湘南ボーイズ「日本一の頂きをもう一度」

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神奈川県中学野球特集の第4回は、湘南ボーイズを紹介!

 ボーイズリーグの東の雄として全国に名を轟かせている名門・湘南ボーイズ。東海大相模高(神奈川)で日本一となり中日にドラフト1位で入団した小笠原 慎之介投手や東海大甲府高(山梨)で高校通算71本塁打を放ち、やはり中日にドラフト1位で指名された高橋 周平選手など多くのプロ野球選手をOBに持ち、昨年は中学年代の硬式野球のクラブチーム日本一を争うジャイアンツカップで4年ぶり2度目の全国制覇を果たすなど、めざましい結果を残している。

「今」を頑張る選手に

選手に指導する佐藤 全志コーチ(湘南ボーイズ)

 この湘南ボーイズだが、元々は野球も教える学習塾としてスタートしたこともあり現在も文武両道を掲げ、週2回はコーチが講師役となり選手たちが勉強するための時間も設けられている。スケジュールを見てみると、練習は週6日で1日休み。新3年生を例にとると、月曜は塾と併設されている練習スペースを使ってバッティングなど(マシン2台、トスバッティング6ヶ所、ブルペン4ヶ所)、火曜は休み、水曜はグラウンドで総合練習、木曜は塾とバッティング練習、金曜は総合練習。そして週末は試合といった日程になっている。

 そして、練習内容についてだが、佐藤 全志コーチは「基礎的なことを何度も何度も反復してやらせています。その代わり、キャッチボールだったらボールをしっかり掴む。ノックだったら打球の正面に入ってしっかりとステップして投げる。というように、一つひとつの動きをしっかりとやらせ、量を多くこなすようにさせています」

 バッティングでは積極的に振ることを推奨。「選手には『バットが届くところは振っていけ』と、言っています。きわどいコースを見極めようとしてバッティングが小さくなってしまうよりは、どんどん振っていく方が技術も上がって打てるようになると思います」。実際に指導を受けている小泉 和也主将は「ストライクゾーンを広めにとったことで、自分がヒットを打てるコースの範囲も最大限まで広がっていると思います」と話し、西谷 球哉選手は「一球目から振っていこうと意識するようになり、積極的な気持ちで打席に入るようになりました」と、メリットを教えてくれた。

 また、クラブとして野球を指導する上で大切にしていることは「今」だという。「中学年代ですから、後々につながれば良いという考え方もあると思いますが、湘南ボーイズでは『今』がないと将来もない。だから、『今』勝たないといけないと考えています。なぜなら、この年代は敗戦から学ぶことよりも勝利から学ぶことの方が多いですから。だから、勝利を目指して練習に取り組み、『今』頑張る力を選手たちに付けさせたいと思って、指導にあたっています」(佐藤コーチ)。つまり地道な努力と、その努力に見合った成功体験が、その後の成長も促すということなのだろう。

 また、湘南ボーイズの強さを支えているのはチームの層の厚さも挙げられるだろう。毎年、1学年につき50名ほどが入団しており、「湘南地域の子供たちは一生懸命に頑張る気質なので、チーム内で選手たちが勝手に競争していくんです」と、佐藤コーチ。そして、湘南ボーイズにはBチームにあたる湘南茅ヶ崎ボーイズもあるが、「例年は新チームが結成される秋にチーム分けをし、秋季大会を経て、翌シーズンの春に決めなおしたら卒団まで同じチームでプレーするのですが、今年は大会ごとに選手を入れ替えて、さらに競争意識を高めさせる予定です」(佐藤コーチ)

このチームで日本一になるノックの様子(湘南ボーイズ)

 一方で、もちろん礼儀も大切にしている。「グラウンドの中では常に全力疾走。また、今春から入団する新1年生が既に練習に参加しているのですが、最初にやらせるのは挨拶と返事の練習。これは毎年の恒例になっています」(佐藤コーチ)

 冬のトレーニングは走ることが多いという湘南ボーイズ。「長距離とダッシュを組みわせて走らせています。また、トレーナーがメニューを組んで、腕立て伏せや腹筋、背筋、体幹トレーニングなどをやっていますが回数はそれほど多くなくて、腕立て伏せなら10回×3セットくらい。ただ、ここでも一回一回をきっちりとやるように徹底させています」(佐藤コーチ)。このトレーナーだが、学習塾のすぐとなりにある整骨院のスタッフが務めており、試合にも帯同。もしもケガがあった時などは素早い処置や判断ができる。さらに「選手たちも近くにあって通いやすいと思うので、ケガのリハビリや治療という面で、たいへん役に立っている」(佐藤コーチ)という。

 このように環境面も充実している湘南ボーイズだが、強豪であり続けている一番の理由は田代 栄次監督の存在だろう。

「選手のことを良く考えて、良く見ている監督で、ちょっとした変化にもすぐに気が付くんです。ボールの投げ方が変わった選手がいたら、それは疲れが溜まっているからなのか、別の理由なのかを探って適切に処置していく。試合でも、投手交代やタイムをかけるタイミングは抜群ですね。そして、今でも覚えているのは、小笠原(中日)の代と今の3年生が新1年生として入団してきた時、練習を見始めて2ヶ月ほどで『このチームで日本一になる』と言っていたんです。実際、その2チームはジャイアンツカップで全国優勝しましたから、選手を見る目はすごいですね」と、佐藤コーチも目を見張っている。

DeNAベイスターズカップで目指すは二連覇

左から 小泉 和也選手、西谷 球哉選手(湘南ボーイズ)

 湘南ボーイズの現チームについて「昨シーズンから試合を経験しているバッテリーが軸」と話す佐藤コーチ。「右腕の板垣 翔大は真っすぐが魅力。120km/h台後半から130km/hほどのスピードがあり、空振りが取れるピッチャーです。稲野辺 元太も右投げで、こちらは威力のある真っ直ぐとカウントが取れるスライダーのコンビネーションが身上。キャッチャーの西谷は元ベイスターズジュニアで、小学生時代から板垣とバッテリーを組んでいます。肩がそこそこ強くて、フットワークが良く足も速い。打順は1番を任せているのでリードオフマンとしても期待しています」

 また、小泉主将については「藤沢出身の子供らしく素朴で真面目な選手。気合いでプレーするタイプなのでもっともっとキャプテンシーを出して頑張ってほしい」と、評した。

 その小泉主将は「試合で劣勢になって沈んでいる時ほど、人一倍、声を出して、チームを盛り上げるようにしています」と話すように、本人もキャプテンとしての意識を持って取り組んでいるようだ。また、野球の技術面では「バッティングでは結果がほしくてフォームが小さくなりトップの位置が下がっていたので、自分本来のフォームを取り戻してしっかりと打っていきたい。守備では外野を守っているのですが、守備位置を大胆に変えながら積極的な守備をしたいです」と目標を掲げた。

 西谷選手は「バッティングで打つポイントが後ろになっているので、もっと前でコンタクトして引っ張り、強い打球を打ちたいです。あと、1番なので、先頭打者の自分が強いスイングをして、相手投手にプレッシャーをかけていければと思っています。キャッチャーとしては良いリードをしてピッチャーを引っ張っていきたいです」と抱負を口にした。

 昨年のDeNAベイスターズカップで優勝し、ディフェンディングチャンピオンとして大会を迎える湘南ボーイズ。「神奈川のナンバーワンを決める大会ですし、常にタイトルを狙っているチームなので、新しい選手を試しながら一戦必勝で戦っていきたい」と、佐藤コーチ。小泉主将も「一戦一戦、大切に戦って二連覇したい」と意欲を燃やしている。また、西谷選手は「今年もジャイアンツカップに出場して、チーム全員でカップを返還しに行きたい」とも話しており、その試金石となるDeNAベイスターズカップにも注目だ。

(取材・文=大平 明)

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