今、日本で「成りあがり」というと、ほとんどの人がある人の顔が浮かぶのではないでしょうか? そう、矢沢永吉さん、永ちゃんです。ミュージシャンなどが夢をかなえるために上京する電車の中で、永ちゃんの著書「成りあがり」を読みながら決意を固めた……そんな話をよく耳にします。今回は、江戸時代の「成りあがり」の人物を紹介します。


江戸のカリスマ「紀伊国屋文左衛門」の成りあがり伝説



たった一代で莫大な富を築く、「成りあがり」と呼ばれる人たち。
それぞれの時代にたくさんの成りあがりはいますが、江戸時代の成りあがりといえば、なんといっても「紀伊国屋文左衛門」ではないでしょうか。

紀州みかんを江戸に運ぶという商売で財を得て、その後、材木商として江戸に進出し、莫大な富を手にした紀伊国屋文左衛門。
一代で築いた富を一代で使い果たしたというところも、彼が伝説として名を残すのに十分なエピソードです。

そんな文左衛門、やはり、幼少の頃から頭の切れる子どもだったようで、こんな逸話が残っています。

文左衛門が7歳の頃、父親の仕事を手伝って50文のお小遣いをもらいました。
すると彼は、それで竹竿を買い、その竹竿でたくさんの竹とんぼを作ったのです。

大量の竹とんぼを持って町に行き、売ると、これが大盛況。
儲けが一貫文(いっかんもん)になりました。
一貫文とは、千文のこと。50文を千文に増やしたのですから20倍です。
7歳のうちからこの商売魂、立派なものですね。

商才だけでなく、彼には人を惹きつける何かがありました。
豪商になってから人を雇うとき、文左衛門は雇人(やといにん)に人格や品性を全く求めずに採用したといいます。
荒くれ者、OK。元盗賊でも、ばくち打ちでもOK。
そんな困った人たちも、ひとたび文左衛門の下で働くと、なぜか真面目になっていったと伝えられています。
文左衛門は、人を雇うとまずは酒を与え、しばらく生活を共にし、連帯感を強めるのだそうです。

最終的には廃業し、莫大な富を失った文左衛門。
それでも晩年は、深川で俳句を詠みながらのんびりと余生を過ごしたそう。
パッと花咲き、豪快に散って、それでも自分らしく生きる……。
なんだか、うらやましいですね。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「江戸一番の、成り上がり」として、4月7日に放送しました。

【あわせて読みたい】
★高橋みなみ T.M.R西川のサプライズにガチでひっかかる(2016/4/7) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/D89Y2N9h67.html
★江戸っ子の人気レンタルNo1は、遊女に会う日の「勝負○○○○」!?(2016/4/7) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/Ha4Tll17RH.html
★社会人のみなさん、「朝食」しっかり食べていますか?(2016/4/7) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/7Pa585TKY8.html

<番組概要>
番組名:「シンクロのシティ」
放送日時 :毎週月〜木曜15:00〜16:50
パーソナリティ:堀内貴之、MIO
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/city/