キモカワいい? 世界的にも珍しい「ヌタウナギの赤ちゃん」、沼津港深海水族館で誕生
静岡の「沼津港深海水族館」の公式ツイッターアカウントから、ヌタウナギの赤ちゃんが生まれたというツイートが投稿された。深海生物の赤ちゃんとなると、中々お目にかかれない存在な気がする。誕生から1晩明けた4月14日、水族館に取材してみた。
速報 ヌタウナギの仲間の赤ちゃんが生まれた? pic.twitter.com/7k6IOalkqG
- 沼津港深海水族館 (@NumazuDeepsea) 2016年4月13日
未来の繊維になるかも?ヌタウナギの秘められた可能性
今回生まれたヌタウナギの幼生
まず、ヌタウナギとはどういう生きものなのだろうか?
沼津港深海水族館館長の石垣さんによると、
「ヌタウナギは深海にすんでいる生き物で、2億8000万年前から存在している古代生物の1種で、顎が無い無顎類に属しています。深海に適応して目が退化、埋没しているため、一見すると目が無いように見えます。
最大の特徴は、刺激を受けるとヌタ腺と呼ばれる器官からから粘液を出すことです。粘液はヌタとも呼ばれていて、水と反応してゼラチン質になって固まる性質があります」
ヌタウナギの成体。ヌルヌルさが話題になりテレビにも出たことがある。
とのこと。名前の由来にもなったヌタを使って餌を捕まえたり、敵を撃退するのだそうだ。
また、韓国での伝統的な利用方法についても教えてくれた。
「韓国では食用として重宝されています。革は質がいいので、バッグや財布を作る素材として使われていますね。韓国で「ウナギ革」と言ったらヌタウナギのことを意味しています」
食用から革製品までと、産業的な価値も高いようだ。
だが、それとは裏腹に、その生態には謎が多い。今回の孵化により、様々なことが分かるかもしれない、と石垣さんは語った。
「水族館でのヌタウナギの孵化はとても珍しく、把握している限りだと、2010年に東京の葛西臨海水族園で1件だけあった以外は確認されていません。今回の孵化により、体色がどう変化して成体の色になるのか、粘液がいつごろから出るようになるのか、何を食べて育つかなど、今まで不明だった成長過程が明らかになると思います。
今回孵化した卵は水族館のヌタウナギが産んだものではなく、網に偶然引っかかっていたものなので、数種類あるヌタウナギのどのヌタウナギなのかなどは不明なんです。そういったことも今後わかってくると思います。すでに4匹生まれていますが、卵はまだあるので、これからも赤ちゃんの数は増えますよ」
ヌタウナギの卵
生まれたての幼生は体調が5.5センチほど。ここからの成長過程の観察により判明することは多岐に渡るという。
生まれたてのヌタウナギはピンク色だ
また、ヌタウナギの粘液は、服や化粧品など工業的な利用が考えられている。研究が進み、安定した養殖が出来るようになると、新たな素材としてヌタウナギ由来のものが広く使われるようになるかもしれない。