居酒屋で「外国人店員」が増えている理由

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■留学生は週に28時間働ける

人手不足が深刻だ。居酒屋などにいくと、店員は外国人ばかり。いまや日本人だけでサービス業は成り立たない。

ところで、店舗で働く外国人の多くは、在留資格「留学」を持つ留学生。留学生は学校で勉強するために在留しているが、バイトをしても法的な問題はないのだろうか。

実は、在留資格「留学」の外国人には資格外活動の許可が簡単に出る。風営法対象業務に就くことはできないものの、店員などの単純労働はオーケー。就労時間は週28時間以内で、長期休暇中なら1日8時間働いてもいい。

ただ、ルールが守られているかは怪しい。入国管理法に詳しい山脇康嗣弁護士は実態を明かす。

「1カ所で28時間以上働くとバレるので、バイトを掛け持ちして28時間以上働く留学生は少なくない。立証は難しいですが、仮に店側がそのことを認識して黙認していたとしたら、最悪の場合、刑事罰を受けます」

とはいえ、事業者も危ない橋は渡りたくない。最近は外国人を総合職で採用して、現場研修として店で働いてもらう大手飲食チェーン、アパレルが現れ始めた。

「総合職採用の外国人は在留資格『技術・人文知識・国際業務』で働くことが多いのですが、この在留資格は本業もバイトも、単純労働は不可です。ただ、本業のための『現場研修』は可能。そこで、例えば在留期間3年のうち1年程度は研修として店で働いてもらうかたちにするのです」

■専門性重視から必要性重視の時代に

脱法的な印象があるが、企業が法律スレスレのところを狙わざるをえないのは、日本の入管制度が「就労系在留資格は専門性の高い外国人だけに与える」という建てつけになっているからだろう。

しかし、人手が圧倒的に足りないのは専門性の低い単純労働の現場だ。国もそのことは意識していて、入管制度を“専門性”から“必要性”重視にシフトさせようとしている。

象徴的なのは、9月から加わった新しい在留資格「介護」だ。これまで介護は単純労働とみなされ、外国人が介護就労目的で在留することはできなかった。インドネシアやフィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者を受け入れる仕組みはあるが、EPAという経済連携の枠組みであり、数も少ない。このままでは介護現場が崩壊するのは明らかだ。

そこで国は入管法を改正。留学生として来日して2年間勉強して介護福祉士の資格を取れば、在留資格を「留学」から「介護」に変更して介護職に就けるようにした。更新も可能で、ゆくゆくは永住のチャンスもある。

「介護福祉士という国家資格の取得を条件にしたことで、専門性が必要という建てつけを維持しつつも、現場のニーズに応えるかたちになりました。今後も、在留資格に求められる専門性は緩和される方向で制度改正が進むでしょう」

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 山脇康嗣 写真=共同通信社)