株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 / 株式会社新経営サービス

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簡単なようで、実は難解な問題です。
「正解はない」というのが答えなのですが、事実、時代によって、国によって、会社によって考え方は大きく異なります。

今回は、この「賃金の決定要素」について、考えてみることにしましょう。

まず、賃金とは何でしょうか。
労働基準法(第11条)では、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。対償とは対価という意味ですから、法律上は、「労働の対価」によって支払われるものということになります。

また、最低賃金法(第1条)では、「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」として、賃金には「生活保障」としての側面があるとしています。


ただし、ご存知のように最低賃金というのは地域ごとの最低額ですので、賃金の決定要素というには無理がありそうです。

皆さんは、「同一労働・同一賃金の原則」という言葉を聞いたことがあると思います。
同じ仕事内容であれば、同じ賃金水準を支給するという意味で、ILO(国際労働機関)という国連機関が定めた重要政策の1つです。差別解消や労働者保護のため、世界の先進国では、基本的な思想として定着しています。

すなわち、最低限の生活保障(最低賃金)を上回ることを前提とすれば、仕事内容に応じて決定することが国内外の基本的な考え方ということになるでしょう。
ということは、日本で長年にわたり主役であり続けた「年功序列賃金」は、国際的思想にも、国内の労働法にも沿っていないことになります。だからダメということではありませんが、国によっては「年齢給なんて年齢差別なので違法」という判断がなされるかもしれないのです。

ちなみに私は、成果主義でも年功序列でも、企業の経営方針に合致していればOKという考えです。むしろ、企業の特徴を出すためにも、各社各様の制度が望ましいのです。

執筆者:山口 俊一

人事戦略研究所 所長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベース

にした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を

受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、200社以上の

コンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の

構築、組織運営など。