ベルリンの中心、ブランデンブルク門や各国大使館などが集まる一角に、周囲とはひと際異なる雰囲気を放っている場所があります。

それが、2005年から一般公開されている「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑(Denkmal für die ermordeten Juden Europas)」、通称「ホロコースト記念碑」です。

ナチスドイツによって殺害された何百万人ものユダヤ人への鎮魂のために建てられたこの記念碑ですが、完成するまでには長い苦難が待ち受けていました。

1988年に記念碑建設の計画が持ち上がった際に問われたのは、この記念碑が誰に対してのものであるのかという問題でした。ホロコーストで殺害されたのはユダヤ人ばかりではなく、戦争捕虜や同性愛者なども含まれていたため、彼らも対象に含めるべきという声があがったのです。

結局1999年に連邦議会で対象をユダヤ人のみに限定する事が決まり、2003年からは工事が始まります。

しかしここでも問題が……

建設に携わっていたある会社が、強制収容所で使用されていた毒ガスを製造していた会社の姉妹会社であることが明るみにでたのです。

その影響で建設は一時中断されるものの、また再開されて2005年に記念碑は完成します。

この年はアウシュヴィッツ強制収容所の解放から60年目の年、またドイツ、イスラエル間の国交樹立から40年目という節目の年でもありました。

約2ヘクタールの土地に3000枚ものコンクリート石碑が並べており、近くで見てみるとそれらの石碑がこちらに迫って来るかのような錯覚に襲われます。

石碑の高さは低い物から高い物まで様々なものがあり、地面も所どころ波打っています。中に入っていくと、自分の背よりも高い石碑に周囲を囲まれ、周りの景色も見えず周囲の音も聞こえません。

観光客で賑わうベルリンの中心にいながら、まるでここだけ世界が切り離されたかのような厳粛な雰囲気が漂っているのです。

これらの石碑が何を意味しているのか、それを示す表示はここにはありません。記念碑を設計したペーター・アイゼンマンは、この石碑で何を表そうとしたのでしょうか?答えは私達1人ひとりが自分で探し出す必要があるのでしょう。

ベルリンの中心にある厳粛な空間。悲しい歴史のなかで命を落としたユダヤ人犠牲者の声なき声に耳を傾けてみてください。

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虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑
24時間アクセス可
入場料: 無料