KANAEアソシエイツ 阪部 哲也 代表取締役

 結果を伴う高い専門性が求められる金融人材市場では、確かなスキルを持つ人は時代を問わず引く手数多です。

 人の入れ替わりも激しく、時に解雇も伴う厳しい世界ですが、逆にチャンスも多い業界です。そこにも時代の波を受け、これまでとは違う変化が訪れています。その要因として、「FINTECH」「マイナス金利」に着目しています。

 まずFINTECH。テクノロジーが事務的職務をIT化するのは時代の必然ですが、金融機関の重要な機能である決済や運用も一部AIに置き換えられようとしています。

 他方、世界のITベンチャーが、審査や融資、決済等これまで銀行が担ってきた領域に参入。迎え撃つ銀行は生き残りをかけ、新たなビジネスモデルを生み出すことに必死です。

 みずほ銀行がソフトバンクと共同で立ち上げたローンの新会社は記憶に新しい。FINTECHビジネスの成功には関連する最先端の知見が欠かせませんが、そういう人は「銀行にいない(メガバンク人事部)」。

 そのため、昨年は相当数の人材がネット関連企業やITコンサル、ゲーム会社等から銀行へ「大移動」しました。今年はさらに増えるでしょう。全く異なる文化がどう融合して何を生み出していくのか、楽しみです。

 次にマイナス金利。銀行は融資業務で利益を生み出すことが難しくなっています。一方、低金利は投資家にはチャンスです。

 結果、M&Aやプロジェクトファイナンス等の投資銀行業務が急拡大し、関連する人材ニーズも高まりを見せます。運用面では低金利下で勝つべくデリバティブ商品の運用ニーズ等も拡大し、リスク管理や審査の専門家の採用意欲もますます高い。

 みずほFGの佐藤社長は「先進技術にあわせ企業文化、システムを変革する」と宣言された。特に異業界に求めざるを得ないIT人材は、保守的な文化の変革はもちろん、転勤・異動なし、年功的要素を排した報酬等、多様な人材を受け入れられる人事制度をいち早く取り入れた企業ほど採用に成功しています。金融人材市場は柔軟性が採用競争力を決める一年になりそうです。