現役続行への決意を口にした加藤康介(前阪神)【写真:富樫重太】

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周囲からは「もういいんじゃない?」、それでも挑んだトライアウトの舞台

 過去2度の戦力外通告を受けながら、いずれも“不死鳥”とも言える復活を見せた左腕・加藤康介。今オフは阪神で自身3度目の戦力外通告を受け、10日、地元静岡の地でトライアウトに臨んだ。

 参加者最年長の37歳。ベテラン左腕は3者凡退に抑えてマウンドを降りると「悔いなくやれた」と一言。大粒の汗を垂らしながら、現役続行への決意を口にした。

「周りの人たちは『やめろ』とは言わないですけど……、『もういいんじゃない?』と言われることもありました。でも自分としてはここまできたのは自分一人の力ではなく、ほとんどが人に支えられた部分が多い。

 そういう意味では自分でやめるということを決めたくはなかった。本当に場所がなくなった時にやめるべきではないかなと思ったので」

 37歳を迎えた今季は怪我の影響もあり6試合の登板に留まった。2008年、2010年に2度戦力外通告を受けながらも、タフな起用に応え続けてきた左腕。30代も後半に差し掛かった今、周囲の“潮時”という声はある意味で無理のないことかもしれない。

2度の戦力外も復活を遂げてきた左腕、「まだやれる」

 しかし、加藤自身は「自分の中でまだやれる」と自信をのぞかせる。

 これまで2度戦力外を受ける一方、2度復活を遂げてきた。2008年オフにトライアウトを経て横浜に入団すると、2009年は31試合に登板。貴重な左投手として貢献し、3年ぶり白星、13ホールド、防御率3.68の成績を収めた。

 さらに2010年に戦力外通告を受けた後、阪神に入団すると2012年は41試合で防御率0.83と、リリーフとしてキャリアハイの成績。翌年は勝ち継投にも多く関わり、16ホールド。防御率1.97と阪神投手陣を支えた。

 今のところ加藤にとっての戦力外通告は、プロ野球人生の“終わり”を意味していない。

 そして、この日も藤澤拓斗(前中日)に対して決め玉のスライダーを外角いっぱいに制球し、見逃し三振。田上健一(前阪神)も変化球で泳がせ、二ゴロ。この日2安打を放った林崎遼(前西武)もセンターフライに抑えた。

葛藤を抱えながら向かったトライアウト、投げ終えて得た手応え「もっとよくなる」

「休養も取りながら、自分のベストを出せるようにやってきました。戦力外を伝えられてから自分自身では一番良かったと思いますし、今後ももっとよくなると自分では思っている」

 参加者最年長の左腕は、自身のマウンドに胸を張り、球場を後にした。

 トライアウトの舞台は結果を残したからといって、声がかかるほど甘くはない。加藤の場合はリリーフとして誰よりも経験を積んでいる一方、来季38歳を迎えるという年齢はどの球団からしても不安を覚える要素だ。

「本当に今日投げるまで自分の中でも色んな葛藤がありました。もしかしたらダメなんじゃないかという色んな気持ちがあって、マウンドに立って1球目投げるまですごく何とも言えない感じでした。終わってみて気持ちの部分ではすっきりした部分もあります」

 そう語る左腕。表情には充実した色が浮かんだ。3度目の復活へ――。15年目のベテランに吉報は届くだろうか。