「谷崎潤一郎」を読む女性は、イイ女が多い!なんて話を聞いたことがあります。独特の世界観、ショッキングなまでのエロティシズム……。なんでしょう、確かに「愛読書は谷崎潤一郎です」と言われるとイイ女と思われそう……。過去に4回もノーベル文学賞候補になっていたという谷崎。今回は彼の妖しいプライベートに迫ります。


※写真はイメージです



夏目漱石に、芥川龍之介、太宰治……。
作風とは違うピュアな恋愛事情を持つ明治の文豪たちはたくさんいます。
ですが、中には自らの作品と同じような、独特の恋愛観を持っている人も。
そのうちのひとりが、谷崎潤一郎です。

「春琴抄」や「痴人の愛」。
耽美主義でマゾヒスティックな作品の多い谷崎の作品。
彼の私生活における女性関係も、普通の人とは少し違いました。
谷崎の最初の奥さんは、もともと自分の恋人だった芸者の妹。
ですが、家庭的な女性が苦手だった谷崎はすぐに妻に飽き、そのまた妹に手を出してしまいます。

この、手を出した妹「三千子」(本名「せい」)が「痴人の愛」のモデル。
三千子は当時14歳。
妻の千代はこれを知り、当然ショックを受けます。
そのとき、千代は谷崎の友人である佐藤春夫に、熱い思いを寄せられていました。
谷崎と違って誠実で優しい佐藤に惹かれる一方、夫に対する執着も捨てられない千代。
当の本人である谷崎は、妻にはもう興味がないからお前にやる、と佐藤に言い放ちます。

奇妙な三角関係、いえ、幼い妹も含めれば四角関係が続き、ようやく妻の千代が佐藤に心を寄せ始めた頃、谷崎は急に千代を手放すのが惜しくなります。
佐藤に愛されることによって美しく妖艶になった妻に気付いたのです。
そして佐藤に、「もう用はないので俺の前から消えてくれ」と言い放つのです。

人間の所業とは思えない谷崎の一連の行動。
俺様気質のようですが、実は女性へのラブレターには、彼の作風のようなマゾヒスティックな文章が残されています。
「御主人様、どうぞどうぞ御願いでございます。御機嫌を御直し遊ばして下さいませ」
「泣けと仰っしゃいましたら泣きます」
「御茶坊主のように思し召して御使い遊ばして下さいまし」……。

もはや卑屈とすら思えるこの態度。
これが彼の本質なのか、作戦なのかはわかりません。

女性の敵のような人生を送りながら、女性に熱烈に愛される作家でもある谷崎潤一郎。
作品にも本人も、興味が尽きません。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「女性の敵!? 谷崎潤一郎」として、5月19日に放送しました。

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