんどないだろう。
怪しげな宗教や大掛かりな詐欺などの場合に必ずと言ってもいいほど登場する“広告塔”だが、なぜか、ピークを過ぎた大御所やベテランと呼ばれる人たちが多い。
「騙す対象がお金を持ったお年寄り中心ですから、現在活躍していなくても、お年寄りがよく知っている芸能人じゃないと意味がないんです。一方で、破格のギャランティーを提示されれば、芸能事務所としてもオファーを受けてしまうんじゃないでしょうか」(社会部記者)
過去の詐欺事件でも“広告塔”が使われた。記憶に新しいのは'09年に発覚した、およそ36000人から2405億円もの金を集めた健康食品会社『L&G』による巨額詐欺事件。
この事件で、名前が挙がったのが細川たかしだ。彼以外にも八代亜紀、藤あや子、瀬川瑛子、香西かおりなどの演歌歌手やモノまね芸人の名前が挙がったが、彼らは直接、『L&G』を賛美したり、宣伝したり会員を勧誘したりしたわけではない。
「詐欺を謀った会社が企画したコンサートに出演しただけですが、会員になれば無料で彼らのコンサートを見に行けるということで、会員になった人は多いです」(前出・社会部記者)
細川はこの事件で、被害者弁護団から損害賠償請求訴訟を起こされているが判決では請求は棄却された。
裁判所の判断では《イベント出演やその際の発言は『L&G』商法を勧めたものとはいえず、もっぱら受動的な立場でかかわったにすぎない》また《出演にやや注意を欠く面があったとしても、『L&G』の信用性をあらかじめ十分に調査、確認しなければ出演してはならない法的義務はない》としている。
しかし、
「この事件で細川さんは『紅白』を辞退したり、その後仕事にも影響が出ていますね」(スポーツ紙記者)
今回の事件も同じケースだ。会員を勧誘するための“撒き餌”として歌謡コンサートが利用されたのである。
そしてこの手の事件が起きたときに、芸能人サイドが出すコメントはいつも同じ。
《こちらも困惑しております。そういう会社だとは知りませんでした。コンサートに出演しただけで、会社の宣伝はしておりません。ある意味こちらも被害者です》
だが、彼らの受け取るギャランティーは被害者からだまし取ったお金であることは間違いない。法律的にはクリアしているかもしれないが、自分たちが少なからずも詐欺に加担したという自覚を持ってもらいたいものだ。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。