当然燃費には効果があるが局面によっては逆効果も

 エコ関連の内容というのは、非科学的なことが正々堂々と認知されていることが少なくありません。困ったことです。もっとも疑問が大きいのは「ふんわりアクセル」です。これほど疑問な運転方式はありません。スタート直後に20km/hまで5秒かけてゆっくりと発進加速しましよう! というものです。

 それ単独で見れば、確かに効果はあることでしょう。しかし後ろにクルマが居たら、あるいはその後ろにさらにクルマが居たら、それは大きな疑問符が付きます。遅くスタートするということは、その分だけ道路の交通容量を小さくすることになり、結果的には渋滞を引き起こす原因になります。

 また次の信号まで10台通過できるはずが、9台しか通過できないことになれば、当然10台目のクルマの燃費は悪化します。クルマは発進時がもっとも燃費が悪いからです。

 ふんわりアクセルで稼ぐことができる燃費は10%程度ですが、信号で余計に停止させられれば、たとえアイドリングストップさせていたとしても、その局面での燃費は300%から500%に膨らむことになります。つまり、ふんわりアクセルとか、eスタートとかいう運転方法は、自分さえ良ければいい、というものなのです。これではエコドライブではなく、エゴドライブです。

 本題はそのアイドリングストップでしたね。アイドリングストップは基本的には燃費に効きます。一定以上の停止時間がある場合、再始動に費やすエネルギーよりもアイドリングに使われるエネルギーが大きくなるので、当然燃費に効きます。

 問題は、その停止時間が何秒以上からなのか? ということです。1秒から、という非現実的なアピールもあるようですが、それなら早く永久機関を作ってもらいたいものです。どのみち停止したエンジンを始動させるにはクランクシャフトとカムシャフトを回してエンジンの回転数をモーターで上昇させ、さらに燃料を使ってとりあえずアイドリング回転までさらに上昇させることが必要です。そのためのエネルギーがアイドリング消費と同じになるというのは、かなり考えにくいことです。

直接的な燃料消費以外のエネルギー消費も考慮しなくてはならない

 さらに現実的にいえばトランスミッション、エアコン、パワステなどのユニットも、エンジン始動とともに影響を受けます。家庭用エアコンにしても30分以内のOFFなら、ONにしたままのほうが消費電力が少ないという情報もあります。

 エアコンもまた、起動時にエネルギーを多く必要とするのです。ナビなどもエンジンの停止・再始動で電源OFF・再起動となる場合もあります。ただしアイドリングストップ機構が装備されている場合には、そうした問題は少しずつ解決しています。

 バッテリーは充放電に強いタイプの高価な高性能バッテリーとなり、エアコンやナビの管理も行われます。スターターモーターもジェネレーターも、強化された高性能タイプが採用されます。だから、アイドリングストップ機構付きのモデルは高価になるわけです。

 過去に何度か実験したこともありますが、20秒がひとつの目安になると思います。右折レーンでの対向車の通過待ちなど、ほんの数秒では意味はないと思います。もっといえば、アイドリングストップからの再始動で、どうしても焦りやすくなり、アクセルを大きく踏んでしまう傾向が出てしまうとすれば、その逆効果はさらに大きくなります。また右折レーンからの発進でも、ふんわりアクセルを踏むのであれば、後続車への影響は大きく出やすくなることでしょう。

 高価になるというのは、結局多くのエネルギーを使用しているということです。費やされたエネルギーの量が価格になっているのですから、当然です。たとえばレアメタルが高価なのは、土の中に含まれている希少な量の物質を何度も精製しながら、何とか使えるような形にするのに膨大なエネルギーが使われているからなんです。そういう意味では、エコ技術によって上昇した価格を、低燃費による燃料費低減で補えないようであれば、それは結局エネルギーを過大に消費していると言っていいのかもしれません。