主要カタログの発行総数は約3600万部

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 インターネットを使った通信販売が拡大するなか、昔ながらのカタログによる通販で売り上げを伸ばしている『ベルーナ』。総合通販では“ひとり勝ち”といわれる、その要因とヒット商品について取材しました。

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カタログは商品力のキモ、年間の紙使用量9万トン!

 ミセス向け衣料品の通信販売のためのカタログ誌『ベルーナ』創刊から30年以上。同誌を発行するベルーナでは現在、『リュリュ』(20代〜30代)、『ラナン』(30代〜40代)、『ベルーナ』(40代〜60代)、『ルフラン』(60代以上)と、世代別のファッションカタログ誌を、年4回以上発行。無料で配布している。

「メインの『ベルーナ』は、1回で400万部を発刊しています。カタログだけでなく冊子、折り込みを含むと、1シーズンで50以上の発行物があります。年4回とすると、発行物は年間200を超えます。紙の使用量は年間9万トン。10トントラックだと毎日20台を満載にする計算になります」(安野雄一朗・ベルーナ専務取締役)

 膨大な量の紙を使ったカタログは商品力のひとつと位置づけ、こだわって制作。撮影の仕方で、服の色の濃淡やシワの出方に違いがあるため、ポーズやライティングにこだわり、人気モデルやカメラマンを起用している。

「(カタログは)商品のよさや世界観を伝えるための大切なツール。いい写真は、商品の力を100%引き出すと考えています」(高橋亮吾・ベルーナ企画本部長)

 カタログは、色の再現性がネットに比べて高く、色柄モノが中心に。ネット販売もしているが、利用者が使うパソコン、スマートフォンによって、色みに違いが出るため、白、黒、グレーを中心にした商品が売れ筋という。

 カタログ利用者は、年齢が高くなるにつれて増え、コア層の60代では9割にのぼる。対照的に、20代は6割近くがネットを利用して購入している。

1億円でヒット、3億円超のパンツ

 取り扱う衣料点数は、年間3万〜4万点。そのなかから、1億円を売り上げると、ヒット商品といわれる。

 最近の最大ヒットは、秋冬シーズンで3年目を迎えた『ポカポカすっきり! あったか裏ファーパンツ』(1990円/S〜LLサイズ)。昨シーズンは20万本を記録し、3億円以上を売り上げた。

「テレビCMとの連動商品だったんですが、買いやすい値段にチャレンジしました。

 パンツはトップスと比べると、形やレングスなど好みが分かれ、体形の違いも多様なので、売るのが難しいです。パンツの売り上げは、全体の20〜30%になります。でも、パンツを買って気に入ってもらえると、次の購買につながりやすい傾向があります。そのため、パンツは新規商品としても気合を入れて作ることが多いです」(安野専務)

 サイズの豊富さも人気の理由で、基本はS〜5L、商品によっては10Lまで幅広く取りそろえている。

 30年にわたるカタログ通販のデータをもとに、トレンドをとらえながら商品開発をしているが、「創業以来、流行は追いすぎない、そのちょっと手前で作っています」(同専務)。

 晴れ着もあるが、日常着のほうが、より好まれているようだ。

 ヒット商品は、全体の1割〜2割。そのため商品企画においては、ヒット商品作りを目指すことを、あえて掲げ、スタッフを鼓舞している。

「カタログは、気づき、興味、共感の3段階を経て、買っていただける。ヒット商品は、共感してもらった人が多いということだと考えています」(高橋企画本部長)

 予想以外にヒットしたケースも。昨年、販売したメンズ用のダウンジャケット(5990円)は、欠品になるほどの人気ぶり。“コートや厚手モノの売れ筋がいいのは、3年おき”といわれるファッションサイクルがあるそうで、理由ははっきりしないが、それに当てはまったという。

増収増益でひとり勝ち、発行部数は前年比5%増

 近年、総合通販業界では、『ニッセン』が、業績不振からセブン&アイ・ホールディングスの子会社になり事業が縮小、『セシール』が『ディノス』と合併するなど変遷。

 ライバルの競争力が落ちているなかで、ベルーナの2018年3月期の連結業績は、売上高が前年比9・5%増の1600億円、営業利益が同19・5%増の130億円を見込み、増収増益と好調さを示し“ひとり勝ち”といわれている。

 主要カタログの発行総数は前年比5%増の約3600万部、カタログを発送している対象者は同12%増の約400万人にのぼる。

「今は、来年の夏商品を企画し、年内にはカタログの撮影を終えます。(スケジュールが早く)トレンドをとらえられないから紙(雑誌)はダメともいわれていますが、当社においては、カタログの比重は圧倒的に多く、事業の柱です。カタログ用、ネット用、店舗用と商品を分けることもしていて、お客様には買いたいと思う販売チャンネルを使っていただくことが、大切だと思っております」(安野専務)

 さらに、最近は専門カタログが業績を伸ばし、看護師向けの『アンファミエ』と『ナースリー』の両誌で、100億円近くを売り上げている。

ベルーナ成長の裏側

 最後に、『通販ビジネスの教科書』(東洋経済新報社)などの著書があるマーケティングプランナー・岩永洋平さんに、“ベルーナ成長の裏側”について解説してもらった。

「ディノス・セシールや千趣会などのカタログ通販業態は近年、ZOZOTOWN、AMAZON、楽天市場のネットモールの成長に押されている傾向があります。そのなかにあって『ベルーナ』は、成長を続けているカタログ通販会社です。なぜベルーナのビジネスは消費者を惹きつけるのでしょうか。

 ひとつにはベルーナが埼玉県上尾市の会社だということが象徴的です。ファッションというと表参道や代官山から発信されるビジネスのように思えますが、『しまむら』に代表されるようなフォロワー層の膨大な需要があります。

 一見すると泥臭いベルーナの商品・カタログの誌面は、実は計算しつくされたもの。ふつうの女性の生活感覚から決して離れずに、少しだけ新しいファッションを低価格で提案する楽しさにあふれています。例えば、多彩な柄がそろった今シーズンのチュニックも、すっきりしたシルエットに見える工夫がなされています。しかも、それが手ごろな値段で買える。何枚か買っておきたい気持ちにさせます。

 また、意外なことにワインの通販でベルーナは日本一の企業です。ワインのある生活や便利な冷凍そうざい、忙しい看護師さんに特化したカタログ、大きいサイズ専門店など、豊富な切り口で消費者の需要を創造する、新しい暮らし方を提案している点もベルーナの魅力です」

 ネット販売隆盛のなか、アナログのカタログならではの魅力と需要があることは、確かなようだ。