『骨盤を立てる感覚』とは一体どんな感覚なの?身に付けるためのトレーニング法は?

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 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 いよいよ春のセンバツ大会に出場する高校が決定しましたね。出場が決まった選手の皆さん、おめでとうございます!これからセンバツに向けてさらに体力面、技術面での向上をはかり、またケガをしないように過ごしてくださいね。さて選手の皆さんは普段からコンディショニングの一つとしてストレッチを行っていると思いますが、ときどき「骨盤(こつばん)を立てよう」と指摘されることがあると思います。今回はこの「骨盤を立てる」ことの意味やメリットなどについてお話をしたいと思います。

「骨盤を立てる」とはどのような状態なの?

骨盤の位置(前傾・ニュートラル・後傾)の位置をイメージしてみよう

「骨盤を立てる」という言葉はスポーツ現場でもよく使われるフレーズですが、実際に「骨盤が立つ?」と疑問に思う選手がいるかもしれません。普段使われている「骨盤を立てる」という意味は、おそらく骨盤が正しい位置にある(=ニュートラルポジションともいいます)ということを意味していると思います。骨盤のニュートラルポジションとは、

1)正面から見て、腰に両手を当て(骨盤の一番出っ張った部分)、左右の高さが水平であること。

2)横から見て、前後の傾きが適切であること。前に偏っているのを前傾(ぜんけい)、後ろに偏っているのを後傾(こうけい)と呼びます。一般的にはやや前傾した状態がニュートラルポジションです。

3)真上から見て(実際に見るのは難しいですがイメージしてみましょう)、骨盤が左右にねじれていないこと。

 この3方向からみて骨盤の位置が正しいかどうかを確認しましょう。

骨盤の前傾と後傾

 横から見て骨盤が前に偏りすぎていないか、後ろに偏っていないかは、壁を使ってセルフチェックを行うことができます。壁際にまっすぐ立ち、頭部、お尻、かかとの3点がつくように背中をつけ、その姿勢を保持した状態でみられる腰と壁とのすき間を目安にします。握りこぶし1個分以上のすき間がある場合は骨盤が前傾、逆に手のひらの幅よりもすき間が少ない場合は骨盤が後傾傾向と考えられます。

壁を使って骨盤の位置をセルフチェック

《骨盤の前傾》妊婦さんを想像するとわかりやすいと思いますが、お腹が前方につきだしたことによって重心が身体の前方へ移動し、この状態では前方倒れてしまうため、倒れないように背筋群を使ってバランスをとった状態です。背筋群が緊張し、腰がいわゆる「反り腰」となってしまい、走ったり跳んだりといった動作を繰り返すたびに腰椎により大きな負担がかかって腰痛の原因になりやすいといわれています。腹筋や太ももの後面(ハムストリングス)の筋力低下とともに、太ももの前面(大腿四頭筋、腸腰筋など)や背筋群は筋肉がかたくなりやすい傾向にあります。

《骨盤の後傾》骨盤が後ろに傾くといわゆる「お尻が落ちてしまった状態」になります。椅子にふんぞり返って座っている状態を想像してもらうとわかりやすいと思います。お尻が落ちた状態では姿勢を保持するために上半身が丸まってしまい、頭が前に突き出した状態となって肩こりや首のこりなどが起こりやすくなります。骨盤が後傾すると姿勢が崩れるだけではなく、腰の回旋動作がうまく出来なかったり、股関節の動きを制限したりして、守備、走塁、バッティングなど野球のプレーそのものにも影響を及ぼします。

壁や椅子を使って骨盤の位置を意識しよう

左右の坐骨の位置を確認しよう

「骨盤を立てる」感覚を身につけるためには壁や椅子の背もたれなどをうまく利用します。骨盤を立てる時は壁にそって座り、身体を前に倒します。左右の坐骨(図162_3)がしっかりと床や椅子についた状態を保持し、そこから背骨を下から上へと順番に積み上げていくイメージで身体を起こします。壁や背もたれにピッタリとくっついた状態は背中が丸まってお尻が落ちてしまうこともなく、反り腰になってしまうことも避けられますのでニュートラルポジションをイメージしやすいと思います。この状態を保ったまま無理のない程度に開脚し、足首を親指側、小指側と前後に軽く揺らすようにすると股関節周辺部の筋肉がほぐれやすくなります。

骨盤の位置を意識したお尻歩き

長座の姿勢でお尻歩きにチャレンジしてみよう

 長座の姿勢をとり「骨盤を立てた」状態を保持します。そこからお尻(座骨)を使って前に進む「お尻歩き」を行ってみましょう。やりやすい距離は20m〜30m程度で、腕で反動をつけたり、かかとで地面をとらえて前進するのではなく、左右の座骨が地面にしっかりついていることを確認しながら前に進むようにしましょう(図162_4)。骨盤が正しい位置にあると楽に身体を移動させることができますが、特にお尻が落ちた状態(骨盤の後傾)ではなかなか前に進みません。前方向だけではなく後ろ方向に向けてもお尻歩きをするとよいでしょう。雨天時などリレー形式などで行っても面白いと思います。

【骨盤を立てる感覚を身につける】●骨盤が左右、前後、上下の3方向からみて正しい位置にあることをニュートラル・ポジションと呼ぶ●「骨盤を立てる」とは骨盤がニュートラル・ポジションにあること●壁を使うと骨盤の位置を簡単にチェックすることができる●壁を利用して正しい骨盤の位置を理解しよう●長座の姿勢で行う「お尻歩き」は骨盤の位置を意識して行う

(文=西村 典子)

次回コラム公開は2月15日を予定しております。

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