現在、スキー場などの季節限定の場所を除いても、日本国内で乗れるロープウェイは約80ヵ所もあるそうです。この週末はちょっとクルマで遠出をして、空中散歩で見たことのない景色を眺めてみませんか。今回は「ロープウェイ」の魅力を、TOKYO FMの番組の中で専門家の方々に教えてもらいました。
(TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」4月2日放送より)


この週末は「ロープウェイ」で空中散歩に出かけよう!



◆「全国のおすすめロープウェイをお教えします!」
〜『日本のロープウェイ・ゴンドラ全ガイド』著者、歯科医師 中島信さん


私は大の鉄道好きで、10年ほど前に日本中の路線をすべて乗り終えました。ところがそのとき、ある方から「ロープウェイも鉄道の仲間」と教えてもらったんです。鉄道には路面電車やゆりかもめなども含まれます。そして「索道」と呼ばれるロープウェイやゴンドラも鉄道に含めるんです。

これからの季節なら群馬県の「榛名山ロープウェイ」がおすすめです。2両連結のかわいいロープウェイが行ったり来たりする光景が見られます。関西なら「神戸布引ロープウェイ」。神戸は海の近くまで山が迫っているので、新神戸駅からすぐ近くからこのロープウェイに乗れば近代的な神戸の街を眼下に見渡せます。ちなみに日本三大夜景と呼ばれる神戸と札幌と長崎は、どこもロープウェイの夜間営業があります。

東京郊外のよみうりランド「スカイシャトル」は最寄り駅から遊園地までの交通機関として運行しています。巨人軍の室内練習場の上を通って、アトラクションの間を縫うように進むのが楽しいロープウェイです。長野県の「中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ」は標高日本一。山頂駅の標高は実に2612mです。

利用者数なら「箱根ロープウェイ」。現在は火山活動の影響で運休区間があるのですが、ここは世界一の利用者数を誇るロープウェイとしてギネスブックにも載っています。世界を見渡すと「冬季五輪で活躍する国」にはロープウェイが多いですね。オーストリア、スイス、フランス、イタリアなどがロープウェイの先進国です。

◆「今、都市型ロープウェイが大注目です」
〜ライター 杉山淳一さん


今「都市型ロープウェイ」が注目を集めています。これは路面電車や地下鉄と同じように通勤通学などに使える街の中のロープウェイで、日本でも江東区で「五輪の競技場をロープウェイで結ぼう」というアイデアが出ていました。ロンドン五輪でテムズ川を挟むロープウェイ「エミレーツ・エア・ライン」が好評だったからなんですが、残念ながら手を挙げる企業がなくて実現していません。

アメリカで最初にできたロープウェイも実は都市型でした。ニューヨークのマンハッタンとルーズベルト島を結ぶロープウェイなんですが、これは今でも動いています。さらにマンハッタンとブルックリンを結ぶロープウェイの計画もあるくらいです。

ボリビアのラパスでは3路線の都市型ロープウェイが稼働中。交通渋滞を解消する目的で建設され、10人乗りのゴンドラで1時間あたり3000人を運ぶ力があります。コロンビアのメデジン市の「メトロカブレ」も都市型ロープウェイです。こちらは治安上の問題でスラム街を回避するために造られたのですが、運賃体系が電車と同じなのでどこまで乗っても50円くらいです。

イタリアではジェノバと空港を結ぶロープウェイの計画が進行中と聞いています。都市型だとプライバシー保護の問題がありますが、愛知万博では2つの会場を結ぶロープウェイで液晶シャッターを採用して、民家の上を通るときは外が見えないようにしていました。九州でも博多のど真ん中から博多港までロープウェイを架けようというプランが動いています。これから都市型ロープウェイはどんどん増えていきそうです。

◆「100年の歴史がある日本のロープウェイ」
〜安全索道株式会社 代表取締役社長 西川正樹さん


安全索道株式会社は大正4年の創業なので、去年で100周年を迎えました。でも大正の頃は人じゃなくて物を運ぶ索道を造っていたんです。人を輸送する索道は昭和2年に和歌山県で造ったのが最初でした。交通が不便なところだったので索道を造ったのですが、後に道路が開通してバスが通るようになると廃止になっています。

戦前から日光など各地に観光用ロープウェイがありましたが、戦時中に金属の供出のため次々に撤去されました。そんな中、一番古いロープウェイとして残っているのが昭和4年に架けられた「吉野山ロープウェイ」です。ここは日本機械学会が選定する機械遺産にも指定されていますが、今でも現役で動いています。

近年は山岳観光が好調なので、大型化を目的としたロープウェイの架け替えも行われています。「函館山ロープウェイ」は去年、大規模なリニューアルをしましたが、海外からも大勢のお客さんが訪れて大盛況ということで、125人乗りの大きな客車になりました。飛騨山脈の穂高岳にかかる「新穂高ロープウェイ」は2階建てです。観光施設はこんな工夫がどんどん取り入れられています。

ロープウェイを設計するときは「どのくらいの人を運ぶのか」が大前提です。さらに地形、勾配、高さなどから支柱の数やモーターの大きさが決まってきます。黒部ダムの「立山ロープウェイ」は途中に支柱がないワンスパン方式としては日本最長。それから「中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ」は国内最高の標高2612mまで上がります。こんな難しい条件を実現するのがわれわれの腕の見せどころです。

TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人(!)のエヌ博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・新一クンと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。

あなたの知的好奇心をくすぐる「ピートのふしぎなガレージ」。4月9日(土)の放送のテーマは《マスターズ》。お聴き逃しなく!

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<番組概要>
番組名:「ピートのふしぎなガレージ」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週土曜17:00〜17:50(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/garage