女子高生は平均で6.6個のキャラを使い分けるという(電通若者研究部「若者まるわかり2015」より)。ちなみに同じ調査によると、女子高生のTwitterユーザーは平均で3.4個のアカウントを所有しているという。

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オレ実は裏の顔があるんだぜ、なんて言ってミステリアスを気取っている場合じゃない。現代の女子高生はなんと6個以上の以上の顔を使い分けているというのだ。

電通若者研究部(通称「ワカモン」)が今年実施した「若者まるわかり調査2015」によると、若者の間では複数のキャラを使い分けながらコミュニケーションをとっていくのが当たり前になっているらしい。

調査によると、20代社会人で4.0個、大学生で5.0個、高校生で5.7個のキャラを使い分けているというのだ。女子高生に限るとその数なんと6.6個!

この調査の結果について、もう少し詳しく掘り下げるためにワカモンの奈木れいさんに話を聞いてみた。

「以前はキャラというと、その人が『こうありたい』という自我やアイデンティティーの上に成り立っていたのですが、今のコたちは自我とは関係なくキャラを使い分けているのです」

つまりその場の空気を読んでキャラを使い分けているというのだ。

「極端な場合は『わたしここではボケキャラだけど、別のコミュニティーに行ったらツッコミなんだからね!』というような発言が出てくることがあります」

なぜそのようなことが起きるのか、42歳の筆者には、にわかに理解しがたくフリーズしていると奈木さんは解説を加えてくれた。

「今のコは評価軸が自分の中にはなく、他人に認められるかどうかが重要なのです」

その結果、「この場にボケは二人はいらないな」などと探りながら、キャラでポジション取りしながら自分の居場所を築いていくというのだ。それにしても、お笑い芸人でもないのに、キャラかぶりを気にしながら生きていくとは。

「お笑いの影響もあるかもしれませんが、今の日本人は総ツッコミになってきています。言い換えると自分が主体になるのが苦手なのです」

お笑い芸人のマキタスポーツが本名槙田雄司名義で『一億総ツッコミ時代』という新書を出し同様の指摘をしているが、奈木さんによると、今の若年層は1を100にするキュレーション的なことは得意でも、ゼロから1を作り出すクリエーションは苦手なのだという。

そんな今どきのコを表すキーワードとも言えそうなのが「うまい子」という言葉だ。状況に応じてキャラを使い分け、要領よく世の中を渡り歩いていくコのことをいう。

そうしたコに対してやっかみ半分で軽い軽蔑を込めながら「うまい子」と言っているのと思いきや、実態はその逆だという。

「『うまい子』は完全な褒め言葉です。うまくやれるコになりたいとみんな思っています」

「アイツうまいことやりやがって」という言葉に象徴されるように、筆者の世代にとって「うまい」という言葉は「世渡り上手」にも通ずるネガティブな響きを持つものだったが、ニュアンスが完全に変わってきているらしい。この変化はどこから来たのだろうか。

「高度成長期はがんばることが善いこととされ、愚直であるということが美徳でした。しかし現在はがんばったからと言って必ずしも報われる時代ではありません。ですから努力を最大効率化できることが評価されるようになってきているのです」

言葉を換えれば多少抜け道を使おうが何だろうが、要領よくやれることをよしとする価値観が育まれているということだ。

うーん、アラフォーの筆者には同調しがたい考え方。しかし若者の価値観の変化は多かれ少なかれ世相の反映だ。ここは若者に理解のあるおじさんキャラを演じて、嫌われないようにでもするか。
(鶴賀太郎)