背の高い女性は洋服が似合って羨ましい、と思う小柄な女性もいると思います。ちなみに、江戸時代は平均身長が今よりずっと低く、男性も女性もかなり小柄。だからこそ、背の高い女性がいると、それだけで文献に残っていたりします。そして同じように注目されたのは「力の強い女性」。今回はそんなお話です。


きれいで力持ちの女性はお好きですか?



男性よりも小柄で、力も弱いとされる女性。
ですが、ときには、男性よりずっと力持ちな女性もいますよね。
あまりに力が強いので注目され、そして後世にまで名を残す……そんな女性が江戸時代にもいたようです。

江戸の音羽町、現在の日本橋一丁目あたりに、石見屋という茶屋がありました。
ここには「おしげ」という女房がいて、とても美人で優しいのでお客の評判も良く、「石見屋の宝」と呼ばれていました。

あるとき、おしげが若い女中を連れ、近所のお寺に出かけると、そこは大勢の若い力士で賑わっていました。
美人のおしげを見かけると、若力士は調子に乗って、なんと彼女のお尻を触ったのです。

最初は無視していたおしげですが、若力士は、おしげが抵抗しないのを見てイタズラを続けます。
すると次の瞬間、力士の手をぐっと掴み逆手に取り、あっという間にひっくり返して自分の膝の下に敷き、とんでもない力で押さえつけたのです。

真っ青になり、その痛さに涙ぐむ大きな体の若力士。
おしげは顔色ひとつ変えず、片手で数珠を取り出し、題目を唱え始めました。
ますます恐ろしくなる若力士。
それを見ていた役人が、どうか勘弁してやってくれないかと代わりに謝ります。
手を離し、やれやれと許すおしげ。
若力士はひたすら謝り、逃げて行ったのだそう。

このエピソードは江戸中に広まり、おしげを知らないものはいないほどになりました。
「音羽町の大力女(だいりきおんな)・おしげ」と呼ばれ、美しい外見と優しさ、そして強さが語り継がれることになったのです。

ギャップ萌えという言葉がありますが、おしげのような怪力の美人、男性の皆さんはいかがですか?

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「怪力美人、おしげ」として、4月12日に放送しました。

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<番組概要>
番組名:「シンクロのシティ」
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