どんなに愛着があっても、ひとつのクラブにしがみつく必要はないと語るセルジオ越後氏

写真拡大

昨年末から噂されていた中村俊輔(38歳)の磐田移籍が決まった。

レッジーナ、セルティック、エスパニョールと欧州で活躍した時期もあったけど、Jリーグでは1997年のプロデビュー以来、計13シーズンにわたって横浜Fマひと筋でプレーしてきた。その彼が来季、初めてほかのJクラブのユニフォームを着ることになる。

いつも言っていることだけど、プロならば、自分をより高く評価してくれるクラブでプレーすべき。きれいごとではなく、一番大事なのはお金だ。どんなに愛着があっても、ひとつのクラブにしがみつく必要はない。

でも、今回の俊輔の場合は、昨季から1千万円減の年俸1億2千万円を提示した横浜Fマに対し、磐田は8千万円。条件面では大きな差がある。しかも、昨季は故障で戦列を離れることが多かったとはいえ、依然として主力であり、サポーターからも愛される象徴的存在。普通に考えれば横浜Fマを離れる理由は何もない。

それにもかかわらず新天地を求めたのだから、サッカーに対して純粋な彼にとってよほど耐え難いチーム状況だったということだろう。横浜Fマは2014年にマンチェスター・シティ(イングランド)を傘下に収めるシティ・フットボール・グループ(CFG)と資本提携。以降、フロントにCFGの人間が入り、チームを取り巻く環境は大きく変わっていったという。

そして今オフ、CFGの起用した強化担当者が急激な若返りを図り、多くのベテランを大幅減俸もしくは放出。俊輔と同じ38歳で、チームの看板である中澤が年俸1億2500万円から50%ダウンを提示されたことも話題になった。

世代交代というのは、予算面や継続的なチームづくりを考える上で、どのクラブも避けられないこと。決して責められることではない。ただ、横浜Fマの場合は、もっと前から少しずつ入れ替えることもできたはず。やり方があまりにビジネス的。多くの日本代表選手を輩出してきた名門クラブなのに、チームづくりを簡単に考えすぎているような気がしてならない。

名門のゴタゴタといえば、昨季の名古屋が記憶に新しいけど、今の横浜Fマのメンバーを見れば、さすがにJ2降格はないと思う。でも、チームには大きな宿題が残った。サポーターが不信感を募らせているなか来季の成績が悪ければ、やっぱりクラブのやり方はおかしかったとなる。果たして、今の横浜Fマのフロントはそうした批判に耐える覚悟を持っているのかな。

磐田に移籍した俊輔にもプレッシャーは当然かかるけど、きっと本人はそれを新たなモチベーションにすることで、乗り越えようとしているのだろう。年齢を考えれば体力面は年々厳しくなる。昨季は故障にも悩まされた。でも、技術は衰えない。得意のセットプレーはもちろん、流れのなかでもボールを持てば取られないし、前を向いたら何をするかわからない。今もって相手に大きな脅威を与えられる選手だ。ケガさえ気をつければ、まだまだできる。

磐田は横浜Fマよりもチーム力は落ちるかもしれないけど、プレーだけでなく、その存在感やプレーへの姿勢でもチームに大きな影響を与えられるはず。磐田とは2年契約で、俊輔自身も40歳を現役生活の区切りに考えているという報道もあるようだけど、40歳といわずに、“第二のカズ”を目指して頑張ってほしいね。

(構成/渡辺達也)