チームビルディングシリーズ:安全な場4 「リーダーがチーム力を下げる存在にならないために」/斉藤 秀樹
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◆リーダーが「求心力」になるとは
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これまでリーダーはチームの「求心力」になることの重要性について
お話ししてきました。
個人商店化しているチームでは、「求心力」になんてなれるはずがないと
考えるリーダーも少なくないと思います。
しかし、個人商店化を作っている要因の一つに、リーダー自身の振る舞いが
あることも受け止めなければなりません。
リーダーが「求心力」になるということはメンバーとの信頼関係を深め、
貢献欲求を高めていくことなのです。
そのためには「メンバーを心から必要とする」
「どんな小さな結果や変化でも認め喜ぶ」「メンバーの意志を尊重する」
「ともに考え成長する」を積極的に表現(実践)することです。
このような関わりが不足することで個人商店化に拍車がかかります。
コミュニケーション力は知識の量では埋まりません。
具体的な表現(行動、言動、表情、態度や姿勢)の量によって決まります。
何かを変えなければ変化は生まれません。リーダーに求められる姿勢は、
「率先垂範」つまり手本を示し、見本となる姿勢です。
と言うととても大変なようですが、完璧に振る舞うということではなく、
現状を素直に認め、チームの誰よりも自分が本気で実践する姿(姿勢)を
見せることなのです。
これはリーダーとしてのあり方ということだけではなく、人として誰もが
平等に取り組める成長へのチャレンジだと思います。
実際に他者を変えることを手放し、自分を成長させることに取り組んだ
リーダーのチームは例外なく、活性化していきます。
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◆「安全な場」があればメールやSNSでも充分にコミュニケーションができる
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私たちのこれまでの取組から明確になったことがあります。
それは
「Doには、それを効果的に活かすためのBeが必要である」
ということです。
Doとは方法論やツール、システムなどを指しています。
Beとは人間関係や意志、モチベーションと言ったコミュニケーションや
人間活動の基盤と言えるものです。
Do一辺倒でBeの醸成や強化をないがしろにした施策では、思うような効果が
出なかったり、逆効果になったりします。
もちろん、人間を廃しすべて自動化、無人化すればDoの能力を100%
引き出すことは可能でしょう。しかし、人間が介在する以上、
Doを活かすためのBeの醸成や強化は必須なのです。
システム開発プロジェクトにおいて「遠隔地のプロジェクトメンバーとの
コミュニケーションが上手くいかない」という課題が必ず上げられます。
遠隔地であるためコミュニケーションツールはメール、SNS、電話(会議)
などが主になっています。実は、この課題もこれまでお話ししてきた
DoとBeの関係と同じなのです。
DoとしてメールやSNSに問題があるのではなく、Beに問題があるのです。
例えば、同じフロワーの数メートル以内に居るメンバー同士でも、
メールやSNSに頼り、直接会話をしないことでコミュニケーション
ギャップが起こっています。
これらは多くの企業で問題になっています。この問題の本質は、物理的な
距離やツール(Do)の問題以上に、心理的な距離が埋められないBeの問題の
方が大きいのです。
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◆Doだけでは心理的な距離は埋まらない
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処方は簡単です。
プロジェクトのスタート時にこれまでお話ししてきた「チーム意識」
「安全な場」皆で創っていくことをチーム規範として共有し、
距離に関係なく日常のコミュニケーション(メールやSNS、電話を含む)で
ハートの内側の関わり方を実践することです。
「言った、言わない」「伝えた、聴いていない」と言ったトラブルは
激減しますし、分からなければ気軽に聞くことができるようになり、
むしろコミュニケーションは活性化していきます。
これは私たちのチームビルディングを導入したチームで起こることですが、
皆が積極的に会える機会を作ったり、仕事以外に食事をしたり、飲みに
行ったりと皆で自発的に関係性を強める取組が行われるようになります。
この結果、実際に私たちが取り組んだほとんどのプロジェクトで、悩みや
課題が共有され、相互支援の関わりが増え、これまで解決できなかった
問題が次々に解決されていきました。
そして、仕事だけの付き合いから、仕事以外でも人としての付き合いが
増えていきました。そして、職場に笑顔が増えていきました。
とかくDoに偏っていくと問題解決をDoのみの改善で対処しようとする傾向が
強まります。
結果として機能ばかりが膨れ上がります。コミュニケーションツールで
あるはずのメールやSNSが広まることで、人のコミュニケーションが
阻害されるとしたら、それは本末転倒です。
これまで4回を通じて安全な場の重要性についてお話ししてきました。変えるべきは自分の外側の何かではなく、自分自身の表現です。まず、そこからはじめましょう。