【高校野球】昨秋地区予選敗戦から這い上がった仙台育英 佐々木監督の“言葉力”
“清宮フィーバー”に沸く早実にも冷静に対処、自分たちの力を信じた仙台育英
仙台育英(宮城)が準優勝した1989年以来、26年ぶりの決勝進出を決めた。19日の準決勝第1試合で早実(西東京)に7-0で完勝。エース・佐藤世那が6安打完封すれば、ドラフト候補の平沢大河が自身今大会3本目となる3ランを放つなど、投打で圧倒した。
休養日だった前日の練習後、佐々木順一朗監督は言った。
「清宮君? 9人の中の1人です」
また、こうも話した。
「地に足を付けてやること、浮かれないことが一番大事。1個、1個アウトを取って、塁に出て点数を取らないと勝てない。(昨秋の)神宮大会で優勝した実力がある。勘違いをせずに自分たちの力を出せれば」
“スーパー1年生”として2本塁打など結果を出す早実・清宮幸太郎に沸く甲子園。仙台育英は、そんな“清宮フィーバー”に流されなかった。
制球が定まらない中、丁寧な投球を見せたエース佐藤世
まずは守備。1回裏、1死から四球で走者を出し、清宮を迎えた。「気持ちでは負けたくない」と話していた佐藤世。カウント1-1からフォークで空振りを奪い、ストレートで二ゴロ併殺打に仕留めた。その後もボール球が多くなるなど、苦しい状況は続いたが、「1個、1個アウトを取る」(佐々木監督)ことを意識し、冷静に試合を運んだ。3回には、2死満塁のカウント1ストライクから二塁にけん制し、二塁走者をアウトにしてみせた。
5回まで許した安打は内野安打3本のみ。それも、三遊間や二遊間を抜けそうな当たりにショート・平沢、セカンド・谷津航大が追いついたヒットだった。8回には左中間を割られそうになったが、途中出場の左翼手・山本昇應太が好捕。その直後に清宮を迎え、外野手が下がっていたが、こちらも途中出場の1年生二塁手・西巻賢二が飛球を後ろ向きで追いかけながら捕球した。1プレーへの丁寧さと執念がにじみ出た守備が光った。
攻撃の突破口を開いたのは9番に座る佐藤世だった。決して、打率は低くなく、宮城大会では満塁弾を放っている。その佐藤世が3回、左翼線に二塁打を放つと1番・佐藤将太がレフトオーバーの二塁打。足が遅い佐藤世は三塁ストップとなったが、2番・青木玲磨の2点タイムリーで先制した。
4回には失策で1点を追加し、2死一、二塁で「(早実は)バッティングのチーム。1点でも多く取りたい」と話していた平沢が右中間に3ラン。1回戦と準々決勝に続いて、甲子園で3本目のアーチを描いた。6回以降は無安打だった仙台育英打線だが、制球が定まらない中、丁寧な投球を見せる佐藤世には中盤までの7点で十分だった。
選手たちを奮い立たせる“佐々木語録”、東北勢から受け継いだバトンを手に歴史を動かせるか
佐々木監督は早実との対戦が決まると、その強さがホンモノかどうかを見極めていた。大会の雰囲気、世間の期待……。西東京大会や今大会を冷静に見つめ、清宮を「9人の中の1人」と捉えた。
平沢が「“早稲田実業”と戦う」と話したように、仙台育英ナインにもその考え方は浸透していた。また、佐々木監督は「早実の監督は、オレの(大学時代の)2個下だから。オレが110キロくらいのボールを投げていた時に(捕手として)捕っていたんだ」と笑って、選手たちを和ませていた。
昨秋、地区予選で敗れた日、佐々木監督は「ここから日本一になったらカッコいいよね」と選手たちに話した。怒ったり、呆れたりしてもおかしくない結果だったが、選手たちはその言葉に奮い立ち、敗者復活戦から県大会出場権を勝ち取り、明治神宮大会の優勝旗を手にした。そんな数々の“佐々木語録”は常に選手たちを鼓舞してきた。
さあ、決勝。26年前は延長10回の末、帝京に敗れた。未だ優勝旗がない、東北勢の悲願でもある。3回戦で花巻東(岩手)、準々決勝で秋田商(秋田)と東北勢からバトンを受け取ったような流れがある今大会。高校野球が始まって100年。センバツ大会は敦賀気比が北陸勢初優勝。果たして、100年目の夏、高校野球の歴史は動くのか――。

