尾を引く「プロレス総選挙」問題、納得いかぬ昭和者が再集計したランキングはこれだ

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『現役・OBレスラー200人&ファン1万人がガチで投票! プロレス総選挙』(テレビ朝日系)が、業界内で尾を引いている。3月に放送された特番だが、いまだファンの間では喧々諤々。「なぜ、あのレスラーが入ってないんだ!」「このレスラーより、あのレスラーの方が上位だなんて納得いかない!」と、ポジティブな意見より不満を口にする人が多い印象である。

つくづく、プロレスファンとは面倒くさい人種だ。特に、昭和者。こだわりが多いゆえ、自分に納得のいかない結果を前にすると「わかってない」と口を挟みたくなってしまう。
筆者は嗜好に関して言えば完全に昭和寄りであるが、同族嫌悪からか、プロレス者がこういう時に発する独りよがりなアジテーションがあまり好きになれない。新日本プロレスがターゲット層から“昭和”を外した戦略は、現在の隆盛を取り戻すに至った要因の一つに挙げられる。外された側が現在進行系のトピックに注文を付ける構図は、見ていて悲しいものがある。

ならば、どうだろうか? 昭和者が昭和者だけの場所をつくり、ピュアに昭和者の声のみで集計されたランキングを作ってしまうのは。

“週刊実話版”のランキングでも、当たり前のように猪木が1位に輝く


「週刊実話」(5月11・18日合併号)が、同誌読者層のみ対象のアンケート結果で導き出されたランキングを発表している。


題して「『週刊実話』読者1000人アンケート 古今東西 好きなレスラー100」! では、同ランキングの上位30名をここに列挙してみよう。

1位.アントニオ猪木
2位.タイガーマスク(初代)
3位.スタン・ハンセン
4位.力道山
5位.ジャイアント馬場
6位.前田日明
7位.アブドーラ・ザ・ブッチャー
8位.天龍源一郎
9位.長州力
10位.テリー・ファンク
11位.ジャンボ鶴田
12位.ブルーザー・ブロディ
13位.タイガー・ジェット・シン
14位.ハルク・ホーガン
15位.アンドレ・ザ・ジャイアント
16位.三沢光晴
17位.小橋建太
18位.橋本真也
19位.ザ・デストロイヤー
20位.蝶野正洋
21位.武藤敬司
22位.ロード・ウォリアーズ
23位.藤波辰爾
24位.フリッツ・フォン・エリック
25位.ミル・マスカラス
26位.大仁田厚
27位.フレッド・ブラッシー
28位.カール・ゴッチ
29位.ダイナマイト・キッド
30位.小川直也

たしかに、テレ朝特番で発表されたものよりこちらのランキングの方が個人的にもスッキリする。それにしても、両方のランキングで1位を獲得しているアントニオ猪木はさすがだ。

昭和者によるランキングでは、ついに藤波もランクイン


“週刊実話版”と“テレ朝版”のランキング上位者を見比べ、最も違いを感じるのは6位・前田日明のランクインである。


個人的に大好きなプロレスラーだが、“テレ朝版”ランキングに入らないことは放送前から予想できた。彼が放つ“前田言語”と現代ファンの関係性は、あまりに縁遠い。あのランキング結果を見て「なぜ、前田が入っていない!」と激昂する声がSNSでも散見されたが、「無茶言うな」が筆者の正直な感想である。

しかし、昭和者の作るランキングとなれば話は別。週刊実話は、投票者によるこんな声を紹介している。
「ドン・中矢・ニールセンとの異種格闘技戦は、私にとっての生涯ベストバウト。メインの猪木vsレオン・スピンクスがグダグダに終わったのと比べ、緊張感あふれる闘いぶりで完全勝利し、前田時代の到来を確信しました」(49歳・男)

もう一人、“週刊実話版”には注目のレスラーがランクインしている。それは、23位の藤波辰爾。


彼は、“テレ朝版”ランキングにおいて選出さえされていないのだ。この結果について、藤波本人は「中途半端な順位になるより、かえって外された方が良かった」とコメントしているが、昭和ファンは納得できない。「週刊実話」読者からは、以下のような熱き声が寄せられた。
「藤波がいたから大量離脱後も新日は存続できた。長州や前田らに目がいきがちですが、藤波こそが真の功労者ですよ」(53歳・男)
たしかに、全盛期の活躍が今に伝わりづらいレスラーではある。しかし、昭和者は彼の功績を伝えておかずにはいられない。付け加えると、藤波には“元祖イケメンレスラー”という側面もある。

そして、個人的に嬉しかったのは29位にランクインしたダイナマイト・キッドの上位選出だ。いかにも、昭和ならではの薫りが漂ってくる人選。


「クールな表情のまま激しく攻め続ける、そんなドSぶりが素敵」(46歳・女)
「鍛え抜かれた肉体から繰り出す鋭い攻撃はもとより、相手の技に対する受け身までもがハードでスリリングだった」(50歳・男)
キッドのことを嫌うプロレスファンは、今まで本当に一度も見たことがない。

面倒くささゆえに続いていく“「プロレス総選挙」問題”


プロレスファンは面倒くさい。今回のランキングに注文をつけたがるファンも、きっと存在するだろう。当然だ。ファンが思う“最高のプロレスラー”は、人それぞれなのだから。そして、他人の感性に「わかってない」とダメ出し気取りで干渉するのはお門違いである。

例えば、リアルタイムで並走し、最も感銘を与えてくれた選手を思い浮かべると、私は“偉大なプロレスラー”の1位に桜庭和志を選出するような気がする。


この人選に「わかってない!」という声がプロレスファンから上がってくることは、容易に想像がつく。一方で、もしかしたら同意してくれるファンもいるだろう。

そう考えると、エンドレス。プロレス村内での“「プロレス総選挙」問題”は、まだまだ続いていきそうな予感がする。
(寺西ジャジューカ)