イギリス王立化学会が発表した「完璧な紅茶の淹れ方」によれば、ミネラルウォーターよりも酸素を多く含んだ水のほうが良く、ポットでお茶を蒸らす時間は3分、そしてミルクを入れたカップに紅茶を注ぐ、とのことです。意外と知っているようで知らない、美味しい「紅茶」の味わい方を、TOKYO FMの番組の中で専門家の方々に教えてもらいました。
(TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」5月14日放送より)


ほんとうに美味しい「紅茶」、飲んでますか?



◆「子どもの頃から紅茶が大好きでした」
〜歌手 平原綾香さん


私は紅茶が大好きで、歌う前には必ず紅茶にマヌカはちみつを入れて飲んでいるくらいです。マヌカはちみつは殺菌作用のあるハチミツで、薄めれば塗り薬にも使えるほどなんだとか。もちろん紅茶なのでお砂糖でもいいのですが、せっかくなので喉にいいハチミツと一緒に紅茶を楽しんでいます。

そういえば高校生の頃に『紅茶王子』というマンガがあって、アッサムとかセイロンなんて王子が出てきました。紅茶の茶葉をモチーフにしたファンタジー作品なんですが、実際に紅茶を美味しく飲むための豆知識なども盛り込まれつつお話が展開していくので、それで茶葉の種類や飲み方を覚えていった気がします。

私が一番好きな紅茶はアールグレイです。アールグレイはお店によって香りが微妙に違うので、お店の性格がわかります。香料の素材をどんなふうに吟味しているのか、その素材をどうやって入れるのか、そんな部分を感じられると「あ、ここの店はこういう香りなんだ」と楽しめるんです。

アールグレイの香りがお店によって違うのは「フレーバーティー」と呼ばれる香りを付けた紅茶だからです。その香りの素はベルガモットという柑橘類で、名前は1830年代に実在したイギリスのグレイ伯爵(アール・グレイ)に由来すると聞きました。ですから「アールグレイ」という茶葉があるわけではありません。

私が紅茶好きということで、ファンの方から地元のめずらしい茶葉を差し入れていただけるのは嬉しいですね。サクランボの香りがする紅茶だったり、サツマイモの香りがする紅茶だったり、日本全国に季節限定でいろんな香りの紅茶があります。

最近はツアーグッズでも「マスカットティー」を作りました。ニューアルバム『LOVE』の1曲目が玉置浩二さん作詞作曲の「マスカット」という曲なので、それにちなんでいます。かわいいオリジナルのマグカップにマスカットティーの茶葉のパックが入っているので、機会があったらぜひその香りを楽しんでください。

◆「イギリス人はずっと紅茶を飲んでいるかのよう」
〜紅茶研究家 磯淵猛さん


ほんの10〜20年前まで、イギリスでは起きてから寝るまで一日中、紅茶を飲んでいました。朝起きてベッドで飲む「ウェイクアップティー」に始まって、「ブレックファストティー」「ランチティー」「アフタヌーンティー」「ファイブオクロークティー」「ハイティー」、そして寝る前の「ナイトキャップ」等々、それぞれ名前が付いているほどです。

また、イギリスでは職場で「ティーレディ」と呼ばれる女性が紅茶を配っていました。この習慣を合理化で廃止したら、職場に会話がなかなか生まれずモチベーションが下がることがわかって、最近はまた復活しつつあります。「お茶をどうぞ」「ありがとう」なんてちょっとしたやり取りが、職場に会話を広げるきっかけになっていたんです。

イギリスで飲まれる紅茶は8割方がミルクティーです。これは水質が悪くて紅茶が黒っぽい色になってしまうのが一番の理由でしょう。蚤の市なんかは寒いので熱い紅茶が美味しく感じられるのですが、マグカップの紅茶にポーションミルクを入れて、チェダーチーズをかじりながら飲むと最高です。これ以上の組み合わせは、ほかにありません。

先日、イギリスで本屋に寄ったら、キッズコーナーにもままごと遊び用のお茶セットがあるのに驚きました。日本だと食事でもてなすのが一般的なので、子どものままごと遊びも「ご飯できたよー」なんて食事のシーン。それがイギリスではお茶なんです。紅茶を入れたポットひとつで各人に合わせた最高のおもてなしができるお母さんを「ティーマザー」と呼んだりもします。

イギリスの一流ホテルでアフタヌーンティーを注文しても、ホテルの人は紅茶のポットを置いていくだけでカップに注いではくれません。それはお客様の好みをホテルの人は知らないからです。そこで一番格好良いのは男性が紅茶をいれること。イギリスは紅茶の産地ではなく消費国。「僕が紅茶をいれようか?」というのは支払いを持つという意味でもありますから。

◆「ダージリンのファーストフラッシュの季節!」
〜LUPICIA 自由が丘本店 店長 山田雅子さん


紅茶はダージリン、アッサム、セイロンなどいろんな種類を聞く機会があると思いますが、すべてツバキ科の常緑樹「カメリア・シネンシス(和名:チャノキ)」の葉で作られています。もっと言えば、紅茶だけでなく緑茶も烏龍茶もすべて同じです。発酵の度合いによって緑茶になるか、烏龍茶になるか、紅茶になるかの違いが出てきます。

紅茶の世界三大銘茶といえば、インドのダージリン地方で摘まれた紅茶、セイロンのウバ、中国の祁門(きーむん)紅茶です。チャノキの葉なのは共通ですから、すべて地名で呼ばれています。ちょうど今は春摘みのダージリン紅茶がたくさん入荷しているところです。

春摘みのダージリンは日本人好みです。ちょっと緑茶のような水色で、味わいもすごくすっきりしていて「え、これ紅茶なの?」と驚かれると思います。続いて「紅茶のシャンパン」と呼ばれるのが夏摘みのダージリン。マスカテルフレーバーと呼ばれるマスカットのような芳醇な甘い香りを楽しめます。そして秋摘みになるともっと味わいが深くなって、一年でも一番甘みが強くなるシーズンです。

春摘みのダージリンは新芽なので産毛をまとったフワフワの柔らかい葉っぱで、その味わいはとても軽やかで清涼感たっぷりです。なお、春摘みは「ファーストフラッシュ」とも呼ばれ、夏摘みは「セカンドフラッシュ」、そして秋摘みは「オータムナル」と呼ばれます。

紅茶を冷蔵庫で保管される方もいらっしゃいますが、それだけは絶対に避けてください。冷蔵庫の香りを吸ってしまい、すぐに劣化します。缶に入れて、日光が直接当たらない戸棚などで保管するのがベストです。

アイスティーを作るのでしたら水出しをおすすめしています。1リットルの水に10グラムの茶葉を入れて、一晩寝かせるだけ。ホットで作って氷で冷やすと、紅茶の成分が急激な温度変化で白く濁ってしまう「クリームダウン」という現象が起きるので、水出しがおすすめです。

TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人(!)のエヌ博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・新一クンと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。

あなたの知的好奇心をくすぐる「ピートのふしぎなガレージ」。5月21日(土)の放送のテーマは《迷路》。お聴き逃しなく!

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<番組概要>
番組名:「ピートのふしぎなガレージ」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週土曜17:00〜17:50(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/garage