日本一安い初乗り運賃は90円 「0円」の路線も?
鉄道を利用するときに支払う「運賃」。会社や路線によって異なりますが、現在、日本でもっとも安い初乗り運賃は北大阪急行です。しかし、なかには「運賃0円」の路線もあります。
かつては「万博輸送」を担う
鉄道を利用するときに支払う運賃は、会社や路線によって異なります。国土交通省鉄道局監修『数字でみる鉄道2016』によると、全国の普通鉄道のうち初乗り運賃が最も安い路線は、江坂駅(大阪府吹田市)と千里中央駅(同・豊中市)を結ぶ北大阪急行南北線です。
北大阪急行の8000形電車「ポールスター(POLESTAR)」。意味は「北極星」(2015年12月、恵 知仁撮影)。
その値段は大人90円。この路線は実質、大阪市営地下鉄の御堂筋線を延長した形で、運行も一体的。千里ニュータウン方面と大阪市中心部方面とを結ぶ動脈として機能しています。1970(昭和45)年の開業当初は、「大阪万博」の輸送も担っていました。ちなみに、直通先である大阪市営地下鉄の初乗り運賃は180円です。
しかし、対象を鉄道事業法で許可を受けた鋼索鉄道(ケーブルカー)まで広げると、「0円」というケースもあります。
「運賃」は0円、ただし…?
京都市左京区にある鞍馬寺の山門駅と多宝塔駅のあいだ0.2kmを結ぶ鞍馬山鋼索鉄道(鞍馬山ケーブル)は、「運賃」が0円です。ただし乗る際は、「寄進」(寄付)として1口200円(小学生以下100円)を納めます。その「お礼」として、ケーブルカーの片道を利用できるというわけです。
このケーブルカーを運行しているのは「宗教法人鞍馬寺」。全国で唯一、宗教法人が運行している「鉄道」であり、運転するのも作務衣を着た寺の職員です。ケーブルカーは1両が90mの高低差を上下するのみで、途中での車両行き違いはありません。
山門駅と多宝塔駅を結ぶ鞍馬山鋼索鉄道。鞍馬寺は牛若丸(源 義経)が修行した場所(2012年4月、恵 知仁撮影)。
鞍馬寺の広報担当者によると、鞍馬山鋼索鉄道はそもそも「足腰の弱い人やお年寄りでも楽に参拝できるよう敷設された」といいます。開通は1957(昭和32)年で、ケーブルカーを造るときは多額の寄付金があったそうです。
このような経緯や背景から、ケーブルカーは収益を上げるためのものではなく、「あくまでも、参拝の利便を図るためのもの」(鞍馬寺の広報担当者)とのこと。鞍馬寺は、歩いて参拝するのが本来の形であり、ケーブルカー利用ではたどれない本殿金堂までの参道には、由岐神社などの見どころもあることなどから、元気な人には自分の足で山を歩くことをすすめています。
【写真】鞍馬山ケーブル乗車時に渡される「花びら」
鞍馬山ケーブルで寄進した人には、参拝記念に花びら形の“乗車票”が渡される。