小池百合子、衆院選の出馬は「100%ない」戦国時代顔負けのバトルロイヤルに突入
「(衆院選出馬は)100%ありません。これはもう最初から申し上げていることで、(小泉)進次郎さんなどもキャンキャン、ウフフ……あの〜囃し立てているんですが、お父さんと約束しておりますから。はい。出馬はございません。小泉元総理からも“都知事で頑張れ”と言われておりますので」
東京都知事で希望の党代表の小池百合子氏(65)は3日、鹿児島県庁で記者団の質問に対し、国政に転身しないことをはっきりさせた。
これまでも同趣旨の質問には「都政でしっかり頑張る」などと否定的な考えを匂わせてきたが、パーセンテージを示して決着をつけた。小池氏に何があったのか。
全国紙政治部記者は「安保法制や憲法改正に反対する民進党議員について“排除いたします”と宣言したのがまずかった」と話す。
「エラソーに感じる有権者が少なくなかった。党公認と引き換えに10項目ある『政策協定書』への署名を求めたのも“踏み絵”を迫るようで感じが悪く、打倒・安倍政権のスローガンはすっかりかすんでしまった」(同記者)
政治家の出馬表明はタイミングが難しい。期待度がMAXに高まるまで焦らし、タイムリミット寸前で出馬宣言するのが最も効果的とされる。選挙戦の話題をかっさらうことができるからだ。
ただし、焦らしている間はマスコミの追及が続く。
「小池氏は“出ない”とはなかなか言わなかった。衆院選に出ますか? の質問に対し本当に誤解のないように否定したいのならば“出ません”と、ひと言いえばよかったんです。実際は、初の女性宰相に就任するチャンスがめぐってきてやる気満々。都知事の後継候補も真剣に考えていたようです。さながら歯向かう敵をなぎ倒して進軍する“鬼武者モード”だった」
と都政担当記者。
小池氏は昨年夏の都知事選、今年7月の都議選で古巣・自民党に向けて刀を抜いて喝采を浴びた。
ところが、今回は……。
「刀を振り回しすぎて瀕死の民進党に切りかかってしまった。強者に立ち向かうはずが弱い者いじめになってしまい、一気に逆風が吹き荒れた。民進党議員は反発し、希望の党内部はドタバタ続き。世論調査では都政に専念してほしいという批判が強かった。やむなく、小池ブランドに傷がつく前に事態の収拾をはかった」(前出の都政担当記者)
自民党の筆頭副幹事長を務める小泉進次郎氏(36)も小池氏を追い詰めた。
「何度も言うけど、小池さん、(衆院選に)出てきましょうよ」
父親の小泉純一郎元首相(75)譲りの短いフレーズで衆院選出馬を挑発し、そのあげく、「出ても無責任。出なくても無責任」と皮肉った。
小池氏が出馬を完全否定する直前、進次郎氏は都内の街頭演説で小池氏批判を重ねた。
「今回の選挙は『責任』対『無責任』の戦い。1つ目の無責任は……」
と切り出し、
「都知事選挙いつやりましたか。去年ですよ。出たら都政を投げ出す無責任。民進党は前原さんが代表になったばっかりです。いちばんの大仕事は党をなくすこと。党をなくしてまで来たのに、小池さんは出てくれないんですか。出なければ出ないで無責任。無責任のジレンマに陥った。無責任のジレンマを作り上げたのは小池さんなんです。(中略)そして……いくつまで言っていいんですか、これ。挙げればキリがないんでね」
と拍手を誘うのだった。
小池氏が「キャンキャン」と罵りたくなるはずだ。小泉元首相は原発ゼロに向けて小池氏にエールを送りつつ選挙戦には関わらないことを公言しており、進次郎氏の“口撃”はやみそうもない。
さらに、小池氏の足元の都議会でも激震が走った。小池都政を支えてきた都民ファーストの会の都議2人が5日に離党。同会の不透明な人事や情報発信の制限、国政に手をのばす小池氏の政治姿勢に疑念を持ったという。
一方、離党ドミノから起死回生の“新党合流”を夢見た民進党議員・元議員は『希望の党合流組』『無所属組』『立憲民主党組』に3分裂した。
主役に躍り出たのは枝野幸男・元官房長官(53)だ。
枝野氏は2日、都内で立憲民主党の立ち上げ会見を開き、「この総選挙で安倍政権の暴走に歯止めをかける」などと決意表明した。
「残念ながら希望の党の理念や政策は、私たちが積み重ねて目指してきた方向性とは異なるものだと判断せざるをえません。政治家にとって理念や政策は譲ってはならない筋。私たちの理念や方向性について期待して見守ってくれたみなさんに選択肢がない状況になっています。政策をさらにブラッシュアップしながら国民のみなさんの声を受け止めたい」(枝野氏)
記者団から、前原誠司代表(55)が小池氏に騙されたとする見方や、前原氏が確信犯的に民進党内を騙したとする見方があることについてどう思うかという質問があった。
枝野氏は、「私はそれについてコメントできる立場だと思っておりません。ただ、こういう結果になったことは大変残念に思っております」と恨みごとを口にしなかった。
前出の政治部記者は、
「枝野氏の愚直な政治姿勢は一定の共感を集めている。希望の党の改憲や安保法制へのスタンスは安倍政権と変わりなく、政策的に自民党VS枝野新党の選挙戦になることを期待する声は大きくなっている」
と指摘する。
前原代表は党分裂について、
「すべて想定内だ。自分の判断は正しかったと思っている」と述べている。
政権選択を実現する二大政党制はどのようなかたちに収まるのが望ましいのか。
日本大学法学部の岩井奉信教授(日本政治論)は「それこそ有権者の判断に委ねられる」として次のように話す。
「例えば、アメリカは保守と保守の二大政党です。イギリスも保守か革新かではなくなってきている。時代とともに争点は変わってきているといえます。希望の党と立憲民主党に政策面で分かれたのは有権者にはわかりやすいでしょう。
しかし、選挙後の勢力図がどうなるかはわかりません。候補者に表と裏がありそうなことも気にかかる。所属する政党の政策と、これまでの政治活動が合致しているか、選挙戦を通じて細かくチェックする必要があります。自分の判断基準を定めておいたほうがいいでしょう」
政治に何を求めるか。投票日を迎える前に考えたい。