<母子6人殺害事件>思い出すのは、身勝手な父親より “弟思いの長女の姿”
妻と子ども5人を刺した男は、自ら車を運転し茨城県警日立署に出頭、「家族を殺して自宅に火をつけた」と当直の警察官に打ち明けたという。
今月6日午前5時ごろ、同県日立市の3階建て県営アパートの一室で火事があり、中から母親と4人の子どもの遺体が見つかった。
殺人容疑で逮捕されたのは会社員の小松博文容疑者(33)。遺体は妻の恵さん(33)、長男の幸虎君(たから・7)、次男の龍煌君(りゅうあ・5)、双子の三男の頼瑠君(らいる・3)と四男の澪瑠君(れいる・3)の5人。
長女の小学6年の夢妃さん(むうあ・11)は病院に救急搬送されたが、搬送先で亡くなった。鋭利な刃物のようなもので身体を何度も刺し、その後、火を放つという残忍な手口。
一部報道によると、妻から離婚を切り出され子どもたちを渡したくなかった、などと供述しているという。科学警察研究所で働いた経験もある岩手大学の鈴木護准教授は、
「特殊で例外的な事件ではないんです。ストーカーやDV事件の加害者と同じような行動です。離婚が原因との報道もありますが、奥さんの幸せは許せない、子どもを殺したのも手元に置けないのなら自らの手で命を奪う、という身勝手な考え方と強い意志で家族の関係を終わらせようとしたのではないでしょうか」
と事件を読み解く。
団地内を猛スピードで車を飛ばし通行人をひきそうになったり、駐車場トラブルなど、迷惑な行動で近隣から嫌がられていた小松容疑者。
弟思いの姉
そんな父親の評判の反面、近所の人が涙ながらに思い出すのは下の弟たちと遊んでいた長女・夢妃さんの姿だ。
「いつも姉弟5人で遊んでいて僕たちと遊んだことはあんまりなかったけど……」
近所に住む小学生の男の子は表情を曇らせる。娘が夢妃さんと同じ小学校に通っているという近所の母親は、
「うちに遊びに来たときは双子ちゃんも一緒に連れてきていました。いつも弟の面倒をよく見るお姉ちゃんでしたね」
亡くなる前日まで学校に通っていた。1・2学期の欠席は0日。教師たちも、周囲を気遣う夢妃さんを覚えている。
「面倒見がよくて、友達のこともよく気にかけてくれていました。クラスの男の子の荷物の整頓を手伝ったり、しっかりした一面があったようですね。家事の手伝いも進んでよくすると、話していました」
と校長。続けて教頭が、
「頑張り屋で、教師や大人の手を煩わせることがないように気をきかせてやってくれるような印象はありましたね。いつも人懐っこいニコニコした笑顔が印象的な子でした」
弟思いの夢妃さんは、離婚に向かう両親を、どう見ていたのか。小学6年ともなれば状況が理解できる年齢だ。
「いい子にすれば両親が仲よくしてくれるのでは、という淡い期待があったことも考えられます」(前出・鈴木准教授)
事件現場から車で約15分のところに、恵さんの実家がある。恵さんの母親が経営する美容院に通っていた女性は、「恵さんのお母さんはあまり自分の話はしないのですが、“娘のとこの孫が5人いるの、面倒見るのが大変”ってうれしそうに話すのを聞きました」
実家の窓はカーテンが引かれたままで人の気配はない。
恵さんのSNSには、笑顔の家族旅行の写真、3歳の双子の誕生日を祝う写真などが残されている。『家族』を守りたかった少女の願いを、夫であり父である小松容疑者が根こそぎにした。