東京23区の統計データから様々な素顔を紐解くこの連載、今回は就業率から23区の中で最も働き蜂が多い区を算出してみる。

先日、平均年収の高い区で最後に簡単にご紹介したのは2005年の労働力率であったが、公表データを探っていると、2010年の国勢調査に基づく就業者数が出てきたので今回はそちらを使って、各区の就業率をみてみよう。果たして働き蜂の多い区はどこだ?!



今回は、15歳〜64歳の生産人口に占める就業者の割合で就業率を見てみる。
就業率の算出の仕方は、■生産年齢人口(15〜64歳)÷夜間人口(常住人口)×100 。

これを各区ごとに見てみると以下のようになった。
それではまず上位4区と下位4区を隠して、5位〜19位まで見てみよう。



23区の就業率(15歳〜65歳 2010年)
港区は就業者が増えた?下町はやはり上位!

以上の結果となった。15歳〜65歳の夜間人口(常住人口)6,227,427人に対して、就業者数は3,659,644人となっており、23区の平均就業率は58.8%となっていた。

上位から見ていくと、5位:墨田区(63.23%) 、6位:大田区(62.3%)、7位:葛飾区(61.2%)・・・と下町が占めている。15位の港区あたりから、山の手エリアが続く形だ。
2005年の労働力率でもいずれも上位を占めていた下町。昭和の雰囲気を残す昔ながらの店舗が多いこのエリアでは、店を継ぐため、あるいは都心へのベッドタウンとして選ばれるため、自然と就業率も高いのだろうか。

山の手エリアの低さを考察してみると、暇なお金持ちが多い・・・のではなく、「女性比率」の高さに着目すべきである。
目黒区や世田谷区などは、港区に次いで女性率の高い区である。女性だけの就業率に限って見てみると18位:世田谷区(50.3%)、19位:港区(49.8%)、20位:目黒区(49.8%)と、どうしてもまだ日本では女性の就業率が低いのが原因のように思える。


23区の就業率ランキング(15歳〜65歳 2010年)


1位:???(67.6%)
2位:???(66.4%)
3位:???(63.3%)
4位:???(63.24%)
5位:墨田区(63.23%)

6位:大田区(62.3%)
7位:葛飾区(61.2%)
8位:荒川区(60.7%)
9位:台東区(59.7%)
10位:北区(59.6%)

11位:江戸川区(59.43%)
12位:足立区(59.35%)
13位:練馬区(58.8%)
14位:板橋区(58.2%)
15位:港区(57.4%)

16位:世田谷区(57.2%)
17位:文京区(57.0%)
18位:中野区(56.9%)
19位:目黒区(56.3%)
20位:???(54.1%)

21位:???(53.6%)
22位:???(52.4%)
23位:???(50.4%)

それでは次ページでトップ4とワースト4を発表しよう。
ちなみにあと残っているのは豊島区、江東区、中央区、新宿区、渋谷区、杉並区 、千代田区、品川区の8区だ。
この結果から是非とも推測して欲しい。


トップは?ワーストは?まさかのあの区!



就業者が多い区はどこだ?!

まずは就業者が多い区トップ4から見て行こう。

4位:千代田区(63.24%)
千代田区と言えば、何度も触れてきたが皇居や国会議事堂、各省庁など国の中枢機関が集う区。さらに平均年収の高い区で港区に次ぐ2位(784万円)であったことから、多忙すぎる公務員や丸の内キャリア組が多く住んでいると推測できる。
ちなみに千代田区は、65歳以上の就業率が40.1%と23区中トップでもあり、定年など関係ない経営者クラスの人も多いと推測される。

3位:品川区(63.3%)
品川区は、北部に大崎、五反田、目黒とビジネスエリアが集中していながら、中・南部は住宅エリアになっている。新橋や有楽町、丸の内と都心部には京浜東北線や山手線で、新宿や渋谷には湘南新宿ラインも使えるので、どこに通勤するにも便利。
サラリーマンからベッドタウンとして人気なのだろう。

2位:江東区(66.4%)
2位は江東区。
ここを紐解く鍵は、1位の区にあると考え、1位の区と一緒に考えてみよう。


1位:中央区(67.6%)

就業率トップは中央区で67.6%。男性の就業率は江東区と僅差の2位(74.8%)で、女性の就業率は23区中唯一60%を超えた1位(60.7%)。
江東区と中央区はお隣どうしだが、この2区が上位2区を占める結果となった。

中央区は、4位の千代田区と似ている点が多い。人口がそもそも少なく、日本橋や銀座には一流企業が集まる一大ビジネスエリアを有する点だ。

違いがあるのは、住宅エリアの差かもしれない。千代田区は皇居が区の面接の大半を占めているのはご存知の通り、対して中央区は、もちろん銀座や日本橋には居住用の建物が少ないが、八丁堀や新富町周辺、人形町などにはマンションが数多く立ち並ぶ。

中央区は、土着の人以外は、ある程度経済的に余裕をもち「仕事に便利だから」という理由で済む人が多数。単に暮らすだけならより自然豊かで閑静な住宅エリアは他区にあるため、この区に暮らす時点で、生活の利便性を徹底的に重視する社会的にアクティブな人が集うのかもしれない。

ただし、住所に「中央区」がつくだけで、家賃はバカ高くなるのはかなり難点。
2位の江東区は、よりコスパを求めたアクティブな人が、豊洲、門前仲町、清澄、新大橋などに居住していると推測される。この辺りの駅で、朝晩の若いサラリーマンがごった返す通勤光景はおなじみだ。



残るはワースト4。一体どの区が!?


一体どの区が就業率ワーストなの?



逆に就業者が低い区はどこだ?!

それでは、就業者が低い区ワースト4も見てみよう。

20位:豊島区(54.1%)
20位は豊島区。豊島区と言えば「池袋」、そして池袋と言えば少し前のカラーギャングのようなイメージを持つ人も多いかもしれないが、最近ではニコニコ本社の移転やWACCA池袋などの新規商業施設オープンなど、街の雰囲気は劇的に変わりつつある。
おそらく、豊島区に住む人の就業率にも今後大きく上昇の変化が見えることだろう。

21位:渋谷区(53.6%)
池袋についでは、「渋谷」!21位は渋谷区。
渋谷区と言えば、原宿・渋谷を中心に若者の街として認識されているが、若者だからこそ高い就業率であって欲しい!がんばれ渋谷区!
しかし、この街も単なる若者の街ではなく、2012年「渋谷ヒカリエ」の開業を皮切りにクリエイティブな企業が集うビジネス街としての側面を持つようになったことと、「奥渋谷」に代表されるように大人が楽しめる街に変化してきている。
渋谷区に住む人の就業率にも、今後ポジティブな変化があることだろう。

22位:杉並区(52.4%)
どうした杉並区!
杉並区と言えば全国に約200社あるアニメ制作会社の内、約70が集まる「アニメのまち杉並」として有名であり、「阿波踊り」でも有名な高円寺は、アーティストが集う音楽の街として知られている。
アーティスティックな度合を強めると、就業率が下がってしまうとでも言うのか?

高井戸、高円寺、阿佐ヶ谷、井草、永福、久我山・・・ 素晴らしい住宅地を擁する杉並区だけに、あと一歩の就業率向上が望まれる!



23位:新宿区(50.4%)

そして堂々のワーストはぶっちぎりで新宿区であった。総合だけでなく、男性の就業率(54.5%)、女性の就業率(46.1%)共にワーストであった。

例えば男性だけの就業率で考えた場合、1位の中央区(67.6%)や 2位の江東区(66.4%)と比較すれば20%以上の開きが見られる。アジア最大のターミナルを抱え、都庁まで擁している新宿区。もう少し働きませんか!

というわけで、なぜ新宿区がワーストなのだろうか。
これを紐解くために、23区平均と新宿区の各年齢ごとの就業率を比較してみよう。

     23区平均/新宿区
15〜19歳:12.0%/11.0%
20〜24歳:47.7%/35.4%
25〜29歳:62.6%/50.5%
30〜34歳:63.7%/55.5%
35〜39歳:64.0%/55.7%
40〜44歳:66.0%/58.8%
45〜49歳:68.4%/59.8%
50〜54歳:69.8%/63.0%
55〜59歳:67.2%/61.7%
60〜64歳:58.0%/54.5%

ご覧のように、働き盛りである20代、30代、さらには40代までも全国平均を約10%も下回る結果であった。

歌舞伎町であまりに呑みすぎて・・・・というのは無いにしても、あのエネルギーで、「一番就業率が低い」と言われてもピンとこない人も多いはずだ。
実際には働いていても、正式に申告をしていないような職種の人も多いという点や、外国人の割合は人口の7.89%と23区中トップであり、やはりしっかりと数値が把握しきれない点も一因かもしれない。


23区の就業率ランキング(15歳〜65歳 2010年)


1位:中央区(67.6%)
2位:江東区(66.4%)
3位:品川区(63.3%)
4位:千代田区(63.24%)
5位:墨田区(63.23%)

6位:大田区(62.3%)
7位:葛飾区(61.2%)
8位:荒川区(60.7%)
9位:台東区(59.7%)
10位:北区(59.6%)

11位:江戸川区(59.43%)
12位:足立区(59.35%)
13位:練馬区(58.8%)
14位:板橋区(58.2%)
15位:港区(57.4%)

16位:世田谷区(57.2%)
17位:文京区(57.0%)
18位:中野区(56.9%)
19位:目黒区(56.3%)
20位:豊島区(54.1%)

21位:渋谷区(53.6%)
22位:杉並区(52.4%)
23位:新宿区(50.4%)


最後に、23区の就業率のランキングと、男女別にみた就業率のランキングをまとめてみました


■23区就業率ランキング

23区の就業率(15歳〜65歳 2010年)



23区の男性就業率(15歳〜65歳 2010年)



23区の女性就業率(15歳〜65歳 2010年)



いかがだったであろうか?

まさに東京の中心地である中央、千代田、そしてそのベッドタウンである江東区が上位。ついで下町エリアが続き、山の手の住宅街エリアは比較的下位。大きな繁華街を抱える豊島、渋谷、新宿は最下位と、はっきりとした特徴がみてとれた。

もちろん、今回見たのは2010年の国勢調査の結果を参照したもので、昨年行われた2015年の国勢調査の結果が詳細に解れば、また違った傾向が見られることであろう。